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コラム

更新日:2026/02/26

テーマ: 02.M&A

個人で事業は買える?会社買収のメリット/デメリットを紹介

事業を買うための完全ガイド

事業買収は対象企業の特定の事業のみを引き継ぎたい場合に選択される手法です。
この記事では、事業買収のプロセスや注意点、また個人での事業買収のポイントを紹介します。

目次

事業を買うということは、どういうことか?

事業買収とは、他社が運営する特定の事業やビジネスを買い取る行為を指します。これには、事業譲渡や資産譲渡などの手法が含まれます。事業買収は、企業が新しい事業分野に進出したり、既存の事業を強化・拡大したりするための手段として用いられます。

一方、会社買収とは、対象企業全体を買収する行為を指します。これには、株式譲渡や合併などの手法が含まれます。会社買収では、対象企業の全ての資産、負債、従業員、契約などが一括して移転されるため、買収後の統合がスムーズに進むことが多いです。

個人や、サラリーマンが事業を買収できるのか

結論から言うと、個人での事業買収は可能です。
法人が事業買収することとの主な違いは以下の通りです。

1. 法的構造と責任
個人で買う場合、買収後の事業は個人事業主として運営されます。個人事業主は、事業に関する全ての責任を個人が負うことになります。これは、事業の債務や法的トラブルが発生した場合、個人の資産が差し押さえられるリスクがあることを意味します。

法人が買う場合、買収後の事業は法人(会社)として運営されます。法人は独立した法的主体であり、事業に関する責任は法人が負います。これにより、個人の資産は法人の債務から保護されます。法人の責任は基本的に出資額に限定されるため、リスク管理の面で有利です。

2. 税務面の違い
個人で買う場合、事業所得は個人の所得として課税されます。個人の所得税率は累進課税であり、所得が増えるほど税率が高くなります。また、個人事業主は社会保険料も自己負担となります。

法人が買う場合、事業所得は法人税として課税されます。法人税率は一定であり、個人の累進課税よりも低い場合が多いです。また、法人は経費として認められる範囲が広く、節税の余地が大きいです。さらに、法人は社会保険料の一部を会社負担とすることができ、従業員の福利厚生を充実させることが可能です。

税金については税理士や公認の会計士などの専門家の意見を伺ってください。

3. 資金調達と信用力
個人で買う場合、資金調達は個人の信用力に依存します。銀行からの融資を受ける際も、個人の信用情報や資産が重視されます。個人事業主は法人に比べて信用力が低いため、大規模な資金調達が難しい場合があります。

法人が買う場合、法人の信用力や事業計画に基づいて資金調達が行われます。法人は株式発行や社債発行など、多様な資金調達手段を利用できるため、大規模な資金調達が可能です。また、法人の方が銀行や投資家からの信用を得やすく、資金調達の面で有利です。

4. 継続性と成長性
個人で買う場合、事業の継続性は個人の健康状態やライフイベントに大きく影響されます。個人事業主が引退や病気などで事業を続けられなくなると、事業の存続が危ぶまれます。

法人が買う場合、法人は独立した法的主体であり、経営者が変わっても事業の継続性が保たれます。法人は組織的な運営が可能であり、事業の成長や拡大も計画的に進めることができます。

個人でも会社買収は可能

M&A」と聞くと、大企業が多額の資金を用意して実施する取引という印象があるかもしれません。しかし現代では、個人事業主やサラリーマンでも、数百万円程の金額で小規模な会社を購入することが可能です。また、近年ではインターネット上でM&Aマッチングプラットフォーム等を通じて会社を買うことも可能になりました。では、個人が会社を買収するにはどのような手続きが必要になるのでしょうか。

個人が会社買収する方法

個人による買収のプロセスは会社による買収のプロセスと概ね同じです。
そのプロセスについて解説します。

戦略立案とターゲット選定

まず、買収の目的や戦略を明確にします。これには、自身のアイディアやビジョンの実現、自身の得意とする領域のマネタイズ、自身がもたらしたい社会的変革などの具体的な目標を設定します。その後、これらの目標に合致する買収ターゲットを選定します。ターゲット企業のリストを作成し、事前調査を行います。

初期接触と意向表明

ターゲット企業が決定したら、初期接触を行い、買収の意向を伝えます。これには、意向表明書(Letter of Intent, LOI)を提出することが一般的です。LOIには、買収の基本条件やスケジュール、秘密保持に関する条項が含まれます。

デューデリジェンス

デューデリジェンス(Due Diligence)は、ターゲット企業の詳細な調査を行うプロセスです。財務、法務、税務、事業運営、人事などの各分野で徹底的な調査を行い、リスクや問題点を洗い出します。これにより、買収価格や条件の再検討が行われることもあります。
株式譲渡により企業買収する場合には未払い残業などの労働債務を引き継ぐことになりますが、事業買収では引き継がないので、デューデリジェンスで労働債務が検出された場合でも、債務を継承することはありません。

デューデリジェンスについて詳しくはこちら

交渉と契約締結

デューデリジェンスの結果を踏まえ、買収条件の最終交渉を行います。価格、支払い条件、従業員の処遇、事業運営の継続など、詳細な条件を詰めていきます。交渉がまとまったら、買収契約(Purchase Agreement)を締結します。

規制当局の承認

必要に応じて、競争法や業界規制に基づく当局の承認を取得します。自身の実施するM&Aが独占禁止法の届出基準に該当するか否かは、事前に弁護士等へ確認しましょう。また、承認プロセスには時間がかかることがあるため、事前にスケジュールを考慮しておく必要があります。

買収の実行

契約締結後、買収の実行に移ります。これには、資産や事業の移転、従業員の引き継ぎなどが含まれます。個人がM&Aを実施する場合には、弁護士等へ契約書の内容精査を依頼のうえ、契約後に生じる不測のトラブルを未然に防ぐことが推奨されます。また、すでに事業を所有している場合は買収後の統合プロセス(Post-Merger Integration, PMI)も重要で、スムーズな統合を図るための計画と実行が求められます。

経過観察と評価

買収が完了した後も、定期的に経過観察を行い、買収の効果を評価します。買収目的が達成されているか、事業運営体制の引継ぎが順調に進んでいるかを確認し、必要に応じて改善策を講じます。

個人が会社買収するメリット・デメリット

M&Aは多額の投資かつリスクがある取引です。その為M&Aのメリットとデメリットを理解したうえで取り組むことが重要です。

■個人が会社を買うメリット
1.起業する手間がかからない
M&Aで既存の会社を買収すれば、会社設立に係る手続きを省けるかつ、既存設備や従業員を引き継ぎ迅速に事業を展開可能です。勿論、売り手探しや交渉等のM&A実施に伴う手間はありますが、起業に伴う初期の手間を省けるのは大きなメリットです。

2.ニーズのあるサービス・商品で事業ができる
M&Aにより既存設備や従業員を引き継げる他、既存顧客や取引先も引き継げる為、
一から新規開拓をせず一定の売上がある状態で事業展開が可能です。

■個人が会社を買うデメリット
1.借金を抱える可能性がある
M&Aにより売り手の資産や負債を引き継ぐ他、予期せぬ費用負担や訴訟リスクなどの潜在的な問題が発生することがあります。これを避ける為に、M&A実施後も引き続きリスク管理を行うことが必要です。

2.個人では手続きが困難
M&Aの手続きは煩雑な為、個人による対応が難しい場合があります。具体的には、複数の契約書の作成や税務関連の専門知識が必要です。自身に不利なM&Aとならないよう専門家等への相談も検討しましょう。

個人で事業を買収することの注意点

個人で事業を買収する場合には、法人が買収する場合と比べていくつかの特有の注意点があります。以下に、個人で事業買収を行う際に特に注意すべきポイントを詳しく解説します。

1. 法的責任とリスク管理
個人で事業を買収する場合、買収後の事業は個人事業主として運営されます。個人事業主は事業に関する全ての責任を個人が負うため、事業の債務や法的トラブルが発生した場合、個人の資産が差し押さえられるリスクがあります。このため、事業買収前にリスク管理の計画を立てることが重要です。具体的には、適切な保険に加入する、契約書の内容を慎重に確認する、法的助言を受けるなどの対策が必要です。


買収対象の事業の財務状況を詳細に調査することは不可欠です。個人事業主としての買収では、事業の収益性やキャッシュフローが個人の生活にも直接影響を与えるため、財務リスクを最小限に抑える必要があります。デューデリジェンスを通じて、過去の財務諸表、負債状況、将来の収益予測などを徹底的に確認し、潜在的なリスクを把握することが重要です。

3. 資金調達の計画
個人で事業を買収する場合、資金調達は個人の信用力に依存します。銀行からの融資を受ける際も、個人の信用情報や資産が重視されます。大規模な資金調達が難しい場合があるため、自己資金の準備や、親族や友人からの借入れ、クラウドファンディングなど、複数の資金調達手段を検討することが重要です。また、事業計画書を詳細に作成し、資金提供者に対して明確なビジョンと収益予測を示すことが求められます。

4. 税務面の考慮
個人事業主としての事業所得は個人の所得として課税されます。個人の所得税率は累進課税であり、所得が増えるほど税率が高くなります。事業買収前に税務面での影響を十分に考慮し、節税対策を講じることが重要です。例えば、経費として認められる範囲を活用する、青色申告を行う、などがあります。
税務面に関しては税理士・公認会計士の助言を受けてください。

.5. 事業運営のスキルと知識
個人で事業を買収する場合、事業運営に必要なスキルと知識を持っていることが重要です。特に、買収する事業が属する業界の知識や経験が不足している場合、事業運営に困難を伴うことがあります。事業買収前に、業界の動向や競合分析、マーケティング戦略などを学び、必要なスキルを身につけることが求められます。また、事業運営に関する専門家の助言を受けることも有効です。

6. 従業員との関係構築
買収後の事業運営において、従業員との関係構築は重要な要素です。従業員のモチベーションや信頼を維持するために、買収の目的やビジョンを明確に伝え、透明性のあるコミュニケーションを図ることが求められます。従業員の不安を軽減し、買収後のスムーズな統合を実現するために、従業員の意見を尊重し、適切なサポートを提供することが重要です。

7. 法的助言の活用
個人で事業を買収する際には、法的助言を受けることが重要です。買収契約書の作成や、法的リスクの評価、許認可の確認など、専門的な知識が必要な場面が多くあります。弁護士や会計士などの専門家の助言を受けることで、法的リスクを最小限に抑え、買収プロセスを円滑に進めることができます。

8. 長期的な視点での計画
事業買収は短期的な利益だけでなく、長期的な視点での計画が重要です。買収後の事業成長や市場拡大を見据えた戦略を立て、持続可能なビジネスモデルを構築することが求められます。定期的に事業のパフォーマンスを評価し、必要に応じて戦略を見直すことで、事業の成功を持続させることができます。

まとめ

個人によるM&Aは多額の投資、相応のリスクが発生するため、その成功のためには自身の戦略やメリット・デメリットを十分に検討することが重要です。また、M&Aには法務や税務等の専門知識や交渉力等が必要になります。安心してM&Aを進める為にも、個人でM&Aを実施する際は専門家や士業への相談も検討しましょう。

監修者情報

山田コンサルティンググループ株式会社
コーポレートアドバイザリー事業本部
企画室