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基礎知識

更新日:2026/01/23

テーマ: 02.M&A

M&Aとは?:意味・目的から流れ・費用・成功事例までを解説

M&Aの事業譲渡とは?株式譲渡や会社分割との違いについても解説

経営戦略の選択肢として定着しつつあるM&A(合併・買収)。本記事では、M&Aの基本的な意味や実施する目的、具体的な進め方、費用、税金、そして成功の鍵となるポイントまでを体系的に解説します。検討中の経営者や担当者が、全体像を把握し適切な判断を行うための実用的なガイドとしてご活用ください

目次

M&Aの意味と目的

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、直訳すると企業の「合併」と「買収」を意味します。複数の企業が一つになる合併や、株式譲渡などを通じて他社の経営権を取得する買収など、その手法は多岐にわたります。
企業がM&Aを行う目的は、売り手と買い手で明確に異なりますが、共通しているのは「企業の持続的な成長と存続」を目指す点です。
主な目的

  • ●売り手の目的: 後継者不在の解消(事業承継)、従業員の雇用維持、創業者利益の確保、大手グループ入りによる経営基盤の強化。
  • ●買い手の目的: 新規事業への参入スピード向上(時間を買う)、規模の拡大によるコスト削減、技術やノウハウの獲得、シナジー効果(相乗効果)の創出。

M&Aが増加している背景

近年、日本国内においてM&Aの件数は増加の一途をたどっています。
最大の要因は、中堅・中小企業における深刻な後継者不足です。経営者の高齢化が進む中、親族や社内に適任者がいない場合、廃業を避けるための手段として第三者への事業承継(M&A)が選ばれています。また、変化の激しい市場環境に対応するため、自社単独での成長(オーガニックグロース)ではなく、M&Aによって迅速に競争力を高める戦略が一般的になってきたことも市場拡大を後押ししています。

M&Aのメリット・デメリット

M&Aは双方に大きな変革をもたらすため、利点とリスクを正しく理解することが検討の第一歩です。

項目

譲渡企業(売り手)

譲受企業(買い手)

主なメリット

事業承継の実現、個人保証の解除

成長時間の短縮、リソース獲得

主なリスク

企業文化の不適合、ロックアップ

統合(PMI)の失敗、簿外債務

譲渡企業(売り手)の視点

売り手にとってのメリットは、企業の存続と創業者の出口戦略です。
後継者がいなくても事業を継続でき、従業員の雇用や取引先との関係を守ることができます。また、株式譲渡により創業者は現金(創業者利益)を手にし、個人保証の解除によって精神的な負担からも解放されます。一方で、希望条件に合う相手が見つからないリスクや、譲渡後の環境変化によりキーマンが離職してしまうリスクには注意が必要です。

譲受企業(買い手)の視点

買い手にとってのメリットは、成長戦略の加速です。
自社単独では長期間要する新規事業の立ち上げや販路拡大を、既存の経営資源を取り込むことで一気に実現できます。また、規模の拡大によるコストメリットも享受できます。ただし、買収後の統合プロセス(PMI)がうまくいかない場合、期待した成果が得られず、投資回収が困難になるリスクも孕んでいます。

代表的なM&A手法

M&Aにより解決が期待される課題とは

M&Aには目的に応じて様々なスキームがありますが、代表的には以下の2つが選択されます。

項目

株式譲渡

事業譲渡

譲渡対象

会社全体(株式)

特定の事業・資産

手続きの煩雑さ

比較的簡便

複雑(個別移転)

税務(売手)

株主への課税(約20%)

法人税課税(約30%~)

株式譲渡

株式譲渡は、株主が保有する株式を買い手に譲渡し、経営権を移転させる最も一般的な手法です。
手続きがシンプルで、許認可や従業員の雇用契約も原則としてそのまま引き継がれるため、スムーズな承継が可能です。売り手株主(個人の場合)には譲渡益に対して約20%の税金がかかります。

事業譲渡

事業譲渡は、会社の一部または全部の事業を選別して売買する手法です。
不採算事業を切り離したり、簿外債務などの不要なリスクを遮断して取得したりできるメリットがあります。しかし、契約関係の巻き直しや許認可の再取得が必要で、手続きは煩雑になります。売り手企業には法人税等が課税されます。

M&Aの流れ

M&Aは、検討開始から最終的な統合完了まで、通常半年から1年程度の期間を要します。

一般的なプロセス

  • 1.検討・準備: 目的の明確化、自社分析、アドバイザーの選定。
  • 2.マッチング: ノンネームシート(匿名資料)等を用いた相手先探し。
  • 3.交渉・基本合意: トップ面談、条件交渉、基本合意書の締結。
  • 4.デューデリジェンス(DD): 買い手による買収監査の実施。
  • 5.最終契約・決済: 最終契約書の締結、対価の支払い(クロージング)。
  • 6.PMI(統合プロセス): 経営統合、システムや人事制度の統合作業。

M&Aを成功させるための重要プロセス

プロセスの成否を分ける特に重要なフェーズが「マッチング」と「エグゼキューション」です。

マッチング

M&Aの成功は、最適な相手と巡り合えるかどうかにかかっています。
単に条件面(金額など)だけで相手を選ぶのではなく、企業文化や経営理念の相性を見極めることが重要です。自社の強みを正しく評価してくれる相手を探すためには、広範なネットワークを持つM&A専門会社のデータベースを活用したり、金融機関からの紹介を受けたりするなど、多角的なアプローチが有効です。

エグゼキューション(手続きの実行・進捗管理

エグゼキューションとは、条件交渉からクロージングまでの実務手続き全体を指します。
特に重要なのがデューデリジェンス(買収監査)への対応です。予期せぬリスクが発覚した場合の条件変更や、スケジュール管理、利害関係者との調整など、高度な専門知識と交渉力が求められます。このプロセスを的確に管理・遂行できるかが、スムーズなM&A実現の鍵を握ります。

M&Aにおける企業価値評価方法

M&Aの取引価格(株価)を決定する際、その根拠となるのが企業価値評価(バリュエーション)です。

手法

特徴

主な採用場面

コストアプローチ

純資産をベースに算出(時価純資産法など)

簡便に評価したい場合

インカムアプローチ

将来の収益力を現在価値に換算(DCF法など)

将来性が重視される場合

マーケットアプローチ

類似上場企業等を参考に算出(マルチプル法など)

客観性が求められる場合

中小企業のM&Aでは、時価純資産に数年分の営業利益(のれん代)を加算する「年買法(年倍法)」と呼ばれる簡易的な評価方法が、目安として用いられるケースがあります。

M&Aにかかる費用

M&Aを行う際には、仲介会社や専門家への報酬、および実務費用が発生します。

主な費用項目

  • ●仲介手数料: M&A仲介会社等に支払う費用。着手金、中間金、成功報酬(レーマン方式が一般的)などで構成されます。
  • ●デューデリジェンス費用: 公認会計士や弁護士に監査を依頼する費用。規模によりますが、数百万円程度かかることが一般的です。
  • ●その他実費: 登記費用、印紙代、旅費交通費など。

M&Aで発生する税金について

M&Aによって利益が生じた場合、売り手側には税金が発生します。採用するスキームや株主の属性によって異なります。

  • ●株式譲渡(個人株主): 譲渡益に対して20.315%(所得税+住民税+復興特別所得税)の申告分離課税。
  • ●株式譲渡(法人株主): 譲渡益に対して法人税等(実効税率約30%〜)が課税。
  • ●事業譲渡(法人): 譲渡益に対して法人税等が課税。また、資産の種類によっては消費税も課税されます。

詳細な税金計算・シミュレーションは必ず税理士公認会計士に相談してください。

業界別M&A事例:製造業の事例

実際にM&Aを活用して、サプライチェーンの維持と後継者問題の解決を同時に実現した製造業の事例を紹介します。

【事例概要】地域の自動車部品製造業大手が後継者不在の外注先をグループインした事例

項目

譲渡企業(A社)

譲受企業(X社)

業種

自動車部品加工業

自動車部品加工業

課題

後継者不在、高齢化

サプライチェーン維持

成果

事業存続、従業員雇用維持

生産体制の維持

M&Aの背景と成功の要因

自動車部品加工業者A社は、高い技術力を持ちながらも後継者が不在でした。発注元であるX社は、A社の廃業による供給停止リスクを回避するため、M&Aによるグループ化を決断しました。
成功の要因は、X社がA社のこれまでの貢献を尊重し、柔軟な価格条件を提示したこと、そして長年の信頼関係により従業員の統合もスムーズに進んだことです。相互の信頼と事業上の必要性が合致した、理想的なM&A事例と言えます。

参考事例:地域の自動車部品製造業大手が後継者不在の外注先をグループインした事例

まとめ:M&Aのご相談は専門家へ

M&Aは企業の将来を左右する重要な経営判断です。
成功すれば大きなリターンが得られますが、法務・税務・財務などの専門知識が必要不可欠であり、プロセスも複雑です。自社だけで進めるのではなく、早期の段階から信頼できるM&A仲介会社やアドバイザーなどの専門家に相談することをおすすめします。豊富な経験に基づく客観的なアドバイスが、M&Aを成功へと導く羅針盤となります。