基礎知識
更新日:2021/02/10 公開日:2017/06/01
テーマ: 02.M&A
資本業務提携のメリットや留意点、その目的とは
目次
資本業務提携とは
資本業務提携は、実務上「業務提携」と「資本提携」を同時に実施することを指す言葉として使われています。
ただし、「資本業務提携」「業務提携」「資本提携」はいずれも法令で定義された言葉ではありません。
一般的に、業務提携とは、協同して業務を行うことによって、他社の技術やノウハウを導入することで、お互いの業務を効率化し、付加価値を高めることです。
一方、資本提携は、当事者となる企業の一方が、他方の企業の株式を取得することをいい、お互いの株式をそれぞれ取得することもあります。
つまり、資本業務提携とは、業務提携(アライアンス)に加えて、資本提携による株式の異動もあるため、業務提携を単独で行う場合よりも連携をより深めることができる手法といえるでしょう。
支配権を完全に取得するような買収を行うと、対象会社が上場会社である場合、上場廃止になってしまうため、これを避けるために資本業務提携が使われることもあります。
資本業務提携も広い意味ではM&Aの一つといえますが、合併や買収と違い、少なくともその段階では支配権の獲得を意図していないケースが通常です。
対象会社の独立性やブランドなどを維持しながら、柔軟に連携することが目的になります。
資本業務提携を行うことによるメリットと留意点
資本業務提携では、パートナー企業による経営への参画、財務面での支援などが期待できるため、業務提携単独での契約よりも強力な関係を築くことが可能です。
資本を受け入れる企業は、これにより、販路の開拓や製品・商品の共同開発など、経営資源を拡充できるメリットがあります。
資本を提供する企業にとっては、対象会社の業績が上がれば、取得した株式の価値も上昇することになるため、これがインセンティブの一つになります。
他方、資本政策の観点から十分に検討を行う必要があります。
パートナー企業からの出資を受け入れて株主になってもらうということは、その出資比率に応じた経営への参加権も与えることを意味します。
少ない出資比率であっても、それに応じた権利を持つことになるという点には留意する必要があります。
資本業務提携の手法
(業務提携の手法)
業務提携においては、協力関係を明確にするために「業務提携契約」を取り交わすのが一般的です。
契約書の作成にあたっては、当事者間の実際のビジネスの内容、状況、特殊性が十分に反映させる必要があります。
また、どのような内容にすれば双方がメリットを享受でき、どのように交渉すれば話がまとまるかについても十分に検討しなければなりません。
そのため、業務提携契約については、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家に任せきりにせず、経営者がしっかりと主導していく必要があります。
業務提携の類型として、生産提携、販売提携、技術提携が挙げられます。
生産提携
生産提携は、パートナー企業に対して生産の一部や製造工程の一部を委託することです。
委託する企業は、設備投資や人員確保をすることなく生産量を増やすことができ、受託する企業は、工場の設備稼働率を引き上げることができます。
販売提携
販売提携とは、お互いの販路と製品・商品を提供し合うことをいいます。
新しい分野や製品・商品、地域への進出を行った場合、パートナー企業が有している販売力を活用することで、迅速に収益化を目指すことができます。
技術提携
技術提携には、共同開発を行うパターンと、既にある技術を提供するパターンがあります。
共同開発のメリットとしては、技術の複合化への対応、開発のスピードアップ、リスクの分散などが挙げられます。
一方、業務提携のリスクとしては下記が考えられます。
- パートナー企業に利益を独占される
- 提携企業とのトラブルや第三者からのクレームにより訴訟沙汰になる
- 自社のブランドが毀損する
- 自社の技術・ノウハウや顧客情報が漏洩する
- 知的財産権が侵害される など
(資本提携の手法)
資本提携の具体的な手法としては、株式譲渡によって発行済株式を取得する方法と、第三者割当増資を利用して新株を取得する方法があります。
資本業務提携で利用される場合、お互いに安定株主となりながらも独立性を保つ形での資本提携が多くあります。
株式譲渡
株式譲渡とは、個人または法人が保有する株式を売買することで、株主の地位を他者に移転させる手続きです。
パートナー企業から支払われる対価は株主が受け取ることになり、譲渡益(譲渡所得)には課税されます。
税率は、株主が個人であれば20.315%、法人であれば約30%です。
第三者割当増資
第三者割当増資とは、会社が特定の第三者に対して新株を引き受ける権利を割り当てる形態の増資です。
売買ではなく増資なので、パートナー企業から受け入れる資金は会社に入り、譲渡損益は生じないため、課税されることはありません。
まとめ
資本業務提携は、広い意味ではM&Aの一つとされていますが、経営の支配権を獲得することが目的ではないため、合併や買収よりも業務提携・資本提携それぞれにおける具体的な契約内容の作りこみが重要になってきます。
お互いにWin-Winの関係が築けるのであれば、経営資源の共有によって効率的な経営ができることになり、独立性を保ちながらも売上の向上、利益の獲得を期待できるでしょう。
海外展開や新規事業の立ち上げなどの場面で、資本業務提携の活用は効果的です。