海外ビジネス情報
更新日:2022/08/12 公開日:2019/09/27
テーマ: 03.海外ビジネス
新在留資格「特定技能」について
目次
昨今、日本に滞在する外国人が増加しており、皆様の周りでも以前より海外の方々を頻繁に見かけるようになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。例えば、コンビニやレストランなどで「グエン」さんや「ホアン」さんなどの名札を見かけたことはありませんか?どちらもベトナムでは有名な苗字、名前の一例ですが、グエンさんはベトナムで4割を占める一番多い苗字です。彼らは留学生として日本で学ぶ傍ら、アルバイトとして働いている場合が殆どです。彼らのような留学生は以前から日本に多く滞在していますが、日本企業で働くことを目的とした外国人も近年では増えています。
日本で増加している働く外国人は、「技能実習生」と呼ばれる「技能実習」制度を利用している場合が多く見受けられますが、今年から「特定技能外国人」と呼ばれる新たな在留資格である「特定技能」を持つ外国人の滞在が可能になりました。前者は、途上国からの人材が日本で技術を身に着け、帰国後出身国への技術移転を行うことで、経済発展に貢献することを目的とした制度です。そのため、企業等において、人手不足を補う目的で本制度を利用した外国人実習生の受入れは禁止されています。一方で、後者については、日本の中小・零細企業をはじめとした深刻化する人手不足を補う手段として、2019年4月より、受入れ可能となりました。
新たなこの制度は、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受入れていくことを目的としています。以下本制度の概要を記載します。
特定技能の種類
在留資格「特定技能」には、特定技能1号と特定技能2号の2種類あります。
① 特定技能1号
特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で14分野が対象
② 特定技能2号
特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格。
現時点では、特定技能1号の対象14分野のうち、2分野(建設、造船・舶用工業)のみが対象
1号と2号の各ポイントにおける相違点は以下の通りです。
特定技能外国人の受入れが可能な分野
特定技能外国人の受入れが可能な分野は、以下14分野が対象となっています。これら14分野は人手不足が深刻な産業で、2019年からの5年間での最大受入れ人数が分野ごとに定められており、14分野合計で最大34万5,150人の特定技能外国人の受入れが見込まれています。
受入機関と登録支援機関について
先述した技能実習制度には、監理団体があり、その傘下に実習実施企業(受入企業)があり、少し複雑な仕組みとなっていましたが、特定技能制度には監理団体はなく、受入機関(企業)が直接外国人労働者と契約するのみですので、技能実習制度と比較し、よりシンプルな関係者構成となっています。
■受入機関(特定技能所属機関)
特定技能外国人を雇用する企業・個人事業主のことを指し、外国人が日本での生活や勤務をスムーズに行うための支援を行うことが義務付けられています。受入機関となる際は、各種基準に適合し、義務を果たすことが求められます。(以下参照:出所 法務省)
【受入機関が外国人を受入れるための基準】
①外国人と結ぶ雇用契約が適切(例:報酬額が日本人と同等以上)
②機関自体が適切(例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)
③外国人を支援する体制あり(例:外国人が理解できる言語で支援できる)
④外国人を支援する計画が適切(例:生活オリエンテーション等を含む)
【受入機関の義務】
① 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行(例:報酬を適切に支払う)
② 外国人への支援を適切に実施(登録支援機関へ委託も可能)
③ 出入国在留管理庁への各種届出
(注)①~③を怠ると外国人を受入れられなくなるほか、出入国在留管理庁から指導、改善命令等を受けることがある。
「外国人と結ぶ雇用契約が適切」(※)であることについて、雇用契約が満たすべき基準は以下の通り定められています。
【特定技能雇用契約が満たすべき基準】
① 分野省令で定める技能を要する業務に従事させるものであること
② 所定労働時間が、同じ受入機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であること
③ 報酬額が日本人が従事する場合の額と同等以上であること
④ 外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、
差別的な取扱いをしていないこと
⑤ 一時帰国を希望した場合、休暇を取得させるものとしていること
⑥ 労働者派遣の対象とする場合は、派遣先や派遣期間が定められていること
⑦ 外国人が帰国旅費を負担できないときは、受入機関が負担するとともに契約終了後の出国が円滑になされるよう
必要な措置を講ずることとしていること
⑧ 受入機関が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずることとしていること
⑨ 分野に特有の基準に適合すること (※分野所管省庁の定める告示で規定)
支援計画の概要
受入機関が外国人を受入れるための支援計画に該当するものは以下10項目であり、各項目の実施内容と方法を記載する必要があります。
(受入機関は特定技能外国人に対して、彼らの活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするため、職業生活上、日常生活上、または社会生活上の支援に関する計画である「支援計画」を作成し、その計画に基づいて支援を行う義務があります。)
省令で定められた以下10項目の実施内容と方法を計画に記載します。
受入機関は、義務事項の一部として外国人の支援や支援計画の作成がありますが、委託が可能ですので、その場合、委託先である登録支援機関がその任務を請け負うことになります。
■登録支援機関
受入機関から「外国人支援義務」の委託を受け、特定技能外国人支援計画の業務を実施する者を登録支援機関と呼びます。受入機関は、登録支援機関に、特定技能外国人に対する支援義務の一部または全てを委託することができます。「登録支援機関」となるための基準、義務には以下のような項目があります。
【登録を受けるための基準】
① 機関自体が適切(例:5年以内に出入国・労働法令違反がないこと)
② 外国人を支援する体制あり(例:外国人が理解できる言語で支援可能なこと)
【登録支援機関の義務】
① 外国人への支援を適切に実施
② 出入国在留管理庁への各種届出
(注)①②を怠ると登録を取り消される可能性有。
2019年7月には、この在留資格「特定技能」に関し、警察庁、法務省、外務省及び厚生労働省とベトナム労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)との間で、悪質な仲介事業者の排除等を目的とする協力覚書が交換もなされており、ベトナムの優秀な人材の円滑かつ適正な送出し、受入れ促進がなされることが期待されています。
執筆:山田コンサルティンググループ株式会社 海外事業本部 ASEAN担当
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