コラム
更新日:2025/02/18
テーマ: 02.M&A
運送業界におけるM&Aのトレンドやメリットを紹介

運送業界はM&Aが活発な業界です。
DDなどで運送業界ならではの注意するべきポイントや、M&A成功のポイントを解説します。
目次
運送業界におけるM&A トレンド
運送業界におけるは、近年、業界再編や効率化を目的とした動きが活発化しています。特に、少子高齢化による労働力不足や、EC市場の拡大に伴う物流需要の増加が背景にあります。大手企業は規模の経済を追求し、中小企業は生き残りを図るためにM&Aを積極的に活用しています。また、デジタル技術の導入や環境規制への対応も重要な要素となっており、これらに対応するための資本力や技術力を持つ企業との統合が進んでいます。結果として、業界全体の効率化と競争力強化が期待されています。
国内における運送業界のM&A動向
日本国内では特に、2024年問題と呼ばれる労働時間規制の強化に対応するため、拠点や車両の拡充を目的としたM&Aが増加しています。2024年上期には、M&A件数が前年同期比で42.5%増加し、57件に達しました。さらに、デジタル技術の導入や環境規制への対応も重要な要素となっており、これらに対応するための資本力や技術力を持つ企業との統合が進んでいます。
地域密着型の中小運送業者が、大手企業のネットワークに組み込まれることで、サービスの質向上や顧客基盤の拡大を図る動きも見られます。結果として、業界全体の効率化と競争力強化が期待されており、今後もM&Aの動きは続くと予想されます。
海外における運送業界のM&A動向
海外における運送業界のM&A動向は、近年非常に活発化しています。特に、2019年以降、特定地域の物流ネットワークを強化するために、大手船社やフォワーダーが国外の同業者や周辺物流分野に強みを持つ企業を買収する動きが顕著です。これにより、グローバルな物流ネットワークの拡充と効率化が進んでいます。
また、コロナ禍により物流の重要性が再認識され、サプライチェーンの強化を目的としたM&Aが増加しました。特に、デジタル技術の導入や自動化を進めるための投資が活発であり、これに対応するための資本力や技術力を持つ企業との統合が進んでいます。
さらに、低温物流市場の成長もM&Aの一因となっています。冷凍食品や医薬品などの需要増加に伴い、低温物流に特化した企業の買収が増加しています4。これにより、物流業界全体のサービス品質向上と競争力強化が期待されています。
全体として、海外の運送業界では、効率化、デジタル化、サービスの多様化を目的としたM&Aが今後も続くと予想されます。これにより、グローバルな物流ネットワークの強化と持続可能なビジネスモデルの構築が進むでしょう。
M&Aが注目されている理由
労働力不足
日本国内で少子高齢化が進み、労働力人口が減少しているなか、運送業界では上述した通り2024年問題と呼ばれる規制強化により特に深刻な労働力不足が問題となっており、M&Aはこの課題を解決する手段の一つです。特に、熟練したドライバーや物流管理者の確保が難しい中で、他社を買収することで人材を確保を目的としたM&Aが目立っています。
業界の競争激化
運送業界では競争が激化しており、企業は規模の拡大や効率化を図るためにM&Aを活用しています。特に、物流ネットワークの拡充やコスト削減を目的に、他社との統合や買収が進んでいます。
技術革新への対応
物流業界では、AIやIoTなどの技術革新が進んでおり、これに対応するための投資が必要です。M&Aを通じて技術力のある企業を取り込むことで、最新の技術を迅速に導入し、業務の効率化やサービスの高度化を図ることができます。これにより、競争優位性を確保することが可能です。
グローバル展開の加速
人口減少による需要減少が避けられない中、運送業界ではグローバルな展開が求められており、M&Aはその手段として有効です。特に、海外市場への進出や国際物流ネットワークの構築を目指す企業にとって、現地企業の買収は迅速かつ効果的な方法です。これにより、国際的な競争力を高め、新たな市場での成長を実現することができます。
運送業界でのM&A メリットおよびポイント
運送業界は事業を拡大することで効率的な配送を実現を目指す、DX推進のため技術獲得を狙う、といった目的でM&Aが行われることが多いです。
業界全体の課題を克服するため、戦略的にM&Aが活用されています。
規模の経済の実現
M&Aにより企業規模が拡大することで、運送コストの削減や効率的な運行管理が可能となります。例えば、車両や倉庫の共有、ルートの最適化などにより、運送コストを削減し、利益率を向上させることができます。
市場シェアの拡大
他社を買収することで、新たな地域や市場に迅速に進出することができます。これにより、競争力を強化し、顧客基盤を拡大することが可能です。特に、地域密着型の中小運送会社を買収することで、その地域でのプレゼンスを強化できます。
技術とノウハウの獲得
M&Aを通じて、先進的な技術や運営ノウハウを持つ企業を取り込むことができます。これにより、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やサービスの質向上を図ることができ、競争優位性を確保することができます。
運送業ならではのM&Aを実施する際に見ておくべきポイント
M&Aでは一般的に売手の財務状況や実現できるシナジー効果を検討しますが、特に運送業で買い手として気を付けるべき売手の情報を解説します。
許認可の確認
運送業を営むためには、一般貨物自動車運送業や特定貨物自動車運送事業などの許認可が必要です。当然ながらM&Aの際には、対象企業が適切な許認可を取得しているか、またその許認可が有効であるかを確認することが重要です。許認可が無効または不適切である場合、事業継続に支障をきたす可能性があるため、慎重な確認が求められます。
車両および設備の状態
運送業では、車両や倉庫、配送センターなどの設備が事業運営の基盤となります。デューデリジェンスでは、これらの資産の状態を詳細に調査し、適切に維持管理されているか、老朽化が進んでいないかを確認することが重要です。特に車両のメンテナンス履歴や稼働状況を把握し、将来的な修繕費用や更新コストを見積もることが必要です。
労働力の確保と労働環境
運送業は労働集約型の産業であり、ドライバーや倉庫作業員の確保が事業の成否を左右します。M&Aの際には、対象企業の労働力の確保状況や労働環境を確認することが重要です。特に、労働条件や福利厚生、労働時間の管理状況を調査し、従業員の定着率や満足度を把握することが求められます。労働環境が悪い場合、M&A後に人材流出が発生するリスクがあるため、事前の対策が必要です。
事業買収を成功させるために必要なこと
M&Aを成功させるためには、経営戦略と一貫したM&A戦略を立てることです。
M&Aによって実現したいことは何か、明確にした上で、ターゲットを探索し、目的の実現までの道筋を綿密に計画しておく必要があります。
以下では、運送業のM&A事例と成功のポイントを1例紹介します。
成功事例に見る運送業 M&Aの鍵
物流会社大手のセンコーグループHDは、2023年に事業拡大のため、倉庫や海運関連事業を営む株式会社オーナミを買収しました。
センコーグループはもともとM&Aに積極的で、2007年以降、約20件のM&Aを実行しています。
オーナミは海上・陸上において一貫した輸送体制を持ち、重量物や大型貨物の荷役、保管、輸送、通関などを手がけており、造船会社や機械・鉄鋼メーカーと長年取引を行ってきた実績がありました。
このM&Aによってセンコーグループはオーナミが持つノウハウ、ネットワーク、リソースを活用し、往復輸送や積み合わせ輸送など、グローバルな重量物輸送事業の拡大を目指しています。
上述した事例からもわかる成功のポイントは”自社の経営戦略から進出したい事業領域を明確にする””自社の物流網とシナジーのある領域の対象会社を探す”などがあります。
運送業界におけるM&Aの相場
相場といってもM&Aには様々な個別事情があるため、一概には言えません。
またM&Aでは企業価値を図る方法が複数あり、それぞれについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
一般的にはEBITDA(償却前営業利益)が大きい、また売上高および利益の成長率が大きい会社の方が高い金額がつきます。
まとめ
運送業は少子化などによりM&Aが活発な業界であり、また、運送業ならではの注意するべきM&A上のポイントも多数あります。
それらのポイントを押さえたうえで、どの業界でも不可欠なM&A戦略立案、シナジー効果実現のためのPMI計画の策定などに取り組み、運送業におけるM&Aを成功させましょう。
監修者情報
山田コンサルティンググループ株式会社
コーポレートアドバイザリー事業本部
企画室
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