Manual 【M&Aのケーススタディ】成功事例と失敗事例

【M&Aのケーススタディ】成功事例と失敗事例

企業がシェアを拡大し、売上・利益の増大を図るために海外ではダイナミックなM&Aが展開されています。
しかし、M&Aは成功するとは限りません。そこで、M&Aのケーススタディとして、国内外のM&Aについて、話題になった成功事例と失敗事例をご紹介します。
 

なお、この記事では、顧客数の拡大、事業の多角化、販路の拡大という成果を出せたことを「M&Aの成功」としています。
一方、「M&Aの失敗」とは、買収先企業が経営不振から脱却できずに、顧客数の拡大、事業の多角化、販路の拡大という目的を達成できなかった場合を示します。
その中には、買収後に期待していたある国の市場で、規制を受けることなどにより売上を伸ばせなかった例もあります。
 

pc
sp
 

◆海外のM&A成功事例

□AT&TがディレクTVを買収

2014年、米国通信大手のAT&Tが、米国衛星放送最大手のディレクTVを約485億ドルで買収し、米国や中南米の多くの契約者を獲得しました。
AT&Tは有料放送事業の成長が鈍化していたため、携帯端末やタブレットなどへの配信を強化することで補う狙いがあります。
また、ディレクTVが持つ豊富なコンテンツも展開できるようになります。さらに、重複する事業を簡素化することで、コスト削減の効果も期待されています。
 

□DellがEMCを買収

2015年、米パソコンメーカーのDellが、ストレージ機器開発企業のEMCを買収し、世界最大のプライベートIT企業グループDell Technologiesになりました。
傘下にはDell、Dell EMC(旧EMC)、Pivotal、RSA、SecureWorks、Virtustream、VMwareなどが含まれ、グローバルな従業員は14万人を超え、年間売上は約740億ドルになりました。
マイケル・デルCEO兼会長は「PC、サーバー、ストレージ、仮想化、そしてセキュリティでいずれも世界No.1の企業がひとつのグループに属した」と語っています。
 

□クラフト・フーズ・グループとHJハインツの合併

2015年、米国食品大手のクラフト・フーズ・グループと、トマトケチャップで有名なHJハインツが合併し、食品業界では北米3位、世界5位の規模になりました。
新会社はクラフト・ハインツとなり、合併により原材料の調達コストを削減し、北米市場が中心だったクラフトの商品がハインツの海外販路を活用して販売されるようになりました。
 

□チャーター・コミュニケーションズがタイム・ワーナー・ケーブルを買収

2015年、米ケーブルテレビ4位のチャーター・コミュニケーションズが、同2位のタイム・ワーナー・ケーブルを買収しました。
取引価格は負債込みで787億ドル(約9兆7,000億円)でした。チャーター・コミュニケーションズは6位のブライトハウス・ネットワークスも買収して、3社の合計顧客数を2,930万人にし、首位のコムキャストの2,700万人に迫りました。
この買収の背景には、ケーブルテレビユーザーがNetflixなどの動画配信サービスに流出しているという危機感があります。そこで、規模を拡大することで経費を圧縮し、価格競争力を強化する狙いがあります。
 

◆海外のM&A失敗事例

□ウォルマートによる西友との資本提携

2002年、米小売大手ウォルマートは、日本のスーパーマーケットチェーンの西友と資本提携を開始しました。しかし、西友は経営不振から脱却できず、2005年に子会社化されました。
さらに2007年には1,000億円を追加して完全子会社化されたため、最終的には投資総額は2,470億円を超えました。2002年の段階で完全子会社化していれば1,000億円で済んだといわれ、逐次投入の失敗例として記憶されました。
 

□テスコによるシートゥーネットワークの買収

2003年、英スーパー最王手のテスコが、日本の中堅スーパー「つるかめランド」を展開していたシートゥーネットワークを買収しましたが、約300億円を投じたものの業績が振るわず、日本進出から8年経った2011年に撤退しました。
最終的には流通大手のイオンが発行済み株式の50%をわずか1円で取得して傘下に収めました。
その際、テスコは日本法人の負債を請け負い、事業立て直しのために約50億円の追加投資も行った上で、全店舗の引き受けと従業員の雇用維持を条件にしています。
 

□マイクロソフトがノキアの携帯端末事業を買収

2014年、ソフトウェア開発・販売の米マイクロソフトが、フィンランドの開発ベンダーであるノキアの携帯端末事業を約72億ドルで買収しました。
しかし、スマートフォンの販売は低迷し、翌2015年には約76億ドルの減損損失をせざるをえなくなりました。
 

◆日本のM&A成功事例

M&Aによる事業拡大は、必ずしも成功するとは限りません。
それでも注目された成功事例は日本にもいくつかあります。そうした中からM&Aを成功させるヒントが見つかるかもしれません。
ここでは、その成功事例と失敗事例をいくつかご紹介します。
 

□JT(日本たばこ産業)のM&A

JT(日本たばこ産業)は、1999年に米RJRナビスコの海外たばこ事業(RJRI)を買収し、海外市場で従来の約10倍となるたばこ販売本数を叩き出すことに成功しています。
その理由は、リストラやコスト削減ではなく、積極的なブランディングを行い、パッケージを一新して、知名度を上げたことが功を奏したことにあります。
さらに2007年には、英たばこ大手のギャラハー(Gallaher)を買収し、給与・賞与体系を統一することで従業員のモチベーション維持に努めています。
 

□楽天のM&A

IT企業の楽天は、上場後すぐに積極的なM&Aを行って事業を拡大させています。
特に2003年に宿泊予約サイトを運営する競合だったマイトリップ・ネットを323億円で買収し、自社サイト「楽天トラベル」の強化を図り、国内旅行ではJTBグループに次ぐ2位の取引高に成長させています。
同じく2003年には、インターネット証券のDLJディレクトSFG証券を約300億円で買収、子会社化して「楽天証券」としました。
 

また、2004年には個人向けカードローン会社のあおぞらカードを74億円で買収して「楽天カード」にしています。
そして、2008年にはイーバンク銀行を資本・業務提携した後に連結子会社化し、2010年に「楽天銀行」と商号変更しました。
2013年にはファッション通販サイト「Stylife」を運営するスタイライフをTOBで買収しています。
 

海外でも積極的なM&Aを行っており、2005年に米リンクシェアを4億2,500万ドルで買収。2014年はアメリカ最大級の会員制オンライン・キャッシュバック・サイトを運営するイーベイツ(Ebates)も完全子会社化。
2015年には電子図書館プラットフォーム世界最大手の米OverDriveも買収しています。
 

□ソフトバンクのM&A

情報・通信業のソフトバンクも積極的なM&Aを行い、事業を拡大させています。あまりにも事例が多いため、ここではその一部だけをご紹介します。
2006年、携帯電話事業の英ボーダフォンを約1兆7,500億円で買収し、2008年には直収型固定電話サービスの日本テレコムインボイスを255億円で買収。2012年には電気通信事業のイー・アクセスを株式交換により完全子会社化しました。
2013年にはオンラインゲームのガンホー・オンライン・エンターテイメントを約250億円で子会社化し、同年に米携帯電話3位のスプリントを1兆8,000億円で買収。
さらに2016年には、フィンランドのスマートフォン向けゲーム会社スーパーセルを1,514億円で買収しています。
 

◆日本のM&A失敗事例

□丸紅による米ガビロンの買収

2012年、大手総合商社の丸紅は、米穀物大手のガビロンを約2,880億円で買収しました。
しかし、中国向け大豆の輸出で首位だった丸紅がガビロンを買収したことで、中国での寡占化が警戒され、両社が一体となって中国でのビジネスを行うことを禁じるきびしい義務が課せられてしまい、不振となりました。
その結果、期待していた利益が達成できず、ガビロンののれん代(ブランド価値)500億円の減損損失を出しました。これは、カントリーリスクについて考えさせられる失敗事例として記憶されています。
 

□パナソニックによる三洋電機の買収

2009年、家電世界最大手のパナソニックは、リチウムイオン電池世界シェア首位の三洋電機を4,000億円で買収(連結子会社化)しました。
その後、追加投資を行って2011年に完全子会社化しており、総投資額は8,100億円以上といわれています。
しかし、リチウム電池事業の読みが外れるなどして、2013年3月期個別決算で6,000億円以上の評価損を計上しています。
 

□富士通によるICLの買収

1990年、総合エレクトロニクスメーカーの富士通が英国の国策IT企業であったICLを1,890億円で買収し、完全子会社化しました。
その結果、電算機で世界2位となり、その後も欧州の拠点としてドイツの企業を買収するなどして、累計投資額は3,500億円となりました。
しかし、業績は悪化し、2007年3月期個別決算で2,900億円の評価損を計上しました。
 

□古河電工によるルーセント・テクノロジーの買収

2001年、非鉄金属メーカーの古河電工(古河電気工業株式会社)が、米光ファイバー事業のルーセント・テクノロジーを22.27億ドル(当時のレートで2,800億円)で買収し、世界の光ファイバー業界で世界2位となりました。
しかし、ピーク時の5分の1にまで売上が減少し、54年ぶりに無配に転落。
2004年3月期には1,000億円の評価損を計上しました。
 

◆増えるスモールM&A

M&Aの成約件数を正確に把握することは困難です。
それは、買い手である大手企業が、IRなどでみずから公開する以外に案件が把握できないためです。
特に買い手と売り手がともに中小零細企業や個人投資家の場合、公表されることはまれです。
そのため、失敗事例はもとより、成功事例を知ることもそう簡単ではありません。
 

これまでにご紹介した事例は、ニュースにもなっているような大手企業の事例ですが、中小企業などでも実はM&Aに成功している事例はたくさんあります。
特に、事業承継の後継者不在問題を解決する手法としてのM&Aや、ベンチャー企業のイグジット(EXIT:出口戦略)としてのM&Aは増えていると考えられています。それらのスモールM&Aについて見ていきましょう。
 

□事業承継としてのM&A

非上場企業において、事業承継の選択肢は以下の5つになります。
・上場(IPO
・親族への事業承継
・従業員への事業承継
・廃業(清算など)
・M&Aによる第三者への譲渡
 

どれも簡単な選択ではない、ということを念頭に置く必要があります。
 

まず、上場は経営状態や内部管理上で、きびしい基準をクリアしなければなりません。
しかし、多くの非上場企業は、そもそもそれらの基準を満たしていないことから上場していないという現実があります。
 

それでは親族、特に子供への事業承継にはどのような課題があるでしょうか。
そもそも子供がいない、あるいはいたとしても事業を承継する意思がないということもありえます。
 

特に、ほかにやりたい仕事があったり、すでに大企業で出世したりしている場合は、あえて親の会社を継ぐ動機がありません。
また、能力的に継がせられないという場合もあります。一方、従業員に後継者を見いだす場合も、その後継者が会社の株式を譲り受ける資金を用意できない、金融機関に借入のための個人保証を入れられない、そしてそもそも経営者にふさわしい人材がいないという問題もあります。
 

これらの結果、事業承継が困難になれば、必然的に廃業という選択肢が浮上します。
しかし、廃業をするにも、単に事業を停止すれば良いという簡単なことではありません。廃業することは、取引先が仕事を失い、顧客は商品やサービスの提供を受けられなくなり、従業員は失業してしまうという社会的な損失が生じます。
また、これまで培ってきた技術やノウハウも途絶えてしまいます。
さらに、資産を売却して借入金を返済しようとしても、資産の売却がうまくいかず、売却できたとしても見込んでいた金額にはならずに債務を返済できないリスクもあります。
 

そこで、M&Aを選択する経営者が増えているのです。その理由は、M&Aにより会社を譲渡することで、以下のメリットがあるためです。
・後継者問題を解決できる
・事業意欲が旺盛な会社と相互発展することが期待できる
・事業が承継されることで、従業員の雇用の維持が期待できる
・取引先や顧客との関係が維持できる
・技術やノウハウが承継できる
・オーナー経営者は創業者利益を得ることができ、個人の担保や個人保証からも解放される
 

□ベンチャーのイグジット(EXIT)としてのM&A

ベンチャー企業の創業者は、イグジット(EXIT)としてIPO(新規上場)を目指しますが、IPOは非常に狭き門です。
それは、国内の企業数約410万社(総務省統計局「日本の統計2018」より)のうち、上場企業は3,614社(日本取引所グループ調べ、2018年4月20日更新)と、わずか0.09%しかないことからわかります。
 

例えば、2017年に上場を果たした企業数は93社でした(日本取引所グループ調べ)。
一方、2017年のM&A件数は約3,050件、そのうちベンチャー企業へのM&Aは880件でした(2018年2月マールオンライン調べ)。
これらの数字からも、ベンチャー企業のエグジットは、IPOよりもM&Aによるバイアウトのほうが現実的であることがわかります。
 

ベンチャー企業が大企業に自社事業を売却する理由には、大規模な投資が可能になる、従業員の安心感が得られる、管理業務のノウハウが得られる等があります。
大企業に買収されるほどの価値がある企業を創業した起業家には、それにふさわしい報酬を得ようとするため、イグジット(EXIT)としてM&Aを目指す方も多いのです。

 
マンガでわかるM&Aの落とし穴10選
 
⇒事業承継税制、持株会社(ホールディングス)化、M&Aのメリット・デメリット
 
⇒M&Aとは?企業買収の方法と必須となる基礎知識
 
⇒会社の買収とは | 企業買収の意味と仕組み
 

後悔しないM&A 陥りやすいトラブル事例と、やっておくべき事前の対策

無料 資料ダウンロード M&Aのノウハウが凝縮!! マンガでわかるM&Aの落とし穴 10選

メールマガジン登録

よくわかるM&A

最新M&Aニュース

電話

ご相談・お問い合わせはお気軽に

03-6212-2521

03-6212-2521

受付時間 平日9:00~18:00 (土日祝除く)