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コラム

2021/02/24

テーマ: 02.M&A

活発化するM&A コロナ禍が事業再構築の契機に

このコロナ禍の状況下、M&Aが増えている。ひとつには後継者不在の中小企業がコロナ禍を契機に経営の継続を断念し、会社の売却を決断する例が増えていることが要因だが、そればかりでなく、生き残りをかけた業界再編、事業の再構築など目的は多岐にわたる。
M&A市場の動向から、コロナ禍を乗り切ろうと苦闘する企業の必死の思いと戦略をうかがい知ることができる。

目次

近年、M&Aが企業成長に欠かせない戦略のひとつとなっていることは周知の通りです。
特にコロナ禍の状況において、企業経営におけるM&Aは必要性・重要性を増しており、企業経営に携わる皆様はM&Aへの理解を深めておく必要があります。
本記事では、いくつかの視点から企業のM&Aに関して考察を行い、2021年のコロナ禍の状況において、どのようなM&Aが行われていくか、また行うべきか、筆者の考えを述べたいと思います。

2020年も増加したM&A

図1は過去20年間に日本企業がかかわったM&A件数の推移を示しています。企業のM&Aは、リーマンショックの影響により一時的に停滞したものの、ほぼ一貫して増加傾向を示しており、2019年には過去最高の4,088件のM&Aが行われました。この件数は「開示されている案件のみ」のものですので、開示されていない案件を含めると、2倍程度のM&Aが実行されているのではないかと言われています。

図②は最もM&Aが行われた2019年と、コロナ禍に見舞われた2020年に行われたM&Aの件数を月次で比較したデータです。緊急事態宣言中の4・5月は停滞したものの、6月以降は2019年並みか、それを超える水準でM&Aが行われました。
本記事を執筆するに当たり、改めて直近の業界別、地域別、規模別、目的別などの各種M&Aの統計データをつぶさに確認しましたが、コロナ以前から続いている活発なM&Aの傾向は継続しており、大きな変化・停滞などは見られませんでした。
M&A取引は売り手と買い手が存在し、その需給がバランスすることで成立します。現時点においては売り手と買い手の需要と共有が高水準で維持されていると言えます。

経営者のマインドに変化

一方、まだ顕在化していない案件、足許の企業経営者のニーズなど、M&Aの先行指標には変化の兆候も感じられます。
昨年の夏以降、弊社に寄せられた経営者の皆様からのご相談内容、相談に臨むスタンスが大きく変わってきているように思われるのです。

例えば、
「コロナをきっかけとして、自社グループの事業ポートフォリオの見直しを『聖域なく』『早急に』行いたい」、
「成長戦略、M&Aによる買収戦略の見直しを検討しているのでアドバイスしてほしい」、
「投資プロセスを再構築し、より適切なM&Aの推進体制を構築したい。また過去のM&Aに関する効果検証を行いたい」、
「新規事業としてデジタル領域の事業にも着手したい。スタートアップ企業への投資も進めたいので、手伝ってほしい」、
という類のご相談が増加しています。

もちろん、コロナ禍で経営危機に陥った企業からスポンサー探しを依頼されることもあるのですが、多くの企業からはむしろコロナ禍を契機として、M&Aをテコにこれまでの経営戦略を飛躍的に進化させたい、そうしなければ生き残っていけないという強い危機感と、この難局を前向きに乗り越えていこうという経営者の強い意志が感じられるご相談が増えている印象です。

法制度・金融環境からの後押し

M&Aは企業の経営活動の一つですので、経営者が「売却をする」「買収をする」という意思決定を行うことが前提となります。その重要な意思決定に影響を与える要素になるのが、自社の事業や属している市場環境のほかに、M&Aに関連する法制度やその時々の金融環境です。

金融環境としては、現在M&Aを行うには絶好のタイミングと言えます。現在は世界的な金余りとなっているため、企業のM&Aに資金が流れ込みやすい状況になっています。また近年、政府は企業のM&Aを促進するための法制度の整備を急ピッチで進めています。2020年3月に「中小M&Aガイドライン」(経済産業省)が公表されたほか、7月には「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~」(経済産業省)が公表されました。
また、成長戦略会議が12月に決定した「実行計画」では「中小企業の合併を通じた規模拡大等による生産性向上を進めるため、経営資源の集約化(M&A)を税制面でも支援することが重要」として、税務面からもM&Aを後押しする方針を打ち出しています。

M&Aの類型とトレンド

以下、現在顕著なM&Aの類型です。

①事業承継型のM&A
近年最も多く行われているM&Aの類型です。ニーズのボリュームが最も大きい類型であり、コロナ禍を契機に一層増加することが見込まれます。

②再生型のM&A
緊急融資などの政策的な経営支援によって経営が維持できている間に、少しでも有利な条件で会社を売却しようと、スポンサー探しに奔走する企業も少なくありません。

③事業再編型のM&A
特に大手企業においては自社の事業体質の一層の強化のため、グループ内の事業再編、ノンコア事業の売却などの事業再編型が活発に行われています。

④業界内再編型のM&A
多くの業界でトッププレイヤー同士の統合が行われています。コロナ禍によるマーケットの縮小・変化を背景に、生き残りへの危機感が高まっていることがうかがわれます。

⑤新規事業開発型のM&A
異業種企業の買収、スタートアップ企業への出資など、新規事業の開発を通しての成長・生き残り策も依然として活発です。いわゆる成熟産業に属する老舗企業が、デジタル関連の成長分野を取り込もうとする動きが顕著です。

こうした動向について、筆者は、コロナ禍でも何か特別な経営活動、M&Aが進行していうわけではないと考えます。むしろコロナ以前から、存在していた問題や先送りが許されていた問題が、コロナ禍を契機に噴出してきている印象を受けます。コロナ・ショックがいったん落ち着き、新常態が定着する2021年以降には、事業再構築に向けた前向きのM&Aが一層、増えてくると筆者は予想しています。

筆者紹介

中央大学法学部卒業後、2005年に山田ビジネスコンサルティング株式会社(現・山田コンサルティンググループ株式会社 )に入社。私的整理、法的整理等の事業再生案件に従事する。2010年にはM&A部門の立ち上げに参画、以来100件超のM&A案件(再生、事業承継、クロスボーダー等)を手掛けて、成功に導く。中堅・中小企業のM&Aに関する書籍の執筆や講演、セミナー講師など、多方面でも活躍。近年は山田コンサルのM&Aサービスの責任者として、サービスレベルの向上と幅広い展開に尽力する。

※本記事は、三井住友銀行が発行する「SMBCマネジメント+」で弊社コンサルタントが寄稿した記事と同内容の記事です。
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