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当社事例

2020/12/22

テーマ: 02.M&A 05.医療・介護

人口減少地域における医療法人と社会福祉法人のグループ内組織再編

医療法人A会 社会福祉法人B会
事業内容:医療・介護 事業内容:介護・保育・障害者福祉
エリア:地方都市 エリア:地方都市
売上規模:数億円 売上規模:数億円

当社の関わり方

案件概要

本件は人口数万人程度の人口減少が進む地方都市で医療・介護を営む医療法人グループにおけるグループ内組織再編事例である。
人口構造の変化や医師をはじめとする医療従事者の維持・確保の見通しの厳しさから、医療サービスからビジネスモデルを転換する必要性があった。

同グループには社会福祉法人があり、順調な経営状況を維持していた。しかし、人材確保への対応や、医療対応の強化に向けた規模拡大、事業多角化が中期的な課題であった。
同グループはマネジメントレベルではグループとしての認識があるが、現場職員レベルでは希薄であり、グループとして運営することで得られるシナジー効果が逸失されている懸念があった。

医療法人が有する事業の大部分を社会福祉法人に譲渡し、法人規模の拡大を図るというケースはまだほとんど例がなく、本件が所在する都道府県でも初めてのケースであった。
福祉医療機構においては、医療法人事業を社会福祉法人に統合する目的での資金調達の検討は例がないということであった。
なお、社会福祉法人の経営高度化、大規模化は、社会福祉法人制度改革においてもその必要性が指摘されており、本件スキームは社会課題を解決するための政策手段の方向性とも合致している先駆的な事例である。

社会福祉法人は制度改革論議において、経営の安定性確保には規模拡大の必要性が指摘されており、本事例は制度改革の一つのモデルケースとなりえると考えられる。
本ケースは医療法人制度、社会福祉法人制度、行政手続き、組織再編手続き等幅広い知見を必要とする。
加えて、所轄庁の考え方や理解を得るための説明の手法などにも工夫を要した。さらには医療・介護事業における理解があって初めて統合の意義についても説明することができる。
一般的な株式会社の組織再編手法だけでなく、各種の法人制度や行政手続きや事業面等の幅広い知見・ノウハウがなければ実行までたどり着くことは難しいと考えられる。

背景・売り手オーナー様の課題

  • ● 医療法人は地域の人口構造の変化や医療従事者の維持・確保の厳しさから、事業構造の転換が必要であった
  • ● グループ内の現場レベルの連携が希薄でシナジー効果を逸失している懸念があった
  • ● 中長期的な人口減少を見据え、グループ全体のシェア拡大が必要であった

M&Aの進め方、成約のポイント

  • ● 医療法人が有する事業の大部分を社会福祉法人に譲渡する事例が本件が所在する都道府県では初めてであり、加えて社会福祉法人は公益性の高い法人格であるため、所轄庁としては当該スキームの必要性と法人経営に与える影響について、慎重な検討を重ねた。特に事業価値の適正性について複数回にわたり丁寧に説明することで所轄庁の理解を得た。
  • ● 再生案件であった医療法人から正常先である社会福祉法人に貸付先が変わった点は銀行の視点からみてもメリットがあった。
  • ● 職員や患者、利用者に対しては、譲渡前後で条件等についてなんら変わりはないこと、運営主体がグループ内の別法人に変わるのみであり、被る影響はほぼないこと、を説明し理解を得たため混乱は起きなかった。

成果・効果

サービスの充実

  • 事業を多角化することにより、法人内での患者・利用者に対して施設間連携を通じて最適なサービス提供を図ることが期待される。

職員負担の軽減

  • 患者・利用者の状態に合わせた施設で受け入れることができるため、職員としては過度な業務負担の軽減に繋がる(職員配置が手薄な施設で重度要介護者を受け入れることは肉体的・精神的ストレスに繋がる懸念)ため職員の定着に寄与する可能性があると考えられる。