海外ビジネス情報
更新日:2022/08/12 公開日:2019/04/10
テーマ: 03.海外ビジネス
タイにおける自動車の割賦販売およびリース・レンタルの状況
目次
割賦販売市場の概要と実績
タイにおいて最も一般的な自動車の購入方法は割賦である。タイ金融大手のティスコ・フィナンシャル・グループによると、タイの新車購入に占めるローンによる購入の割合は2017年には約80%だったが、低金利を追い風に2018年末までには85%に増えると予想される。
タイの金融機関の自動車販売融資の残高は2018年8月時点で前年比12.5%増の1兆370億バーツだった。この伸びは2016年第4四半期以降回復傾向を示している国内自動車販売の増加がけん引した。
タイにおいて最も一般的な自動車の購入方法は割賦である。タイ金融大手のティスコ・フィナンシャル・グループによると、タイの新車購入に占めるローンによる購入の割合は2017年には約80%だったが、低金利を追い風に2018年末までには85%に増えると予想される。
タイの金融機関の自動車販売融資の残高は2018年8月時点で前年比12.5%増の1兆370億バーツだった。この伸びは2016年第4四半期以降回復傾向を示している国内自動車販売の増加がけん引した。
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債権の質については、2018年8月時点で、自動車販売融資の残高全体に占める不良債権(NPL)*2と
要注意債権(SML)*3の割合はいずれも前年同期比で減少しており、市場の債権品質が改善していることを示している。とはいえ前四半期比では、不良債権と要注意債権の割合は共に2018年初め以降継続して拡大しており、これは金融状況の不安定さを示している。
*2不良債権 (NPL):返済期限が90日以上過ぎているローン
*3要注意債権(SML):返済期限が30-89日過ぎているローン
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賦販売市場の主なプレーヤー
自動車販売融資の提供者は、銀行、ノンバンク*4、販売金融会社*5などのタイプに分類できる。タイ割賦販売業協会(THPA)によると、新車・中古車両方の割賦販売市場において、2018年6月末時点で約69%と最大の割合を占めているのは金融機関およびその関連会社である。これに販売金融会社、ノンバンクが続く。
*4ノンバンク:自動車ローンも提供しているリース会社
*5販売金融会社:購入者に自動車ローンを提供することのみを目的とする特定のディーラーまたは自動車会社の金融子会社
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自動車販売の成長率が低迷していた期間中、収益維持と新規顧客獲得を目的として、金融機関は2つの新しい金融商品を導入した。1つは「バルーンローン」という金融商品で、借り手が融資契約期間中は低めの分割金額の支払を、期間の最後にはまとまった金額、つまり「バルーン支払」を行うというものである。こうした自動車販売融資は高級車購入に利用されることが多い。もう1つはフロアプラン融資という金融商品である。これは過去2年の間に生まれた「自動車在庫1台毎に紐付く融資プラン(当該車が売れたら紐付融資を返済)」で、これを利用することで自動車ディーラーは高級車の在庫を持つことが可能になる。
下取り(自動車購入のためのリファイナンス)も新たな方法で、借り手が自分の自動車を担保として融資を受けるものである。銀行から融資が受けられない買い手や他の方法よりも早く融資を受けたい買い手をターゲットに利用者数が増え、過去2年間で2桁成長を遂げている。2018年11月、タイ銀行(BOT)は消費者に対する公平性を期すためにリファイナンス事業への規制を強化した。
リース・レンタル市場の概要と実績
ASAPのブランド名で事業を展開するタイレンタカー大手のSynergetic Auto Performance Pcl.によると、2017年のタイの自動車レンタル市場規模は約425億バーツ(合計約18万台)で、2006年から2017年にかけて年平均成長率(CAGR)15%で堅調に成長した。自動車レンタル市場シェアの70%は法人セクターがけん引するリース・長期レンタルが占め、個人による短期レンタルが残りを占める。
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カシコン・リサーチ・センター(KRC)によると、自動車のリース・レンタル市場は、旅行者による短期のレンタルに加えて活況に沸く物流業界にけん引され、今後も成長し、2018年末までに同市場規模は450~459億バーツに達すると予想される。
結論および見通し
タイ国内自動車(新車・中古車とも)の販売動向に連動して、2018年のタイ自動車販売融資市場は前年比で拡大しており、2019年も引き続き拡大することが予想される。ただし、2019年の成長ペースは前年より鈍化すると予想される。家計負債が増加していることに加えて金利上昇も予想されており、これらが金融機関による融資審査基準の厳格化をもたらす可能性があるためである。
一方、今後も融資提供者間の競争は激しいことが予想されており、顧客満足度向上のためにマーケティング戦略全体の一部としてデジタル技術・プラットフォームが組み込まれるようになっている。現在、多数の市場プレーヤーが顧客の獲得および顧客ベースの拡大を目指して、下取り(自動車購入のためのリファイナンス)や自動車登録ローンにもサービスを拡大しつつある。
リース・レンタル市場は、短期・長期ともに、2019年もプラス成長するものと見込まれる。短期市場の要因としては、旅行業界の急成長および移動のための画期的なサービス(カーシェアリングなど)の出現があげられる。長期市場では、リース・レンタルサービスによってコスト管理や利便性が提供できる顧客の企業セクター(物流、e-コマースセクターなど)が成長の原動力になるだろう。
タイのリース・レンタル市場は、競争が激しいものの、依然として自動車販売融資市場よりも細分化が進んでおり、そのために既存・新規両方のプレーヤーに、より多くの市場機会を提供していると考えられる。
執筆:YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
YC Capital Co., Ltd.
(山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)
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