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M&Aの基礎知識 7. M&A(買収)ファイナンスの基礎知識

M&A(買収)ファイナンスの手法は、大きく分類すると、シニア・ローン、メザニン・ファイナンス(優先株式、劣後ローン等)の2つがあります。金融機関や投資家の資金を活用して少ない自己資金で対象会社を買収すれば、投資効率を高めることができます。 最も一般的な買収ファイナンスは、株式の買取り資金をシニア・ローンと買手の拠出する普通株出資によって調達する方法です。シニア・ローンは、資金調達の構造上で最も期間が短く、返済が最優先され、かつ、多くの場合は有担保のファイナンスになります。シニア・ローンの貸手が提供できる金額の上限では、想定するレバレッジ比率の実現には足りない大規模な案件である場合、シニア・ローンによる資金調達に加えて、メザニン・ファイナンスを利用します。メザニン・ファイナンスとは、デット(有利子負債)とエクイティ(自己資本)の中間的位置づけにあたるプロダクツを指し、デットに該当するものでは劣後ローン、エクイティにあたるものでは優先株式が代表的です。 また、資金調達主体ごとに分類すると、その信用力を引当てとする取引(コーポレート・ファイナンス)と、買収目的で設立されたSPC(Special Purpose Company:特別目的会社)を資金調達主体とすることで、買手の信用力ではなくSPCと買収対象となる会社の信用力のみを引当てとする取引(ノンリコース・ファイナンス)が挙げられます。 コーポレート・ファイナンスは事業会社である買手によって行われることが多く、その買手自身の与信に基づいて資金調達を行うことができるので、M&Aの局面であっても、考慮するべき点は通常の設備投資と大きく変わりません。ノンリコース・ファイナンスが用いられるのは、経営陣によるMBOや投資ファンドによるM&Aのケースです。 この場合、LBO(Leveraged Buy-Out)による資金調達が行われることが多く、その可否は主として買収対象となる会社の財産状態や弁済能力により判断されます。つまり、対象会社の信用力と収益獲得能力を担保に資金調達を行うことになるのです。

7-4. 【メザニンの手法】優先株式の基礎知識

 

優先株式の概要

優先株式は、エクイティ型投資商品の一つであり、担保権を付すことができないことから、一般的には、劣後ローンよりもリスクが高いメザニン・ファイナンスの手法と見なされる。
剰余金の配当または残余財産の分配が普通株式に優先して行われ、金利にあたるものとして配当金が支払われる。
優先株式といっても、さまざまな設計が考えられ、キャピタルゲインの取得という側面に重きを置き、株式としての性質を強く残したものもあれば、期中において一定水準の利回りを安定的に確保することに重きを置いたものもある。

メザニン・ファイナンスとして組成される場合、劣後ローンにおける利息と同様、定期的な剰余金の配当が求められ、最終的にメザニン投資家に対して支払われる金額も一定水準の利回りとしてあらかじめ計算された金額とされることが多い。
例えば、固定利率または一定の金利指標にスプレッドを上乗せした変動利率を発行価額に乗じることにより優先配当金額が決定される。

優先株式発行の手続き

優先株式の発行に際しては、発行会社の株主総会の特別決議により優先株式の内容を定款に定めるための定款変更及び優先株式の発行が決議される。
また、それ加えて、発行会社及びメザニン投資家の間の投資契約、スポンサー及びメザニン投資家の間の株主間契約、シニア貸付人及びメザニン投資家等の間の関係者間合意書などが締結されることで、発行会社及び他のステークホルダーとの利益調整がなされる。

優先株式に対する優先配当の取扱い

優先株式では、劣後ローンにおける利息と同様に、期中における安定的な利回りを確保することを目的として、累積条項と非参加条項を盛り込んだ優先配当が規定されることが多い。
累積条項とは、ある事業年度における優先株主に対する配当金が所定の優先配当額に満たない場合、未払金額が翌営業年度以降に累積されるという取決めをいう。
非参加条項は、スポンサーに対して剰余金配当を行う場合であっても、メザニン投資家に対しては優先配当金を超えた配当が支払われることがないといった内容のものである。

すなわち、ある営業年度において優先配当金の支払後に普通株主に利益配当を行うことがあっても、優先株主に対しては配当を行わない。
具体的な優先配当額については、発行要項の内容として取締役会決議により定めることができるが、そのためには、発行会社の定款において、剰余金配当の価額の決定の方法、配当をする条件その他配当に関する取り扱いの内容またはその要綱を定款で定める必要がある。

優先株式における金銭対価の取得請求権

優先株式においても、劣後ローンの元本弁済及び繰り延べられた利息の支払にあたる投資元本回収の仕組みを実現するために、「金銭対価の取得請求権」が規定されることがある。
メザニン投資家は、この権利を行使することにより、発行会社から金銭を受領して投資回収を行うことができる。
ただし、行使できるタイミングは、通常、関係者間合意書において、シニア・ローンの完済後に限定されている。
また、分配可能額の範囲内でしか実施できないため、確実な回収手段となるわけではない。

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優先株式における残余財産分配請求権

優先株式は、一般的に、期中における配当とともに、残余財産の分配の場面においても、普通株式に対する優先性(残余財産分配請求権)を認められ、所定の優先分配額にいたるまでは優先して残余財産分配を受けることができる。
その金額は、「金銭対価の取得請求権」の対価の金額(償還価額)と同額とするのが通常である。また、仮に余剰の残余財産があっても、当該償還価額を超えてメザニン投資家に対して分配はなされないのが一般的である。
なお、残余財産の分配の場面では、株式発行によるメザニン・ファイナンスは、債権であるシニア・ローンに対して当然に優先することとなる。
そのため、シニア債権者の優先性の確保という観点から手当てする必要はない。

優先株式における議決権と拒否権

買収ファイナンスに参加するメザニン投資家は、発行会社の経営について直接の発言権を持つことを企図してないことが多い。
通常、優先株式は無議決権株式とされるが、普通株主であるフィナンシャル・スポンサーおよび発行会社との間で協議・交渉して決める。
メザニン投資家の投資価値に重大な影響を及ぼす可能性のある発行会社の行為については、種類株主総会決議事項とする旨や、要同意事項を定款や株主間契約などで定めておくことにより、拒否権を付与する場合もある。

対象となる行為としては、定款変更、株式・新株予約権等の発行、組織再編行為・事業譲渡等、自己株式の取得などが考えられる。

 
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