M&Aの基礎知識 会社分割とは

会社分割とは、ある会社が(分割法人)その事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることです。既存の会社が承継するものを「吸収分割」、新たに設立する会社が承継するものを「新設分割」といいます。法人税法では、分割の対価となる資産の帰属先に応じて、「分社型分割」と「分割型分割」とに区分しています。税法上、原則としては、時価により資産・負債を分割承継法人に対して譲渡したものとして、譲渡損益が計上されますが、これを「非適格分割」といいます。一定の要件を満たす場合、この譲渡損益は繰り延べられ、この特例的な取扱いを「適格分割」といいます。

(2) 会社分割における制限(会社法、許認可、独占禁止法など)

 
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◆会社法上の制限

□種類の異なる会社間での会社分割

会社には、株式会社(特例有限会社(※)を含む)、合名会社、合資会社、合同会社の4種類ある。
分割法人には、株式会社および合同会社がなることができる。
一方、分割承継(新設)法人には、基本的にはすべての種類の会社がなることができるが、特例有限会社は対象ではない。

(※)特例有限会社とは、会社法施行前に有限会社法に基づき設立された有限会社のこと。
会社法施行後においても、商号に「有限会社」という文字を使用しているが、株式会社の法規が適用される。

□債務超過会社の吸収分割

会社法は、吸収分割による承継の対象が債務超過であってもよいということを明確に規定している。
その場合は、分割承継法人の株主を保護するため、分割承継法人の吸収分割契約を承認する株主総会でその旨を説明しなければならない。
そのため、簡易分割の要件を満たす場合でも承継法人の株主総会を省略することはできない。

□日本の会社と外国の会社の吸収分割

日本の会社と外国の会社間の会社分割はできない。
ここでいう外国会社とは、外国法によって設立された会社である。

◆反対株主の株式買取請求

会社分割に反対する株主は、一定の要件のもと、会社に対し自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。

自社に反対株主の株式買取請求権を行使できる株主がいる場合、会社は、吸収分割を行うにあたって、効力発生日の20日前まで(新設分割の場合は、株主総会決議の日から2週間以内)に、株式買取請求の対象となる株式の株主に対し、会社分割を行う旨を通知し、または公告しなければならない。

株主が株式買取請求権を行使するためには、吸収分割の場合には効力発生日の20日前から効力発生日の前日までの間(新設分割の場合は、上記の通知または公告の日から20日以内)に、買取りを求める株式の種類および数を明らかにして、買取請求をしなければならない。

【反対株主の株式買取請求の手続】
【反対株主の株式買取請求の手続】

◆債権者保護手続

□対象となる債権者の範囲

会社分割が行われる場合、一定の範囲の債権者は、会社分割に異議を述べることができ、この「異議を述べることができる債権者」に対しては、債権者保護手続を行う必要がある。
具体的には、当事会社の債権者のうち、「異議を述べることができる債権者」とは以下の債権者である。

・吸収分割における承継会社の債権者
 承継会社のすべての債権者

・吸収分割または新設分割における分割会社の債権者

※分割会社が効力発生日分割対価の株式等のみを用いて剰余金の配当または全部取得条項付種類株式の取得をする場合
 ⇒分割会社のすべての債権者

※分割会社が効力発生日に分割対価の株式等のみを用いて剰余金の配当または全部取得条項付種類株式の取得をしない場合
 ⇒承継会社または新設会社に承継される債務の債権者のうち、分割後、分割会社に対して債務の履行(連帯保証債務の履行を含む)を請求できないもの

つまり、会社分割と同時に分割会社が剰余金の配当等を行わない限り、承継の対象とされなかった債務の債権者は「異議を述べることができる債権者」とならない。

【債権者保護手続の対象者】
【債権者保護手続の対象者】

◆吸収(新設)分割無効の訴え

会社分割の手続きにおける重大な瑕疵は、分割無効の原因となる。

たとえば、吸収分割契約承認の決議が無効であった場合や、債権者保護手続において反対債権者に弁済しないなど、適切な措置を行わなかった場合などがこれにあたる。

ただし、会社分割は、会社の一部門が移転するなど株主、債権者等に大きな影響を与える行為であるため、その手続きに瑕疵があるからといって、いつまでも法的に不安定では混乱が生じる。

そこで、会社分割無効の主張の方法、訴えの提起期間を制限し、無効の効果を画一的に規定している。

□吸収(新設)分割の無効の主張方法

分割無効の主張は、訴えをもってのみ行うことが認められている。

□吸収(新設)分割無効の訴えの提起権者

分割無効の訴えの提起権者は、効力発生時の分割会社・承継会社の株主(会社分割の効力発生により株主でなくなった者を含む)、取締役、監査役、清算人、破産管財人、会社分割について承認をしなかった債権者である。

□提起期間

会社分割の効力が生じた日から6ヵ月以内に提起しなければならない。

□吸収(新設)分割無効判決の効果

分割無効判決の確定は第三者に対してもその効果を及ぼす。

その効果は将来に向かってのみ効力を生じ、その効果が遡ることはない。
会社分割の効力発生後に取得した財産は分割当事会社の共有となり、債務は分割当事会社が連帯して弁済する責任を負う。

◆業法・許認可の取扱い

許認可対象事業を営む会社が会社分割を行おうとする場合、この許認可の取扱いが問題となることがある。

会社分割による承継が難しい順に大きく分類すると、「承継が認められていないもの」、「会社分割の効力発生要件として許認可の取得を要するもの」、「許可・承認等を得て承継が可能なもの」、「認可・承認等を得ずに承継が可能なもの」に分けることができる。
実行にあたっては許認可ごとに承継の可否と手続の確認が必要といえる。

なお、許認可対象事業を営む会社が会社分割を行う場合であっても、会社分割により許認可対象事業の全部または一部の承継や、許認可自体を承継しない限り、原則として、監督官庁の認可は必要とならない。

□承継が認められていないもの

一部の業法では、会社分割を行った場合の許認可の承継に関し個別の法令上の規定を設けていない。
この場合、当該許認可は会社分割によって承継されない。

このような許認可の例は、以下のとおりである。

・貸金業の登録

・古物商の許可

・酒類販売業の免許

・毒物劇物製造業、輸入業、販売業の登録

・医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の製造販売業、製造業の許可、医薬品の販売業の許可、高度管理医療機器等・管理医療機器の販売業・賃貸業の許可、医療機器の修理業の許可

・一般労働者派遣事業の許可、特定労働者派遣業の届出

・火薬類製造業、販売業の許可

・一般建設業、特定建設業の許可

・宅地建物取引業の免許

・一般廃棄物収集運搬業、産業廃棄物収集運搬業、特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可

このような承継が認められない許認可の場合、許認可対象事業を承継する会社の側で新たに許認可を取得する必要がある。
そのため、あらかじめ受け皿となる会社をつくり許認可を取得(または、分割と同時に許認可を取得できるよう予備申請を)しておき、この会社を承継会社とする吸収分割を行うなどの方法が考えられる。

□会社分割の効力発生要件として許認可の取得を要するもの

一部の業法では、許認可対象事業の全部または一部を承継する会社分割について、許認可の取得を会社分割の効力発生要件としている。

ただし、許認可対象事業の「全部」を承継する会社分割において、効力発生要件としての許認可を取得した場合、分割承継(新設)法人が許認可を承継する旨を規定している。

このような許認可の例は、以下のとおりである。

・信託会社

・一般信書便事業、特定信書便事業

・債権管理回収業

・一般ガス事業、簡易ガス事業

・電気事業

・熱供給事業

・一般旅客定期航路事業

・一般貨物自動車運送事業

・鉄道事業

・一般旅客自動車運送事業、自動車道事業

□許可・承認等を得て承継が可能なもの

一部の業法では、許認可の対象となっている施設、事業などを承継する会社分割を行う場合、許認可の取得が会社分割の効力発生要件となっていない。
監督官庁より認可・承認を得ることにより、許認可を分割承継(新設)法人が承継することを許容している。

許認可対象事業の全部または一部を承継する場合に許認可の承継を認めるものと、事業の全部を承継する場合に限り許認可の承継を認めるものが存在する。

このような許認可の例は、以下のとおりである。

・風俗営業の許可

・委託放送事業の認定、認定包装持株会社の認定

・旅館業の許可

・一般廃棄物処理施設、産業廃棄物処理施設の設置の許可

・土地の掘削の許可、温泉採取の許可、温泉の利用の許可

□認可・承認等を得ずに承継が可能なもの

一部の業法では、許認可の対象となっている施設、事業などを承継する会社分割を行った場合に、原則として、認可・承認を得ることなく許認可が承継される旨を定めているものがある。
この場合、通常、会社分割の効力発生後に届出を行う義務が課せられている。

ただし、一部の業法では、承継が認められているのは、許認可の対象となっている事業の「全部」を承継させる場合に限られていることに留意を要する。

このような許認可の例は、以下のとおり。

・特定規模電気事業の届出

・電気通信事業の登録

・有料放送管理事業の届出

・たばこ特定販売業、卸売販売業の登録、小売販売業の許可

・食品衛生法51条に定める飲食店等の営業の許可

・医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器の製造販売の品目ごとの承認

・前払式割賦販売業の許可

・大規模小売店舗の届出

・河川の流水の占有、土地の占有、土石等の採取、工作物の新築等、土地の掘削等の許可

・特定貨物自動車運送事業の許可

・第一種貨物利用運送事業の登録

・発券倉庫業を除く倉庫業の登録

・特定旅客自動車運送事業の許可

・騒音規制法上の特定施設の設置の届出

□産業競争力強化法の中小企業承継事業再生計画の認定を受けた場合

上記にかかわらず、中小企業が「第二会社方式」による中小企業承継事業再生計画の認定を受けた場合、例外的に、一部の許認可を承継することが認められる。

許認可が必要な事業に関して、事業譲渡や会社分割で事業を第二会社に承継した場合、多くの許認可は、原則として第二会社に承継することはできない。

そのような場合、第二会社で改めて許認可を取得する手続に時間がかかり、事業譲渡や会社分割の実行まで時間がかかってしまう。

このような事情に配慮し、中小企業承継事業再生計画の認定を受けた場合、以下の許認可については第二会社に承継することが認められている。

・旅館業の許可

・一般建設業・特定建設業の許可

・一般旅客自動車運送事業の許可

・一般貨物自動車運送事業の許可

・火薬類の製造・販売営業の許可

・一般ガス事業・簡易ガス事業の許可

・熱供給事業の許可

◆独占禁止法上の制限

独占禁止法は、「共同新設分割または吸収分割によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」および「共同新設分割または吸収分割が不公正な取引方法によるものである場合」に該当する会社分割を禁止している。

そのため、ある一定以上の規模の会社同士が吸収分割や共同新設分割をする場合、事前に公正取引委員会へ届出を行い、事前審査を受ける必要がある。

□吸収分割における届出の要否

会社が吸収分割を行うにあたり、次のいずれかに該当する場合、公正取引委員会にあらかじめ届出を行わなければならない。

・分割法人(事業の全部を分割)の国内売上高合計額が200億円を超え、分割承継法人の国内売上高合計額が50億円を超える場合

・分割法人(事業の全部を分割)の国内売上高合計額が50億円を超え、分割承継法人の国内売上高合計額が200億円を超える場合

・分割法人(事業の重要な部分を分割)の対象部分の国内売上高が100億円を超え、分割承継法人の国内売上高合計額が50億円を超える場合

・分割法人(事業の重要な部分を分割)の対象部分の国内売上高が30億円を超え、分割承継法人の国内売上高合計額が200億円を超える場合

ただし、上記に該当する場合であっても、親子会社間の吸収分割、親会社が共通である子会社間の吸収分割(兄弟会社間の吸収分割)など、すべての当事会社が同一の企業結合集団に属する場合には、届出の必要はない。

□共同新設分割における届出の要否

会社が共同新設分割を行うにあたり、次のいずれかに該当する場合には、公正取引委員会にあらかじめ届出を行わなければならない。

・一つの分割法人(事業の全部を分割)の国内売上高合計額が200億円を超え、他の分割法人(事業の全部を分割)の国内売上高合計額が50億円を超える場合

・一つの分割法人(事業の全部を分割)の国内売上高合計額が200億円を超え、他の分割法人(事業の重要部分を分割)の対象部分の国内売上高が30億円を超える場合

・一つの分割法人(事業の全部を分割)の国内売上高合計額が50億円を超え、他の分割法人(事業の重要部分を分割)の対象部分の国内売上高が100億円を超える場合

・一つの分割法人(事業の重要部分を分割)の対象部分の国内売上高が100億円を超え、他の分割法人(事業の重要部分を分割)の対象部分の国内売上高が30億円を超える場合

ただし、上記に該当する場合であっても、親子会社間の共同新設分割、親会社が共通である子会社間の共同新設分割(兄弟会社間の共同新設分割)など、すべての当事会社が同一の企業結合集団に属する場合には、届出の必要はない。

□届出の方法

会社分割にあたり届出が必要な場合は、公正取引委員会または地方事務所へ計画届出書を提出する。
この届出受理の日から30日を経過するまでは、吸収分割・共同新設分割をすることができない。
したがって、この待機期間を踏まえてスケジュールを立てなければならない。

◆金融商品取引法上の規定

金融商品取引法、企業内容等の開示に関する内閣府令は、公益・投資家を保護するため、一定規模の株式の発行、移動を行う場合は、その内容を開示するよう定めている。

そのため、有価証券報告書の提出義務のある会社が、ある一定以上のインパクトがある会社分割をする場合は、臨時報告書を提出しなければならない。
また、有価証券報告書の提出義務のない会社であっても、一定の場合には、有価証券届出書を提出する必要がある。

□有価証券報告書の提出義務のある会社における届出の要否

有価証券報告書の提出義務のある会社(主に上場していない会社)が分割承継法人となる場合であって、分割法人が有価証券報告書の提出義務があり、分割承継法人の株式が分割法人の株主に交付される場合、有価証券届出書の提出が必要となる。

なお、有価証券報告書の提出義務のない会社が分割法人となる場合は、提出義務はない。

□届出の方法

会社分割にあたり届出が必要な場合は、提出会社の本店を管轄する地方財務局へ臨時報告書または有価証券届出書を提出する。

 
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