基礎知識
更新日:2020/08/27
テーマ: 02.M&A
5-4. M&A取引に係る労働契約の取扱い
5. 中小企業のM&Aにおける法律手続きの注意点・留意点
M&Aにおいては、売手と買手で締結される契約(基本合意、最終契約)だけでなく、情報開示(法定開示、適時開示)、労働契約、独占禁止法など、各種の法規制を押さえる必要があります。これがM&Aは「法律のるつぼ」ともいわれる所以です。 売手企業と買手企業との契約にあたっては、多くの場合、秘密保持契約書、基本合意書、最終契約書の3つが作成されます。 秘密保持契約はM&Aの当事者が、相互に情報開示を行う前提として最初に締結する契約です。基本合意書の作成は必須のものではなく、M&Aの基本的な条件が法的拘束力を有しない形で規定されるものです。最終契約書の内容は、M&Aの手法によって異なりますが、株式譲渡および事業譲渡の場合は、どのような事項を取り決めるかについて会社法上の定めはないため、契約の内容は当事者間の交渉に委ねられます。
5-4. M&A取引に係る労働契約の取扱い
M&A取引前に確認するべき労働契約等
M&A取引は従業員の立場に大きな影響を及ぼすことがあるため、従業員に関する事項は重要な検討項目の1つであり、時として取引の成否を左右するポイントでもある。
M&A取引の実行前時点におけるデューデリジェンスの場面では、賃金の不払いなどによる潜在債務の有無、労働関連法上の義務に係る法令遵守の状況、労働組合との協議の要否についての確認は必須である。
M&A取引手法ごとの労働契約の承継
また、M&A取引の手法によって、特定の労働契約のみを承継させることができるか否か、労働者の個別同意を得る必要があるか否かに影響するため、選択にあたっては各特徴を押さえておく必要がある。
株式取得・株式交換・株式移転によるM&Aと労働契約
対象会社の資本関係にしか影響を及ぼさないため、労働者との間の労働契約には影響を与えず、労働契約関係は存続する。
合併によるM&Aと労働契約
消滅会社の権利義務がすべて存続会社に承継されるため、特段の合意がない限り、労働関係もすべて存続会社に承継される。従業員の同意は不要である。
部門や人員が重複することにもなるが、存続会社は全ての権利義務を承継するため、労働契約(労働者)を選択して、一部の従業員との関係のみを承継しないとすることはできない。
そのため、合併の効力発生後、労働契約の内容である労働条件については、存続会社の従業員のものと、消滅会社の従業員のものが併存することになる。
労務管理上好ましい状態ではないため統一作業が行われることになるが、法的に特別な手当てが用意されているわけではなく、通常の労働条件の変更手続による。
会社分割によるM&Aと労働契約
合併と同様、従業員との労働契約は、特段の合意がない限り、承継会社に承継される。
従業員の同意は原則として必要ではない。
しかし、合併のように消滅する会社の権利義務のすべてが承継されるわけではなく、どのような権利義務が承継されるかは、吸収分割契約や新設分割計画で定められた内容に従う。
その内容によっては、全部または一部の従業員が分割前まで従事していた事業と切り離される可能性がある。
そのため、一定の従業員は会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律に基づき異議を述べる権利が整備されており、本人の意向が一定程度尊重される。
つまり、異議を述べた従業員が承継会社に承継されることも、承継されないこともあり得るため、承継する労働契約(労働者)を自由に選択できるわけではない。
事業譲渡によるM&Aと労働契約
事業譲渡は、合併や会社分割のような包括承継ではない。譲渡会社と譲受会社との合意によって事業に属する個々の資産について個別に移転させる必要があり、債権者の同意が必要となる(特定承継)。そのため、一部の従業員を承継対象から除外することも可能となる。
労働契約は、原則として労働者の個別の同意があることによって承継される。
その方法として、労働契約の使用者としての地位を承継させる方法(譲渡型)と、事業譲渡にあわせて譲渡会社との労働契約を解約し、同時に譲受会社と労働契約を結ぶ方法(再雇用型)がある。
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