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事業承継の基礎知識 4. 種類株式・属人的株式・信託を活用した事業承継

株式には議決権と財産権という2つの側面がありますが、事業承継のケースによっては、これらを切り離して承継させる必要が出て来ます。このとき活用できるのが、種類株式、属人的株式、信託です。種類株式とは内容の異なる複数種類の株式をいいます。 これらの制度を活用することで、受け取る配当の金額や行使できる議決権の内容等について、ある株式は配当を多くもらえる、ある株式は議決権が制限されるなど、株式間で差をつけることができます。 種類株式は、後継者のみに議決権を集中させる、先代経営者に拒否権を持たせてモニタリング期間を置く、少数株主を排除(スクイーズアウト)するなどの場面で活用されるのが一般的です。属人的株式も種類株式と同様に、議決権を集中させたいときなどで活用されますが、「株式」ではなく「株主」に帰属したものなので、その効力は後継者には引き継がれないものとされています。 信託を活用すると、ひとつの財産に付帯する権利を区分して権利行使できる者を別々に設定したり、多様な条件をつけることも可能になります。他の承継方法(相続、贈与、譲渡など)よりも自由度の高い財産承継の方法といえるでしょう。

4-5. 属人的株式を活用した事業承継

 

公開会社でない株式会社(非公開会社)については、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる、とされている。
このように、特定の権利内容について異なる取扱いを属人的に定めることから、属人的株式と呼ばれている。

属人的株式は、「株主」に着目したものであって、「株式」に着目したものではないため種類株式には該当しないが、実質は種類株式と同様である。定款に属人的株式の定めがされている場合には、種類株式とみなして会社法上の規定が適用される。
一方で、属人的株式は、種類株式と違って登記が不要であり、通常、外部に内容が知られることがない。

属人的株式を導入する手続き

定款の変更には特別決議(議決権の3分の2以上)が必要であるが、属人的株式の定めは、株主の権利に重大な影響を及ぼすものと考えられるため、属人的株式に関する定款の定めの新設及び変更をする場合は、株主総会の特殊決議が必要とされる。
つまり、原則として、総株主の半数以上、総株主の議決権の4分の3以上に当たる多数の決議が必要となる。なお、属人的株式の定めを置けるのは非公開会社に限定される。
この属人的な取扱いは個別具体的な株主を特定する必要があるのか、「代表取締役」といった定めで足りるかといった点を含め、具体的な定款への記載内容、方法に係る規定は会社法上、整備されていない。

属人的株式の活用

種類株式と同様、円滑な事業承継のための属人的株式の活用方法としては、後継者に議決権を集めるためのものが想定される。
例えば、後継者が所有する株式については1株について10議決権とすることで議決権の集中が可能となる。
ただし、現経営者が1株について10議決権とする属人的株式を保有していて、相続や譲渡によって後継者が取得した場合、その属人的株式に付された特殊な権利はないものとみなされる可能性が高い。
なぜなら、属人的株式は「株主」に着目した取扱いであるため、先代の経営者に付された特殊な権利内容は、先代の経営者のみに付されたものであり、株式に付されたものではないためである。

つまり、属人的株式の権利内容について、後継者は当然に引き継ぐことはできないと解されている。
とはいえ、念のため属人的株式を保有することで特別な権利を有する株主が死亡した場合には、その株主が有していた特別な権利が失効する旨を定款に定めておくことが無難である。
また、死亡の場合だけではなく、その株主が意思能力を喪失した場合も特別な権利が失効する旨を定款に定めておきたい。

属人的株式の評価方法

税務上、相続等により取得した種類株式のうち無議決権株式、拒否権付株式の評価については、基本的に普通株式と同様に取り扱う旨が国税庁より公表されているが、属人的株式を設定した場合の当該評価方法は明らかにされていない。
属人的株式は株式に付された権利内容ではなく、それが相続された際には再び普通株式となってしまうという性質を考慮して、一般的には、普通株式と同様の取扱いとされる。
ただし、属人的株式が譲渡又は相続された場合の会社法上、税務上の取扱いは明確にされておらず、現段階では法的に安定していない。
そのため、属人的株式の導入には慎重な検討が必要である。

 
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