基礎知識
更新日:2020/08/26
テーマ: 01.事業承継
3-1. 社長の相続で注意したい3つの相続財産
3. 社長が取り組む相続対策
社長に相続が発生した場合、相続財産は自社株式だけではなく、会社への貸付金や、事業にかかわる不動産なども該当します。可能な限り正確に現状を把握し、相続対策は「税金」「遺産分割」「納税資金」の視点を持って実行の妥当性を確認しましょう。 相続税を少なくしようとして高額な不動産を買い込んだとしても、それが遺産分割や納税資金という視点に立った時、有効に働かないこともあります。同様に、自社株式の承継などもかかわっている相続の場合、遺産分割と納税は大きな課題です。 後継者である相続人が相続税評価額の大きな自社株式を相続すると、相続財産全体に占める各人が取得する相続財産の割合がどうしても偏ります。後継者である子ども一人が多額の財産を相続してしまえば、ほかの相続人たちが納得できず、争いに発展することもあるでしょう。一方で、換金できない自社株式を相続した後継者は、納税に苦しむことになります。 対策としては、生命保険契約や死亡退職金の活用が考えられます。「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、あらかじめ指定された後継者が固有の財産として現金を受け取ることができるため、「税金」「遺産分割」「納税資金」のどの視点からでも有効な手法です。また、遺留分の問題については「民法の遺留分に関する特例」が整備されているので、選択肢の一つとして内容を把握しておくべきでしょう。
3-2. 相続税はどのようにして計算されるのか?
3-1. 社長の相続で注意したい3つの相続財産
個人と会社の財産が混在しているオーナー経営者の相続対策
オーナー経営者の場合、個人と会社の財産が混在しているケースが少なくないため、相続対策を考えるには、まず、どのような財産がどれだけあるかを把握する必要がある。
特にオーナー経営者の場合、相続財産の量も金額も大きくなり、中には換金する事が難しい相続財産もあるため、生前から相続財産を整理してリストアップする作業が重要である。
<相続対策のポイント①>みなし相続財産に注意
相続財産とは、現金は勿論のこと、上場株式、ゴルフ会員権、自動車、高価な美術品なども相続財産とみなされる。
生命保険の死亡保険金などは受取人固有の財産であるが、非課税枠があるとはいえ「みなし相続財産」として相続財産の一部として認識する。
<相続対策のポイント②>不動産の権利関係を確認
土地や建物といった不動産のリストアップは特に重要である。
資産の中でも、とりわけ不動産は権利関係が複雑になっている可能性が高い。
第三者へ貸している場合は、契約書などで条件が明確になっていると思われるが、経営者名義の土地や建物を自社で使用している場合、契約が曖昧になっているケースは多い。
経営者自身が所有しているもの、経営者と親族が共有しているものなど、すべてについて現在の所有者は誰なのか、賃借人とはどのような契約になっているかを確認しなければならない。
会社の借入金の担保になっていないかなども含めて、正確なことを知るためには、登記簿謄本を確認することも必要である。
<相続対策のポイント③>問題になりやすい会社への貸付金
相続財産を洗い出す時に問題になりやすいのが、オーナー経営者から会社に対する貸付金(会社にとっては役員借入金)である。
中小企業の場合、業績が悪化して資金繰りが逼迫すると、経営者から借り入れで調達することがある。
いわゆる〝ある時払いの催促なし″で借りていることが多く、資金繰りが芳しくないがためにそのまま滞留している会社はよく見受けられる。
オーナー経営者自身も、それを「財産」と認識していないことが多いのだが、相続が発生してしまえば、これも相続財産に含めて相続税額を計算しなければならない。
しかし、会社の実情として換金が難しいケースが多いため、これを引き継がざるを得なくなった相続人は納税に苦しむことになる。
対策としては、役員報酬を減額するなどして浮いたキャッシュを用いて徐々に返済を進める方法、債権放棄する方法、資本に振り替える方法、貸付金を贈与する方法などが考えられるが、それぞれ税務上の論点を考慮する必要があるため、慎重に実行に移さなければならない。
誰に、どの財産を相続するか検討する
財産リストが作成できたら、誰に、どの財産を残すかを考える。事業承継を含む相続の場合は、後継者である子どもに法定相続分以上の資産を残すことになる場合が多いので、後継者でない子どものへの配慮も忘れないようにしておきたい。
このように、早めに相続財産リストを作成して現状を正しく把握することで、相続をスムーズに運ぶことができる。
3-2. 相続税はどのようにして計算されるのか?