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更新日:2025/02/18

テーマ: 02.M&A

M&Aに関連する資格まとめ – 種類や難易度、費用などを徹底比較!

M&Aの11資格をまとめ!種類や難易度、費用などを網羅比較!

M&Aに関する資格には有名な国家資格だけでなく、民間団体が認定する民間資格もあります。
それぞれの資格でカバーする知識範囲や、難易度が大きく違います。
これらを理解していると、アドバイザー選定に役立つほか、M&Aアドバイザーとして活躍したい方にとっても有用でしょう。

本記事ではそれぞれの資格の概要と難易度、受験料の他、アドバイザーを選ぶ際に注意したい点をまとめました。
M&Aを検討している経営層やM&Aアドバイザーを志す方は特に一読してみてください。

目次

M&A資格の必要性は主に2つ

M&Aは資格保有者による独占業務ではありません。
したがって、資格がなければM&A業務に従事できない、ということはありません。
もちろんアドバイザーに依頼せずM&Aを実行することも可能ですが、必要となる専門知識の幅が広く、かつ高度な知識が必要となるため、アドバイザーに依頼することが一般的です。
アドバイザーがM&Aに必要な知識を持っている証明として資格は有用でしょう。

①M&A実務に必要な知識が得られる

M&Aはその性質上、アドバイザーとして必要な知識が多岐にわたります。
具体的には企業の経営戦略や財務諸表の読み方、業界知識、関連法令や税金の知識、などです。
これらの知識は関連書籍や経験によって身に着けることができますが、資格取得を兼ねることで効率的に勉強できることが期待できます。

一部の民間資格にはM&Aのプロとして活躍する方の講義を受けることができるものもあり、より実務的な知識・スキルを習得できるでしょう。

②顧客から見える信頼度が増す

M&Aの当事者がアドバイザーを選ぶ際、上場企業や実績の多い企業などを選ぶのと同様に、アドバイザーと接触する際には「この人に任せて大丈夫か」を判断しているでしょう。
大事な会社な今後を決める大事な場面であるM&Aでは、当事者としてはトラブルを避け、スムーズにM&Aを実行したいと思うことは自然です。
このような心理のときにアドバイザーが資格保有者かどうかというのは、アドバイザーの信頼度に関わり、判断材料となることでしょう。

M&Aに関連するおすすめの民間資格4つを紹介

M&Aに関連する資格は大きく民間資格と国家資格に分けられますが、
民間資格はM&Aに特化したものが多く、その知識だけでなく実務面でも重要なスキルを修得できるものが多いです。
一般的にはあまり知られていない資格が多いですが、これらの資格を知っていることでもアドバイザー選定に役立ちます。

資格名

試験内容

費用目安

M&Aスペシャリスト

選択問題+記述問題

講座受講料:77,000円(消費税込み)
試験料:11,000円(消費税込み)

M&Aエキスパート

試験のみ

試験料:7,700円

JMAA認定M&Aアドバイザー

講座受講+審査

受講料198,000円
入会金33,000円
月会費132,000円

事業承継士

選択問題+記述問題

講座:300,000円
試験:9,000円
入会金:10,000円

M&Aスペシャリスト資格

概要と試験内容

日本経営管理協会が運営・認定する資格です。
M&Aの知識に加えて、実務能力があることがアピールできる資格です。
実務能力を重視しており、講師の中にはM%Aの第一線で活躍する方がいます。

受験資格はなく、検定試験は資格支援講座後に年間2回以上実施されます。
選択問題、論述問題の問題形式で構成され、それぞれ合格基準の60%以上で合格となります。

難易度

支援講座がありますが、M&Aの実務に必要な知識は多岐にわたるため、難易度は低くないでしょう。
取得していれば、M&Aの実務スキルを十分にもっていることを証明できる資格ともいえます。

受験料

支援講座受講料:77,000円(消費税込み)
検定試験料:11,000円(消費税込み)

M&Aエキスパート認定資格

概要と試験内容

日本M&Aセンターと金融財団事情研究会が共同で企画・運営・認定しています。
受験資格は特になく、M&Aエキスパート認定資格の上位資格として事業承継シニアエキスパート、M&Aシニアエキスパートがあります。

難易度

上位資格がある分、M&Aエキスパートは基礎的な内容となっており、比較的取得しやすい資格といえます。

受験料

受験に必要な講座などなく、受験料は7,700円です。

JMAA認定M&Aアドバイザー

概要と試験内容

一般社団法人日本M&Aアドバイザー協会が運営・認定しています。
試験に合格する必要はなく、講座の受講とJMAAの審査に合格することで認定されます。
特徴として、年2回ほど会員の集まりがあるため、人脈をつくりやすいことが挙げられます。

難易度

試験形式ではないもののJMAAの認定が必要で、審査基準は公開されていません。
受験資格もなく講座受講形式なため、比較的取得しやすい資格といえるでしょう。

受験料

受講料198,000円
入会金33,000円
月会費132,000円(年間一括払い)

事業承継士

概要と試験内容

一般社団法人事業承継協会が運営・認定しています。
事業承継士はM&Aの中でも事業承継に特化しており、必要な知識などを修得できます。

特徴として、事業承継士の資格を持っていると、事業承継センター株式会社から優先的に事業承継案件を紹介してもらえることが挙げられます。
事業承継センターは本資格の資格取得講座を開催している企業です。

試験内容は選択問題と記述問題の両方がある形式です。
受験するためには下記の資格のうちいずれかが必要となります。

・土地家屋調査士
・一級建築士
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・中小企業診断士
・ファイナンシャル・プランニング技能士
・税理士
・公認会計士
・行政書士
・司法書士
・弁護士
・社会保険労務士

難易度

受験資格に難易度の高い資格が多く、受験するためのハードルがそもそも高いです。
資格講座の受講後行われる試験では60点以上獲得すると合格となりますので、試験自体の難易度はそれほど高くないでしょう。

受験料

事業承継士資格取得講座:300,000円
認定試験:9,000円
入会金:10,000円

M&Aに関連するおすすめの国家資格7つ

これまでは民間資格を紹介しましたが、同様に国家資格にもM&Aの場面で役立つものがあります。
ここではM&Aアドバイザーが持っていることが多い国家資格を紹介します。
M&Aに限らず幅広い知識が必要な資格が多く、一般的にも有名な資格ばかりです。
その分取得難易度が高く、アドバイザーが持っていると信頼できる資格ですので、把握しておきましょう。

公認会計士

概要と試験内容

公認会計士はデューデリジェンスや株式評価、統合計画の策定、など多くの場面で専門知識を生かすことができます。
しかしながら有名な難関国家資格ですので、資格取得は大変難しく、取得するために相当な時間を費やす必要があります。
そのため、公認会計士のM&Aアドバイザーは顧客から見て信用度が高く感じられるでしょう。

公認会計士の試験は短答式試験と論文式試験の2段階で行われます。
短答式試験の科目は財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目で、
論文式試験は会計学、監査論、企業法、租税法及び選択科目(経営学、経済学、民法、統計学から1科目)です。

難易度

公認会計士は数ある国家資格の中でも最も難易度の高い資格に一つです。
上述した通り短答式試験と論文式試験の両方で試験範囲が広く、試験では計算問題や論述問題が出題されます。

受験料

19,500円

税理士

概要と試験内容

M&Aには税金に関連する論点が多く、そのため税のスペシャリストである税理士の知識・スキルを活かせる場面が多いです。
税金に関するアドバイスや代行は税理士の独占業務であるため、資格取得者しか従事することができません。
また、税理士は会計分野の知識も要するため、公認会計士同様にデューデリジェンスや株式価値評価などでも知識を活用できます。

税理士資格を取得するためには、必修科目(簿記論、財務諸表論)、選択必修科目(法人税又は所得税)及び選択科目(相続税、消費税など)全11科目の中から5科目の合格が必要です。

難易度

税理士は国家資格の中でもかなり難しい部類です。
試験範囲も広いため学習に時間が必要で、1年以上の時間をかけて合格科目を増やしていく方が多いです。
場合によっては資格取得に5年以上かかる方もいるほど難しい資格です。

受験料

1科目:4,000円
2科目:5,500円
3科目:7,000円
4科目:8,500円
5科目:10,000円

弁護士

概要と試験内容

M&Aは当然法的に正しく行われる必要があり、関連法令も多岐にわたります。
具体的には民法や会社法をはじめとして、金商法や業界ごとの業法などです。
また、M&Aは実務上締結する契約が多く、ルールに則って作成したり、内容精査しなければなりません。
そのためM&Aではあらゆる場面で弁護士としての知識・スキルが役立ちます。

弁護士になるためには司法試験に合格しなければなりません。
司法試験は弁護士、検察官、裁判官の実務上で必要な知識・能力の有無を判定する国家試験です。
司法試験は法科大学院修了者又は予備試験合格者のみ受験することができ、短答式と論文式の筆記試験で構成されています。

難易度

弁護士は最も資格取得が難しい国家資格の一つです。
司法試験の受験のため合格しなければならない予備試験がそもそも難しく、その上司法試験を合格しなければ取得できない狭き門です。

受験料

28,000円

司法書士

概要と試験内容

司法書士は登記手続きのスペシャリストで、登記そのものが司法書士の独占業務です。
M&Aでは事業譲渡での不動産の移転登記や、組織再編の場面で商業登記が必要となります。

司法書士試験は7月に択一式及び記述式で行われます。

難易度

司法書士は国家資格の中でも難しい部類です。
司法書士試験は例年4、5%の合格率で、試験範囲も広いため、数年の学習が必要となる場合が多いです。

受験料

8,000円

中小企業診断士

概要と試験内容

中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。
企業の成長戦略策定やその実行のためのアドバイスが主な業務で、当然、中小企業の成長戦略にM&Aや事業承継が含まれますので、中小企業診断士はM&Aの場面でも活躍できます。

中小企業診断士の試験は1次試験、2次試験(筆記・口述)があり、
さらに中小企業診断士となるには実務補習・実務従事が必要となります。
実務補習・実務従事とは、中小企業診断士として診断実務能力を有するかを判定するため、第2次試験合格後、3年以内に実務補習を15日間以上受講するか、実務に15日間以上従事することが求められます。これらを経て中小企業診断士として登録申請することができます。

難易度

1次試験の合格率が合格率20%~40%程度、2次試験の合格率が20%程度ですので、難しい国家資格といえるでしょう。
1次試験で合格した科目は、次回免除される制度もありますので、複数回に分けて合格を目指すことができます。

受験料

1次試験:13,000円
2次試験:17,200円

実務補習受講料
5日間コース:50,000円
15日間コース:148,600円

社会保険労務士

概要と試験内容

社会保険労務士は、労働・社会保険の専門家で、行政機関に提出する書類制作や提出代行が独占業務の国家資格です。
M&Aの場面で特に社会保険労務士が活躍できるのが人事・労務デューデリジェンスの場面です。
人事・労務デューデリジェンスでは対象企業の人事・労務上の課題、懸念点を調査する目的で実施され、特に調査時点での違法な点の有無や、M&A後の雇用条件はM&Aの成否に大きく影響するため、綿密に調査します。

社会保険労務士試験の受験資格は、『①学歴』『②実務経験』『③厚生労働大臣の認めた国家試験合格』の3つに分けられ、この中のいずれか1つを満たしている必要があります。詳しくは社会保険労務士オフィシャルサイトを確認してください。

試験は「選択式」と「択一式」の出題形式があり、それぞれで合格基準点を上回る必要があります。

難易度

試験の合格率は例年6,7%と、難易度が高い国家資格です。
科目数の多さから求められる知識の幅が広く、科目合格による翌年以降の免除がないこと、などが合格率の低さに起因しているといわれています。

受験料

15,000円

ファイナンシャルプランナー

概要と試験内容

ファイナンシャルプランナー(FP)は財産管理に関する知識を有します。
その範囲は幅広く、年金、保険、税金など個人にまつわる経済的な論点の多くをカバーしています。

ファイナンシャルプランナーには国家資格と民間資格の2種類があり、
国家資格のFP技能士には1級、2級、3級の種類が、民間資格にはCFPとAFPがあります。

FP技能士1級はファイナンシャルプランナーの中で最上級の資格で、
一般的に人気なのはFP技能士2級です。
FP技能士2級で充分に実務に必要な知識をカバーしており、就職などで有利に働くため人気となっています。

民間資格のAFPはFP技能士2級に相当し、FP技能士2級の資格があれば日本FP協会に申請することでAFPを取得することができます。
CFPを受験するためにはAFPの資格が必要です。

CFPは米国のファイナンシャルプランナー認定機関と連携しており、国際ライセンスにあたります。
FP技能士1級と同様の高度な資格といえます。

FP技能士検定は各級とも学科試験と実技試験で構成されています。
日本FP協会と金融財政事情研究会の2団体が試験を実施しており、どちらで受験しても合格すれば資格を取得できます。

難易度

FP技能士各級のそれぞれの合格率は下記の通りです。
国家資格の中では比較的取得しやすい資格といえますが、1級の学科資格の難易度は高いです。

【FP技能士の合格率】
3級:約70%
2級:約25%
1級:約10%

受験料

1級(金融財政事情研究会):学科試験8,900円、実技試験25,000円
1級(日本FP協会):学科試験8,900円、20,000円(日本FP協会)
2級:学科試験4,200円、実技試験4,500円
3級:学科試験3,000円、実技試験3,000円

M&Aに関する資格を持つ専門家に依頼する際の3つの注意点・ポイント

M&Aに関する資格を持っているかどうかは、アドバイザーに依頼する場合に確認したい事項の一つでありますが、資格以外にもアドバイザーを選定する基準は他にも多くあります。
M&Aは会社と経営者のどちらにとっても重要な場面ですので、慎重にアドバイザーを決めましょう。

資格だけではなく、実績も確認する

これまで紹介したような資格の多くは、M&Aに関する知識を十分に持っている証明にはなるものの、M&Aの実務をこなしてきた証明にはなりません。
M&Aを円滑にクロージングするためには知識だけでなく実務上の経験も欠かせないので、
アドバイザーが資格保有者であることも重要ではありますが、過去の実績や実務能力についても重視しましょう。

専門家は依頼したい実務に合わせて選ぶ

M&Aアドバイザーは人それぞれ得意領域があります。
わかりやすいのは、税理士の方の得意領域は税務、同様に弁護士の方は法務、などです。
また、資格取得者に限らずとも、アドバイザーがこれまで特に多く経験してきたM&Aスキームや業種などは得意領域といえるでしょう。

依頼する場合にはアドバイザーの得意領域を確認し、依頼したい内容が適しているか検討しましょう。

真摯に対応してくれるかどうかを重視する

M&Aアドバイザーを選ぶ基準が資格、実績、能力であることは間違いありません。
一方で、同じ資格を持っているアドバイザーや、似た実績があるアドバイザーでもM&Aに取り組む姿勢や、実務上のレベルには差があるでしょう。

規模が大きくないM&Aでも真摯に対応するアドバイザーであるかどうか、M&A実現後のサポート体制が充実しているかどうかなど、アドバイザーと会話する中で見極めましょう。

まとめ

M&Aに関する国家資格と民間資格、またアドバイザーを選定する際に資格以外に気を付けたいことについて紹介してきました。

M&Aという重要な場面で、協力してくれるアドバイザーの影響は大きく、依頼者としてはなるべく能力があり、真摯な人を選びたいと思うのは当然です。
資格取得には相応の労力、コストが必要なため、アドバイザーが資格を持っているというのは重要な指標の一つではありますが、
アドバイザーの実績や能力、案件に対する姿勢などもスムーズなクロージングには欠かせません。

実際にアドバイザーと会い、話していく中で会社と経営者の重要な場面を任せられる人か判断しましょう。

監修者情報

山田コンサルティンググループ株式会社 コーポレートアドバイザリー事業本部
M&Aコンサルティング事業部 企画室