基礎知識
更新日:2020/08/27
テーマ: 01.事業承継
事業承継で活用できる補助金・助成金とは?
事業承継やそれをきっかけとした経営革新を支援する事業承継補助金は、中小企業の事業承継を後押ししてくれます。
事業承継を有利に進めるなら、この事業承継補助金についてよく知っておきましょう。
事業承継で活用できる補助金・助成金とは?
政府は、事業承継に際して発生する相続税や贈与税の納税猶予期間を設ける税制(事業承継税制)や、保証契約の解除や適切な保証金額への見直しを進めるガイドライン(経営者保証に関するガイドライン)の整備、事業承継を契機とした経営革新を支援する補助金(事業承継補助金)など、中小企業の事業承継サポートを積極的に行っています。
有利に事業承継を進めるなら、このようなサポート制度についてよく知っておく必要があるでしょう。
ここでは、事業承継や事業革新を行う際に利用できる「事業承継補助金」についてご説明します。
事業承継補助金とは
事業承継補助金は、中小企業庁が主体となり、年度ごとに公募が行われ、審査を経て交付される補助金です。
事業承継をするタイミングで、新しい事業を始めたり、経営革新を行ったりする中小企業などを対象に補助が行われる制度ですが、事業承継をする企業に対して無条件で交付されるわけではないため、交付の要件などについて詳しく知っておきましょう。
なお、この事業は、経済産業省が直接行うのではなく、「事業承継補助金事務局」と事業者のあいだで行われるため、手続き書類等は事務局へ提出します。
事務局は毎年の公募によって決定されますが、2018年度は、すでに公募期間が終了しています。
補助金申請の要件と交付額の上限
事業承継補助金を申請するためには、定められた条件に合致する必要があります。
ここでは、補助金を申請するための要件と交付額についてまとめました。
募集補助対象者
2017年度は事業承継を行う中小企業者が補助対象でしたが、2018年度は「後継者承継支援型」に加えて、「事業再編・事業統合支援型」の募集も行われる見込みです。
これにより、より広い範囲の事業者が補助金の対象となります。
・後継者承継支援型
事業承継の際に経営革新や事業転換を行う個人や中小企業、小規模事業者等の中で、地域の需要や雇用を支える事業を行う方が対象です。
特定総合支援事業を受けるなど、一定の実績や知識を有する必要もあります。
・事業再編・事業統合支援型
後継者の不在によって、事業再編や事業統合等を行わなければ事業継続が困難である方のうち、実際に事業再編・事業統合等を行う中小企業・小規模事業者の方が対象です。
なお、対象は「後継者承継支援型」と同じく、事業再編や事業統合等を行う際に、経営革新や事業転換をする事業者で、地域の需要や雇用を支える事業を行う方に限られます。
一定の実績や知識を有していなければならないという点も同様です。
なお、これはあくまでも調整中の要件であり、今後変更される可能性もあります。
利用を希望する場合は、必ず最新の情報を確かめるようにしましょう。
補助対象経費
事業承継補助金は、事業承継を実施しようという個人・法人であれば、誰でも利用できるというものではありません。助成の対象となる経費についても、要件が細かく定められています。専門家に相談しながら、該当するものを判別しましょう。
2017年度の事業承継補助金では、「補助の対象となる経費は、事業を承継する際に発生する経営革新や事業転換など、『新たな取組み』について必要となる経費であり、補助が行われる事業期間中に発生し、支払いをするものに限られる」とされていました。
例えば、補助を受ける事業について必要な書類を作成する際の司法書士・行政書士に支払う作成費用については補助の対象となりますが、商号の登記費用や印鑑証明等の取得費用は該当しません。
また、国内の店舗の内外装費は対象となるものの、不動産の購入費や車両の購入費は対象になりません。一方で、車両のリース料やレンタル料は対象になるなど、具体的な対象経費は非常に複雑です。
ただし、2018年度には変更される可能性もありますから、詳細な内容については募集要項の発表後に確認しましょう。
交付額
補助割合は、その年度ごとの要綱によって変わります。2018年度の場合、補助対象経費の3分の2(小規模企業者・個人事業者)、もしくは2分の1(小規模企業者・個人事業者以外)となっています。
また、補助上限額は、後継者承継支援型では下記のとおりです。
・後継者承継支援型(小規模企業者・個人事業者)
既存事業の廃業や事業転換を伴う場合は500万円、伴わない場合は200万円
・後継者承継支援型(小規模企業者・個人事業者以外)
既存事業の廃業や事業転換を伴う場合375万円、伴わない場合150万円
なお、2018年度に新たに始まる予定の「事業再編・事業統合支援型」の場合の上限額は以下のとおりです。
「地域の新たな需要の創造や雇用の創出を図り、我が国経済を活性化させる事業承継や事業再編・事業統合を促進する」という採択基準で上位と認められたものと、それ以外のものとに分かれます。
・事業再編・事業統合支援型(採択者上位)
既存事業の廃業や事業転換を伴う場合は1,200万円、伴わない場合は600万円
・事業再編・事業統合支援型(それ以外)
既存事業の廃業や事業転換を伴う場合は900万円、伴わない場合は450万円
事業承継補助金の申請手続き
事業承継補助金の申請をするには、いくつかのステップをクリアする必要があります。
【事業承継補助金の申請手続き】

1. 認定経営革新等支援機関への相談
事業承継補助金の申請のためには、まず認定経営革新等支援機関に相談することが必要となります。
認定経営革新等支援機関は、中小企業に対して専門性の高い支援を行うために定められた機関で、経営革新といった新たな取組みやその事業計画について相談にのってくれます。
一定レベル以上の実務経験を持つ団体や個人に対して、中小企業庁が認定を行っています。
銀行や税理士法人、会計事務所、法律事務所、個人の会計士などが認定を受けており、それぞれ得意とする分野が異なっているため、求める支援の内容に応じて支援機関を選びましょう。
どこを選べばいいかわからない場合は、まず、各エリアの経済産業局に相談することもできます。
また、認定経営革新等支援機関が法令に違反していたり、不適切であると感じたりした場合も、経済産業局に連絡しましょう。
2. 事務局への応募
書類をそろえて事務局へ応募します。
2017年度の応募は、書面が2017年5月8日から6月2日当日消印有効、電子申請は2017年5月下旬から6月3日17時までとなっていました。
期間を過ぎてしまうと応募ができなくなるため、あらかじめ応募期間を確かめておきましょう。
応募書類は以下のとおりです。
・事業計画書(様式1および様式2)
・住民票(先代と後継者の両方)
・認定経営革新等支援機関の確認書
・応募資格を有していることを証明する後継者の書類
・添付書類(個人事業主、会社、特定非営利活動法人で、それぞれ違った証明書等)
※個人事業主の場合は、直近の確定申告書一式。事業承継を終えている場合は、先代の廃業届および後継者の開業届。
※会社の場合は、履歴事項全部証明書、直近の確定申告書、直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)。事業承継を終えている場合は、役員変更の官報公告または役員等の専任決議の議事録等。
※特定非営利活動法人の場合は、履歴事項全部証明書、直近事業年度の事業報告書、活動計算書、貸借対照表。中小企業者の支援を行うために中小企業者が主体となって特定非営利活動法人を設立する場合は、社員総会における表決議の2分の1以上を中小企業者が有していることがわかる資料。
以上の書類の提出は必須です。
ほかに、任意提出の補足説明資料や、審査における加点事由に該当する書類について提出が必要になる場合もあります。
書類はすべてA4サイズの片面印刷で、ホチキスはとめずにクリアファイルに入れて提出します。
3. 交付申請
応募資料を基に行われる審査で採択されると通知が届きますので、交付に必要な手続きを行います。
4. 該当事業の実施
事業承継の計画書に基づいて、事業を行います。
5. 完了報告、補助金請求
事業が完了したら、30日以内に実績報告書を提出して、補助金を請求します。
6. 補助金受取
補助金の交付までには、2~3ヵ月程度の期間が必要です。
なお、その間に資金が必要な場合は、中小企業庁を通じて、金融庁から金融機関のつなぎ融資の相談を受けることができるよう要請をしてもらえます。
7. 交付後の報告義務
事業承継補助金を受け取った後も、5年間は当該の事業についての状況や収益状況を報告する義務があります。
一定以上の収益が上がっている場合は、交付を受けた補助金の一部を返納します。
事業承継補助金のチェックはこまめに
2017年度の事業承継補助金の採択率は、応募総数517件、採択総数65件と約12.6%と非常に低いものでした。
2018年度の補助予定件数は約600件(後継者承継支援型約480件、事業再編・事業統合支援型約120を想定)と大幅にアップする予定です。
しかし、事業承継補助金の審査に通るためには、やはり、認定経営革新等支援機関への相談から事業計画の立て方、申込書類の作成方法まで、一つひとつ丁寧に行っていく必要があるでしょう。
なお、2018年度の補助金については、すでに公募期間が終了しています。
事業承継補助金は、前年度末に公募期間や要件に関する情報が公開となり、公募期間も短いので、利用を検討する場合は中小企業庁のウェブサイト等を随時チェックして、早めに認定経営革新等支援機関に相談を行うようにしてください。
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