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M&Aの基礎知識 5. 中小企業のM&Aにおける法律手続きの注意点・留意点

M&Aにおいては、売手と買手で締結される契約(基本合意、最終契約)だけでなく、情報開示(法定開示、適時開示)、労働契約、独占禁止法など、各種の法規制を押さえる必要があります。これがM&Aは「法律のるつぼ」ともいわれる所以です。 売手企業と買手企業との契約にあたっては、多くの場合、秘密保持契約書、基本合意書、最終契約書の3つが作成されます。 秘密保持契約はM&Aの当事者が、相互に情報開示を行う前提として最初に締結する契約です。基本合意書の作成は必須のものではなく、M&Aの基本的な条件が法的拘束力を有しない形で規定されるものです。最終契約書の内容は、M&Aの手法によって異なりますが、株式譲渡および事業譲渡の場合は、どのような事項を取り決めるかについて会社法上の定めはないため、契約の内容は当事者間の交渉に委ねられます。

5-2. M&A取引に係る情報開示制度(1)~法定開示~

 

金融商品取引法における法定開示①臨時報告書の提出

金融商品取引法上、有価証券報告書の提出義務がある会社は、①当該会社が発行者である有価証券の募集または売出しが外国においておこなわれるとき、②その他公益または投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める場合に該当することとなったときは、臨時報告書を、遅滞なく内閣総理大臣に提出しなければならない(金融商品取引法24条の5第4項、企業内容等の開示に関する内閣府令19条1項及び2項)とされる。
実際の提出先は、有価証券報告書の提出先と同じ財務局である。
臨時報告書の提出事由の内、M&A取引に関わるものとしては、「親会社・特定子会社の異動」に関わるもの、「子会社取得」に関わるものなどが挙げられる。

(臨時報告書の提出事由) 親会社・特定子会社の異動

提出会社の親会社の異動もしくは提出会社の特定子会社の異動が、当該提出会社もしくは連結子会社の業務執行を決定する機関(取締役会等)により決定された場合、または提出会社の親会社の異動もしくは提出会社の特定子会社の異動があった場合、次の事項を記載した臨時報告書の提出が必要となる(企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項(3))。

イ 当該異動に係る親会社又は特定子会社の名称、住所、代表者の氏名、資本金又は出資の額及び事業の内容
ロ 当該異動に係る会社が親会社である場合には、当該異動の前後における当該提出会社の親会社の所有に係る当該提出会社の議決権の数及び当該提出会社の総株主等の議決権に対する割合
ハ 当該異動に係る会社が特定子会社である場合には、当該異動の前後における当該提出会社の所有に係る当該特定子会社の議決権の数及び当該特定子会社の総株主等の議決権に対する割合
ニ 当該異動の理由及びその年月日

なお、特定子会社とは、次の各号に掲げる特定関係のいずれかに該当する子会社をいう。
□当該提出会社の最近事業年度に対応する期間において、当該提出会社に対する売上高の総額または仕入高の総額が、当該提出会社の仕入高の総額または売上高の総額の10%以上である場合
□当該提出会社の最近事業年度の末日において純資産額が当該提出会社の純資産額の30%以上に相当する場合(当該提出会社の負債の総額が資産の総額以上である場合を除く。)
□資本金の額または出資の額が当該提出会社の資本金の額の10%以上に相当する場合

(臨時報告書の提出事由) 子会社取得の決定

提出会社または連結子会社の業務執行を決定する機関(取締役会等)が次に該当する子会社取得を決定した場合、下記の事項を記載した臨時報告書の提出が必要となる。

●提出会社が子会社取得を決定し、子会社取得に係る対価の額の合計額を合算した額が当該提出会社の最近事業年度の末日における純資産額の15%以上に相当する額であるとき(企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項(8)の2)

□子会社取得に係る子会社及び近接取得に係る子会社について、それぞれ次に掲げる事項
(1)商号、本店の所在地、代表者の氏名、資本金又は出資の額、純資産の額、総資産の額及び事業の内容
(2)最近三年間に終了した各事業年度の売上高、営業利益、経常利益及び純利益
(3)提出会社との間の資本関係、人的関係及び取引関係
□取得対象子会社に関する子会社取得の目的
□取得対象子会社に関する子会社取得の対価の額

●連結子会社が子会社取得を決定し、子会社取得に係る対価の額の合計額を合算した額が当該連結会社の最近連結会計年度の末日における連結純資産額の15%以上に相当する額であるとき(企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項(16)の2)

□子会社取得(近接取得を除く。)に係る子会社及び近接取得に係る子会社(取得対象子会社)について、それぞれ次に掲げる事項
(1) 取得対象子会社に関する子会社取得を提出会社が決定した場合にはその旨、連結子会社が決定した場合にはその旨並びに当該連結子会社の名称、住所及び代表者の氏名
(2) 商号、本店の所在地、代表者の氏名、資本金又は出資の額、純資産の額、総資産の額及び事業の内容
(3) 最近三年間に終了した各事業年度の売上高、営業利益、経常利益及び純利益
(4) 提出会社及び当該連結子会社との間の資本関係、人的関係及び取引関係
□取得対象子会社に関する子会社取得の目的
□取得対象子会社に関する子会社取得の対価の額

⇒後継者問題の解決と会社の成長のため同業者へ譲渡したM&A事例はこちら。

金融商品取引法における法定開示②大量保有報告書の提出

上場会社等に係るM&Aを実施するに際して上場会社等の株式等を取得する場合、株価に影響を及ぼす可能性がある。
そのため、金融商品取引法においては、発行会社の5%超の株券等を保有する株主(大量保有者)は、大量保有者となった日から5営業日以内に大量保有報告書を提出しなければならない、としている。5%超が基準とされていることから、5%ルールと呼ばれることもある。
また、提出後も、株券等保有割合が1%以上増減した場合など、その他重要な事項の変更が生じた場合には、5営業日以内に変更報告書を提出しなければならない。

保有株数に応じた規制をまとめると、下記のようになる。
・5%超⇒大量保有報告書の提出、公開買付制度の適用
・10%以上⇒臨時報告書の提出(主要株主の異動)
・1/3超⇒公開買付制度の適用
・過半数⇒親会社等状況報告書の提出

 
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