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コラム

2021/01/20

テーマ: 01.事業承継 02.M&A

有限会社における廃業・事業承継・M&Aの実態と必要な手続を
詳細まで解説

はじめに

人は法律でいくつかの種類に区分されており、最も一般的なのが株式会社と有限会社で、その他には合同会社、合名会社や医療法人などが存在しています。以前は株式会社と有限会社が別々の根拠法令によって規定されていましたが、2006年の会社法改正によって有限会社が株式会社の一類型として規定されることとなり、株式会社と有限会社との違いはほとんどなくなっています。

有限会社が廃業・事業承継・M&Aをする場合、株式会社のケースと異なる部分はあるのでしょうか?
そこで、過去に数多くの有限会社におけるM&Aを手がけてきた山田コンサルティンググループの折田朋広に、有限会社の廃業や事業承継そしてM&Aの実態と必要な手続などについて解説していただきました。

目次

1.有限会社の定義とは

2006年の会社法改正によって、既存の有限会社は会社法上において株式会社となり、会社法改正以前の有限会社の各種規定について、株式会社と同様の規定が適用されるように読み替える法律(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律。略称「整備法」。)が制定されました。これによって、例えば「社員」とよばれていた出資者は「株主」と読み替えることとなり、現在の有限会社は、特例有限会社と定義される株式会社の一形態として株式会社とほぼ同じ構造になっています。

会社法の改正以前までは、起業すなわち会社組織を作るのには「最低資本金制度」があり「株式会社は1,000万円、有限会社は300万円」と決められていました。すなわち、制度理念として、資本規模が大きく全国的な事業を行いたい場合には株式会社を、資本規模が小さく地域密着型の家族経営に近い事業を行いたい場合には有限会社を選択するという棲み分けがありました。

しかしながら、会社法改正によって最低資本金制度が撤廃され、資本金が少額であっても株式会社が設立できるようになり、株式会社と有限会社との垣根もほぼなくなりました。同時に「有限会社法」が廃止されたことで、現在は有限会社の新たな設立はできなくなっています。

2.有限会社による廃業以外の選択肢は

有限会社では、廃業以外の選択肢はどのようなパターンがあるのでしょうか?

有限会社も株式会社と同様に、会社の定款で存続期間や解散事由を定めている有限会社もありますが、株主総会で自主的に解散して廃業するケースがほとんどです。
大規模な開発プロジェクトの終了等を解散事由とする事例が株式会社ではありますが、有限会社はそもそも地域密着型の家族経営の会社が多いことから、そのような例はほとんどありません。

以下に、有限会社における廃業以外の選択肢について代表例を挙げてみましょう。

(1)休業する

資産も負債も損益もない有限会社でも、解散清算により廃業するには登録免許税や司法書士や税理士等の専門家に対する手数料で20~30万円程度の費用がかかります。会社を存続させる場合には法人住民税の均等割が課税されるものの、解散清算により廃業すると手数料がかかることから廃業するよりも休業を選ぶ有限会社もあります。

(2)M&Aにより事業承継する

有限会社がM&Aによる事業承継のケースを選択した場合は、特に株式会社のケースと相違点はなく、株式(旧有限会社の際の出資)の譲渡や事業譲渡を行うことになります。ちなみに、会社法改正により、有限会社の定款には株式の譲渡制限があるものとみなされるため、必然的に株式譲渡では譲渡承認手続が必要です。

3.有限会社のM&A

有限会社のM&Aでは「買手を広く探したい」「譲渡する手続きに不安がある」という場合、M&A仲介会社やアドバイザーなどを利用する傾向があります。もっとも「有限会社だから売れない」という心配は無用です。買手が、有限会社を株式会社とは特別異なる法人と見ていることはなく、判断するのは「買収に値する会社かどうか」で、売手の中身を重視するケースが大半です。

したがって、有限会社だからという理由だけで買手がM&Aを躊躇するようなケースはほとんどありません。有限会社は家族経営が多いことから、家族・親族間での対立が生じている場合など、むしろ売手の事情でM&Aに踏み切れないというケースがたまにある程度です。ちなみに、当社がM&Aを仲介した直近数年間をみると、有限会社は全体の5%程度で、大半は売手でほとんどが株式譲渡を目的としているのが実情です。

また、小規模な有限会社なら、M&Aのマッチングサイトに登録しておくことも視野に入るでしょう。マッチングサイトでM&Aが成約となれば幸運という感覚で登録し、その間に資金を貯めておき、よい相手先が見つからなければ廃業する、というのも現実的な選択肢といえます。

4.廃業手続きをする上で株式会社と異なる点とは

企業が解散・廃業にいたる経緯は千差万別ですが、小規模経営の会社が多い有限会社では、会社それぞれの理由がみられます。以下に、その代表例を挙げてみましょう。

(1)後継者問題による

有限会社は、地域に根付いた事業運営をされている会社が多く、家族経営で会社と自宅が同じという有限会社も多いです。そのため、後継者が不在の場合にはM&Aで第三者に事業を任せるのではなく、手元の資金を使って解散清算により自主廃業を選択されるケースもあります。なお、資産超過の状態で解散清算を行うよりも、株式譲渡でM&Aを行った方が税務上のメリットがあるのは、有限会社も株式会社と同様です。

(2)経営状況の悪化による

経営状況の悪化によって負債の返済が延滞し廃業を選択するケースがあります。ただ、有限会社の地域性が高く家族経営が多いという特徴から数億の負債を抱えて倒産するというような会社は少ないです。

なお、仮に返済が困難な負債を抱えて破綻してしまった場合、株式会社では選択できる特別清算の手続が有限会社のままでは利用できないため、破産手続の申し立てを行うしかありません。そのため、現状が有限会社で特別清算による廃業を考えられる場合は、解散前に有限会社から株式会社への商号変更を行う必要があります。

5.有限会社の廃業時の手続きの流れ

有限会社の廃業に多いパターンは、株主総会を開いて決議をとる「株主総会の決議による廃業」です。以下にその流れを記述しましょう。

・株主総会で会社解散を決議し、清算人を選任
・解散登記を法務局に提出
・官報公告と個別催告により債権者に対して債権届出の催告(債権の申出を要請:猶予期間2ヵ月)
・解散する時点での会社保有資産負債を調査し、解散時の貸借対照表等を作成
・解散時貸借対照表等を株主総会で承認を得る
・解散申告を税務署に提出
・公告後2ヵ月経過した時点で解散時の負債を確定
・清算事務を実行(資産の換価、債権回収及び負債返済)
・残余財産を確定させ、残余財産の分配を実行、清算報告書を作成
・結了申告を税務署に提出
・株主総会で清算報告書について承認を得る

上記は、株主総会の決議による解散清算を行う際の会社法上の手続を主に列挙していますが、より実務的な清算事務の例としては以下の手続が発生します。なお、清算事務手続の一部、例えば官公署への手続が未済であることに気づかずに清算結了登記をしてしまうと、後日未済だった手続を行うためだけに会社を一旦復活(会社の継続)させて手続を行わなければならないことがあります。そのような事態を防ぐために、清算結了前に全ての清算事務が完了しているか一つ一つ確認することが重要です。
・銀行や証券会社等の金融機関への届出
・水道光熱費関連(電気、ガス、水道、電話回線、携帯電話、インターネット及び新聞等の定期取引)への届出
・器具備品、店舗や駐車場等のリース契約の解除
・各種保険の解約
・建物取壊に係る不動産登記や自動車の廃止登録等の官公署への手続

6.有限会社の廃業時に必要な書類

有限会社を株主総会の決議により解散清算した場合、まずは法務局への登記申請が必要となります。

有限会社の解散清算の登記申請をする際に必要とされる書類を以下に挙げてみましょう。

解散時
・株主総会議事録(解散の承認、清算人の選任)
・就任承諾書
・改印届書
・清算人の印鑑証明書
・株主リスト
・登記申請書

清算結了時
・株主総会議事録(清算報告書の承認)
・株主リスト
・登記申請書

上記の書類を揃えて法務局に提出します。ご自身でも手続きを行うことは可能ですが、手続詳細の調査、書類の準備や法務局との対応等については煩雑なものも多いため、司法書士に手続を依頼することもご検討ください。

また、法務局への提出書類ではありませんが、会社法上の手続を行うため、官報公告、債権者への個別催告書や解散時の貸借対照表の承認を行った株主総会議事録を準備する必要があります。

7.有限会社の廃業にかかる費用とは

有限会社の廃業時に必要な経費としては以下のものが考えられます。
個別の費用額は項目により違いますが、以下にその概要を紹介します。

・解散と清算結了にかかる経費
・2回の申告に必要な納税額
・資産売却時に係るコスト
・専門家の報酬(司法書士や税理士の報酬)
・登録免許税4.1万円
・官報公告は約5万円

上記の総額の目安として、総額で30万円~40万円程度は最低限必要となると見積もられるとよいでしょう。

8.まとめ

会社法改正前の有限会社は、特例有限会社として継続していくこととなりました。有限会社も株式会社の一類型であると位置づけられたため、その実態は一般的な株式会社と大きな差異はなく、会社の解散・廃業・M&Aにおいても手続上の違いはほとんどありません。

私共のクライアントのうち有限会社の割合は概算で全体の約15%で、親族内承継する有限会社は会社全体の約5%程度とみられています。そして、全有限会社のうち5%くらいが会社を株主総会の決議によって解散清算し廃業している状況で、その会社数はここ数年で増加傾向にあります。

有限会社も、株式会社と同様に自社の経歴と事業実績、そしてM&Aによる事業発展の実現性などを最大限にアピールできれば、理想的なM&Aが実現できる可能性は充分にあります。

経営者の皆様にとって「廃業かM&Aか」は実に難しい選択であり、お悩みになられている経営者の方が多くいらっしゃいます。いずれを選択しても、これまで日本経済の一翼を担ってこられたご功績は変わりません。経営者の皆様にとっておそらく最初で最後の重大な経営判断をご自身がご納得された上で行われることを切に願っております。

話者紹介

山田コンサルティンググループ株式会社
コーポレートアドバイザリー事業本部M&A事業部
シニアマネージャー 司法書士
折田朋広(おりたともひろ)

司法書士事務所勤務を経て2008年より山田ビジネスコンサルティング株式会社(現 山田コンサルティンググループ株式会社)に入社。それ以降、株式会社、有限会社、合同会社、医療法人等の幅広い法人をクライアントとして業務を行っている。業務内容は、事業再生や事業承継を目的としたM&Aアドバイザリー業務を中心に、事業承継コンサルティング業務、M&A後のPMI業務や組織管理体制の構築支援業務等に従事している。

※本記事は、弊社コンサルタントが話者として事業承継総合センターに掲載された記事と同内容の記事です。
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