M&Aの基礎知識 DESとは

デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap:DES)とは、ある会社に対して金銭債権を有している債権者がその債権を債務者の株式に振り替えることをいいます。DESの会計・税務・法務について、その取扱いを解説します。 DESを活用すれば、債務が減少して資本が増加することになるため、債務者側である会社にとっては、バランスシートが改善されるだけでなく、債権者に株主として企業経営に参画してもらうことできるというメリットがあります。債権者側としては、将来、債務者企業が実際に再生した場合、保有株式から売却益(キャピタルゲイン)および配当収入(インカムゲイン)を得る可能性を残すことができる点で、債権放棄よりも有利です。 DESは、会社の財務内容が悪いときに行われることが多いため、通常、債権の評価額は券面額を下回ります。その場合の新株の発行価額は、会社の財務内容を反映した債権の評価額とすべきか(「評価額説」)、債権の券面額を基準とすべきか(「券面額説」)という議論があります。近年では、会計上では「券面額説」も採用されていますが、税務上の取扱いは「評価額説」に従うことになるので、注意が必要です。また、通常は100%グループ内におけるDESのみが適格現物出資に該当するため、金融機関などの第三者によってDESが実施される場合は非適格現物出資となり、債務消滅益が発生します。ただし、再生手続中の企業であれば、期限切れ欠損金を繰越欠損金に優先して損金算入して債務消滅益から控除することができます。

(7) 適格現物出資によるデット・エクイティ・スワップ(DES)

 

デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap:DES)は通常、金銭債権のみの現物出資として行われ、事業の移転を伴わない。
つまり、法人税法上の適格要件の判定における事業継続要件や従業者引継要件を満たすことがない。
すなわち、適格現物出資に該当し得るのは100%グループ内でのDESに限られることになる。

◆現物出資法人(債権者)における取扱い

適格現物出資に該当するDESが行われた場合、現物出資法人(債権者)は移転資産(金銭債権)を現物出資直前の帳簿価額により譲渡し、被現物出資法人株式を取得したものとして取り扱う。
そのため、現物出資により譲渡損益は計上されない。
交付を受けた被現物出資法人株式の取得価額は、移転資産(金銭債権)の税務上の帳簿価額となり、現物出資法人にあっては利益積立金額及び資本金等の額の異動は生じない。

◇被現物出資法人(債務者)における取扱い

被現物出資法人(債務者)においては、移転を受けた金銭債権を現物出資法人における税務上の帳簿価額で受け入れるとともに、受入れた簿価純資産価額に相当する資本金等の額を増加させる。
自己が債務者となっている債権を取得することから、債権債務が同一人に帰属し、混同により消滅する。
ここで、現物出資法人における債権の帳簿価額と被現物出資法人における債務の帳簿価額が一致していない場合には債務消滅差損益が生じることとなる。
例えば、親法人(現物出資法人)が子法人(被現物出資法人)に対する債権を第三者からディスカウント取得しているようなケースである。
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【ケーススタディ】

<前提>

・X社はY社の株式を100%保有しており、この完全支配関係は現物出資後も継続する見込みであり、税務上、適格現物出資に該当する。
・X社(現物出資法人)はY社(被現物出資法人)にY社宛貸付金(債権金額5,000)を現物出資により移転した。しかし、X社は当該債権を第三者からディスカウント取得しているため、債権金額(5,000)と帳簿価額(4,800)が一致していない。
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◆現物出資法人X社における会計上の仕訳

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100%子会社に対する現物出資であるため、事業分離における分離元企業の会計処理に準じて行う。
親会社が追加取得する子会社株式の取得原価は移転事業に係る株主資本相当額に基づいて計算され、移転損益は生じない(結合分離適用指針97-2、226)。

◆現物出資法人X社における税務上の仕訳

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◆現物出資法人X社における税務調整仕訳

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Y社株式(1,000)=税務上の増減額(4,800)-会計上の増減額(3,800)
貸倒引当金(1,000)=税務上の増減額(0)-会計上の増減額(▲1,000)

◆現物出資法人X社における申告調整等

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◇被現物出資法人Y社における会計上の仕訳

・現物出資による資産の受入れ

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100%親会社からの現物出資であるため、共通支配下の取引として、「親会社における」適正な帳簿価額(4,800-1,000=3,800)により受入れ、受入れた債権の適正な帳簿価額(3,800)の資本金の額を増加させる。

・混同による債権・債務の消滅

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◇被現物出資法人Y社における税務上の仕訳

・現物出資による資産の受入れ

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適格現物出資に該当するため、現物出資法人における税務上の帳簿価額(4,800)にて受入れ、移転を受けた資産・負債の、現物出資法人における現物出資直前の帳簿価額(4,800)をもって資本金等の額を増加させる。

・混同による債権・債務の消滅

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◇被現物出資法人Y社における税務調整仕訳

・現物出資による資産の受入れ

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貸付金(1,000)=税務上の増減額(4,800)-会計上の増減額(3,800)
資本金等の額(1,000)=税務上の増減額(4,800)-会計上の増減額(3,800)

資産・負債項目に係る調整は、別表五(一)「利益積立金額の計算に関する明細書」に記載する必要があるため、調整仕訳を下記のように分解する。
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・混同による債権・債務の消滅

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債務消滅差益(▲1,000)=税務上の債務消滅差益(200)-会計上の債務消滅差益(1,200)
貸付金(▲1,000)=税務上の増減額(▲4,800)-会計上の増減額(▲3,800)

◇被現物出資法人Y社における申告調整等

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別表五(一)上の利益積立金額の増加合計(1,200-1,000=200)と、税務仕訳上の利益積立金額の増加合計(債務消滅益200)は一致する。

(※1)別表四の債務消滅差益の減算調整(1,000)に対応。
(※2)会計上の繰越利益剰余金の増減のうち現物出資・混同による債権債務の消滅に係る債務消滅益(1,200)。

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別表五(一)上の資本金等の額の増加合計(4,800)は税務仕訳上の資本金等の額の増加額(4,800)と一致する。

(※3)利益積立金額と資本金等の額の入り繰り。
(※4) 会計上の繰越利益剰余金の増減のうち現物出資・混同による債権債務の消滅に係る貸付金(3,800)。

 
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