M&Aの基礎知識 会社分割とは

会社分割とは、ある会社が(分割法人)その事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることです。既存の会社が承継するものを「吸収分割」、新たに設立する会社が承継するものを「新設分割」といいます。法人税法では、分割の対価となる資産の帰属先に応じて、「分社型分割」と「分割型分割」とに区分しています。税法上、原則としては、時価により資産・負債を分割承継法人に対して譲渡したものとして、譲渡損益が計上されますが、これを「非適格分割」といいます。一定の要件を満たす場合、この譲渡損益は繰り延べられ、この特例的な取扱いを「適格分割」といいます。

(5) 会社分割の税務

 
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◆税務上の会社分割

会社分割は、会社の事業の全部または一部を他の会社に包括的に承継させる組織法上の行為である。
分割により他の会社から事業の全部または一部を承継する分割承継会社は、分割の対価として分割承継会社の株式等を交付する。
この対価の交付先に応じて、税務上、「分社型分割」と「分割型分割」の2類型に整理される。

「分社型分割」は、分割承継法人の株式その他の分割対価資産が分割法人に交付される分割をいい、「分割型分割」は分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産のすべてが分割法人の株主等に交付される分割ををいう。

□分社型分割と現物出資の税務

会社法上、会社分割は事業の全部または一部を包括承継させる行為であるのに対し、現物出資には単に財産を移転させる行為も含まれる点で両者には違いがある。

しかしながら、事業の全部または一部を他社に承継させ、その対価として承継会社の株式等の交付を受ける行為については、これを現物出資で行っても、あるいは分社型分割で行っても経済的には同じ効果が得られる。

すなわち、会社設立のための現物出資であれば分社型の新設分割と、既存会社における増資のための現物出資であれば分社型の吸収分割と同じある。
このような観点から、税務上、分社型分割と現物出資については移転資産等に係る譲渡損益および適格要件ともに同様の取扱いを行うこととしている。

□分割型分割と合併の税務

会社分割と合併とは一見正反対の行為のようにも思えるが、税務上の取扱いには、共通する部分が多い。

例えば、A社に対しB社がそのすべての事業を分割型分割によって移転させた場合について考える。
分割によりB社は空っぽの会社となり、B社の株主はA社からA社株式等の交付を受けることになり、経済的にはA社がB社を吸収合併したのと同じ効果が生じる。
そのため、税務上はこのような経済実体に着目し、分割型分割については基本的に合併と同様に取り扱うこととしている。

ただし、分割型分割の場合には事業の一部だけを移転することができるので、適格分割型分割における資本金等の額および利益積立金額の引継ぎ額の計算方法、適格要件における新株等の按分型交付の要件など、合併と比べて若干既定の数が多くなっている。

◆適格分割と非適格分割

内国法人が分割をした場合、原則として、分割法人が分割時の「時価」により資産及び負債を分割承継法人に対して「譲渡」したものとして、移転資産及び負債の譲渡損益が計上される。
ただし、法人税法上の一定の要件を満たす分割については、移転資産及び負債の譲渡損益が繰り延べられる。

前者の原則的取扱いを「非適格分割」、後者の特例的取扱いを「適格分割」という。

「非適格分割」に該当する場合、分割による資産等の移転は原則として分割法人から分割承継法人に時価により譲渡が行われたものとされ、移転資産等の譲渡利益または譲渡損失が分割法人の益金または損金に算入される。

一方、「適格分割」に該当する場合には、資産等の移転は帳簿価額で行われたものとされ、譲渡損益の計上が繰り延べられる。

◆分割における税制適格要件の基本的な考え方

適格要件の基本的な考え方は、分割の対象とされた移転資産等に対する分割法人の支配が継続しているか否かが焦点となる。

まず、移転資産等に対する支配が継続していれば「適格分割」、継続していなければ実質的な資産等の譲渡と同様にとらえ、「非適格分割」と考えられる。

次に、「適格分割」となるには、分割に際し交付される財産が分割承継法人の株式だけであることが前提となる。
分割に際して金銭等が交付される場合は実質的には分割対象資産等の譲渡であり、それは「非適格分割」として取り扱われる。
(金銭不交付要件)

分割型分割である場合は、分割承継法人の株式が分割法人株主の持分割合に応じて交付される、いわゆる「按分型」の分割であることが適格要件とされる。
なぜなら、持分割合を無視して分割承継法人の株式が、分割法人の一部の株主に交付されるような分割は、移転資産等に対する支配が継続しているとはいえないためである。
(按分型要件)

このような考え方が根本にあるため、分割における税制適格要件の内容は、まず「企業グループ内の分割」と「共同事業を営むための分割」とで大別される。
さらに「企業グループ内の分割」は、「100%グループ内の分割」と「50%超100%未満グループ内の分割」とに区分される。

◆企業グループ内における適格分割の要件

□100%グループ内の分割

100%グループ内(完全支配関係のある法人間)の分割とは、分割法人と分割承継法人との間に次のような完全支配関係がある場合の分割をいう。
完全支配関係(100%の資本関係が分割後も継続見込み)のある企業グループ内で分割を行った場合において、次の要件を満たしたときは、その分割は「適格分割」とされる。

・金銭等不交付要件

<分割型分割の場合>
分割法人の株主に分割対価資産として分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないこと。

<分社型分割の場合>
分割法人に分割対価資産として分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないこと。

・按分型要件(分割型分割の場合のみ)
分割法人の株主に対して、分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式が、分割法人の株主の有する分割法人株式の数の割合に応じて交付されること。

【100%グループ内の分割における税制適格要件(分社型分割の場合)】
【100%グループ内の分割における税制適格要件(分社型分割の場合)】

【100%グループ内の分割における税制適格要件(分割型分割の場合)】
【100%グループ内の分割における税制適格要件(分割型分割の場合)】

□50%超100%未満グループ内の分割

50%超100%未満グループ内(支配関係のある法人間)の分割とは、分割法人と分割承継法人との間に次に掲げる支配関係がある場合の分割をいう。
支配関係(50%超の資本関係が分割後も継続見込み)のある企業グループ内で分割を行った場合において、次の要件を満たしたときは、その分割は適格分割とされる。

・金銭等不交付要件、按分型要件は前述と同じ。

・主要資産・負債引継要件
 分割事業に係る主要な資産及び負債が分割承継法人に移転していること。

・従業者引継要件
分割直前の分割事業に係る従業者のうち、その総数の概ね80%以上に相当する数の者が、分割後に分割承継法人の業務に従事することが見込まれていること。

・事業継続要件
分割に係る分割事業が、分割後に分割承継法人において引き続き営まれることが見込まれていること。

【50%超100%未満グループ内の分割における税制適格要件(分社型分割の場合)】
【50%超100%未満グループ内の分割における税制適格要件(分社型分割の場合)】

【50%超100%未満グループ内の分割における税制適格要件(分割型分割の場合)】
【50%超100%未満グループ内の分割における税制適格要件(分割型分割の場合)】

◆共同事業を営むための適格分割の要件

分割法人および分割承継法人の持分関係が50%以下で、支配関係がない法人との間の会社分割では、前述の要件に加え、さらに次の3つの要件(事業関連性要件、事業規模要件および株式保有継続要件)を満たすものは「適格分割」とされる。

・事業関連性要件
分割法人の分割事業(分割法人の分割前に営む事業のうち分割後に分割承継法人において営まれることとなるものをいう)と、分割承継法人の分割承継事業(分割承継法人の分割前に営む事業のうちいずれかの事業をいい、複数新設分割の場合には他の分割法人の事業をいう)とが相互に関連するものであること。

・事業規模要件又は経営参画要件
分割法人の分割事業と分割承継法人の分割承継事業(複数新設分割の場合には他の分割法人の事業をいい、分割事業と関連するものに限る)のそれぞれの売上金額、従業者の数、若しくはこれらに準ずるものの規模の割合が概ね5倍を超えないこと、又は、分割前の分割法人の役員のいずれかと分割承継法人の特定役員(社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役、常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者)のいずれかとが分割後に分割承継法人の特定役員になることが見込まれていること。

・株式継続保有要件
(分割型分割の場合で、かつ、その分割に係る分割法人の株主が50人以上である場合には、株式継続保有要件を満たす必要はない。)

<分割型分割の場合>
分割型分割直前の分割法人の株主で、分割により交付を受ける分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式の全部を継続して保有することが見込まれる者並びに分割承継法人(複数分割の場合には他の分割法人)が有する分割法人の株式数の合計が、その分割法人の発行済株式数の総数の50%超であること。

<分社型分割の場合>
分割法人が分社型分割により交付を受ける分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式の全部を継続して保有することが見込まれていること。

【共同事業を営むための分割(分社型分割の場合)】
【共同事業を営むための分割(分社型分割の場合)】

【共同事業を営むための分割(分割型分割の場合)】
【共同事業を営むための分割(分割型分割の場合)】

【適格分割判別フローチャート】
【適格分割判別フローチャート】

【税制適格要件の概要】
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◆分割承継法人における課税関係

分割承継法人において、基本的に課税は生じないため、分割法人から移転を受ける資産等の受入価額をいくらとするかが問題となる。

適格分割に該当する場合には、税務上、移転資産等の受入価額は分割法人における帳簿価額とされ、非適格分割となる場合には、基本的には移転時の資産等の時価をもって受入価額とすることになる。

なお、非適格分割に該当する場合、分割により分割承継法人が交付した新株等の価額の合計額が移転資産等の時価純資産価額を超えるときはその超過部分を「資産調整勘定」として、時価純資産価額に満たないときはその満たない部分を「負債調整勘定」として受け入れる。

◆分割型分割における分割法人株主の課税関係

分割型分割が行われた場合には、税務上は原則として分割法人の株主が旧株の一部を時価により譲渡した上で分割対価資産の交付を受けたものと考える。

この場合、分割対価資産の価額のうち分割法人の利益積立金額を原資とする部分の金額は「みなし配当」として配当課税の対象とされ、分割対価資産の価額からこの「みなし配当」を控除した金額は譲渡対価としてキャピタルゲイン課税の対象となる。

ただし、分割対価資産が分割承継法人(または分割承継法人の100%親法人)の株式のみである場合には、旧株の譲渡損益の計上が繰り延べられる(この取扱いは「適格」であるか否かは問わない)。
また、「適格」分割型分割に該当する場合には、分割事業に係る資産等の移転は帳簿価額による引継ぎとされ、分割事業に係る利益積立金額も分割承継法人に引き継がれる。

したがって、分割対価資産には分割法人の利益積立金額を原資とする部分の金額はないので、みなし配当課税も生じない。

◆無対価分割が行われた場合の取扱い

無対価分割が行われた場合には、原則非適格分割となるが、同一の企業グループ内の分割で、100%子会社同士で分割を行う場合など、実質的には単に対価の交付を省略しただけと考えられるケースのときは、無対価分割であっても適格要件を満たすこととなる。

◆グループ法人税制の規定の適用を受ける場合

内国法人が「譲渡損益調整資産」を、完全支配関係がある他の内国法人に譲渡した場合、対象の資産に係る譲渡利益額または譲渡損失額に相当する金額を、課税所得の計算上、損金の額または益金の額に算入し、資産に係る譲渡損益の計上を繰延べる。

この制度は、通常の譲渡の場合以外に、非適格分割で合併承継法人へ資産の移転を行う場合にも適用がある。

すなわち、非適格分割が行われた場合でも、分割承継法人と分割法人との間に完全支配関係があるときは、時価により移転する資産のうち、「譲渡損益調整資産」に係る譲渡利益は、いったん認識した上で、同額を損金(譲渡損失のときは益金)に計上し、課税を繰延べる。

※「譲渡損益調整資産」とは、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産を除く)、有価証券、金銭債権及び繰延資産をいう。
ただし、譲渡直前の帳簿価額が1,000万円未満の資産及び売買目的有価証券に該当するものを除く。

◆分割承継法人が有する繰越欠損金の使用制限

支配関係のある法人間の適格分割が行われた場合には、分割承継法人が有する繰越欠損金について使用制限が課されることがある。

具体的には、支配関係のある法人間の適格分割で、分割法人と分割承継法人との間に、次のうち最も遅い日から継続して支配関係がない場合で、かつ、みなし共同事業要件を見たさないときは、分割承継法人の有する繰越欠損金の使用制限が課される。

・分割承継法人の適格分割の日の属する事業年度の開始の日の5年前の日
・分割承継法人の設立の日
・分割法人の設立の日

なお、支配関係のない法人間の共同事業を営むための適格分割の場合には、繰越欠損金の使用制限は課されない。

□使用制限を受ける繰越欠損金の金額

分割承継法人の有する繰越欠損金のうち、次の欠損金額について使用制限が課される。

・分割承継法人の支配関係事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額
・支配関係事業年度以後の各事業年度に生じた欠損金額のうち特定資産譲渡等損失の額に相当する金額

支配関係のある法人間の適格分割で、分割法人と分割承継法人の支配関係が、分割承継法人の適格分割の日の属する事業年度の開始の日の5年前の日(又は設立日のいずれか遅い日)後に生じている場合で、かつ、みなし共同事業要件を満たさないときは、分割承継法人の有する繰越欠損金の使用制限が課される。

この場合には、分割承継法人の有する繰越欠損金のうち、次の欠損金額について使用制限が課されることになる。

・支配関係事業年度(分割法人と分割承継法人との間に最後に支配関係があることとなった日の属する事業年度)前の各事業年度で前9年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額

・支配関係事業年度以後の各事業年度で前9年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち特定資産譲渡等損失額に相当する金額からなる部分の金額

分割承継法人の前9年内事業年度の繰越欠損金のうち、支配関係事業年度前の各事業年度において発生した欠損金額については、全額が制限を受けますが、支配関係事業年度以後の各事業年度において生じた欠損金額については、全額ではなく特定資産譲渡等損失相当額のみが制限を受けることになる。

特定資産譲渡等損失相当額は、支配関係事業年度以後の各事業年度(対象事業年度)において生じた欠損金額のうち、その対象事業年度を「特定資産譲渡等損失の損金算入」の適用がある事業年度とし、最後に支配関係があることとなった日において有する資産を「特定資産」とした場合に、その対象事業年度において「特定資産譲渡等損失の損金算入制限」の適用を受ける金額に達するまでの金額とされている。

◆特定資産譲渡等損失の損金算入制限

支配関係のある法人間の「適格分割」が行われた場合において、分割法人と分割承継法人との間に、次のうち最も遅い日から継続して支配関係がない場合で、かつ、みなし共同事業要件を満たさないときは、分割承継法人の適用期間において生じる特定資産譲渡等損失は、分割承継訪印の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されない。

・分割承継法人の適格分割の日の属する事業年度の開始の日の5年前の日
・分割法人の設立の日
・分割承継法人の設立の日

なお、支配関係のない法人間の共同事業を営むための適格分割の場合には、特定資産譲渡等損失の損金算入制限は課されない。

□特定資産譲渡等損失額

特定資産譲渡等損失額とは次の金額の合計額をいう。

・特定引継資産譲渡等損失
 特定引継資産譲渡等損失額は次のように計算される。

特定引継資産譲渡等損失額 = 特定引継資産の譲渡、評価替え、貸倒れ、除却その他これらに類する事由による損失の額の合計額 - 特定引継資産の譲渡又は評価換えによる利益の額の合計額

特定引継資産とは、分割承継法人が分割法人から引き継いだ資産で、分割法人が分割承継法人との間に最後に支配関係があることとなった日(支配関係発生日)前から有していたものをいう。

・特定保有資産譲渡等損失
特定保有資産譲渡等損失額は次のように計算される。

特定保有資産譲渡等損失額 = 特定保有資産の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他これらに類する事由による損失の額の合計額 - 特定保有資産の譲渡又は評価換えによる利益の額の合計額

特定保有資産とは、分割承継法人が支配関係発生日前から有していた資産をいう。

□適用期間

特定資産譲渡等損失の損金算入制限の対象期間である適用期間は、適格分割の日の属する事業年度の開始の日から、次の日のうち最も早い日までの期間をいう。

・適格分割の日の属する事業年度の開始の日以後3年を経過する日
・支配関係発生日以後5年を経過する日
・連結納税の開始に伴う資産の時価評価損益の適用を受ける場合には、連結開始直前事業年度終了の日
・連結納税の加入に伴う資産の時価評価損益の適用を受ける場合には、連結加入直前事業年度終了の日
・非適格株式交換若しくは非適格株式移転に係る株式交換完全子法人等の資産の時価評価損益の適用を受ける場合には、その非適格株式交換又は非適格株式移転の日の属する事業年度終了の日

なお、適用期間は、適格分割の日の属する事業年度の開始の日以後であるため、特定保有資産については合併前に譲渡したものも特定資産譲渡損失の損金算入制限が課されることになる。

具体的には、適格分割の日の属する事業年度の開始の日から合併の日までの間に、特定保有資産の譲渡等損失が生じた場合に、その譲渡等損失について損金算入制限を受けることになる。

 
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