お問い合わせ

海外ビジネス情報

2022/01/31

テーマ: 03.海外

EV(電気自動車)生産ハブへ加速するタイと今後の課題

目次

タイ自動車産業の概要

2020年半ばから新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、タイ国内外で需要が減少し、国内全域の自動車サプライチェーンに大きな混乱が生じた。

しかし、政府の自動車産業への奨励策の継続や新型コロナウイルスの感染拡大状況が抑制されたことなどにより、2021年第2四半期は、前年同期比で自動車の生産台数*1が148.5%増、国内販売台数*2が41.3%増、輸出台数*3が114.8%増と自動車市場は大幅に伸びた。

*1: 生産台数には、乗用車、OPV、バン、マイクロバス、ピックアップトラック、PPV、バス、トラックが含まれる
*2: 国内販売台数には、乗用車・業務用車両(バン・マイクロバス、ピックアップトラック、トラック、バス、四輪駆動車、その他・指定なし) が含まれる
*3: 輸出台数には、完成車(CBU)のみが含まれる

2020年のタイの自動車登録台数*1は4,000万台で、このうち電気自動車(EV)*2が占める割合は約0.5%にすぎない。
一方で、EVの登録台数は2016年から2020年にかけて年平均成長率24%で推移して、約8万1,000台から約19万2,000台に増加し、全タイプの自動車の中でEVが最も高い成長率を記録している。

*1: 上記の数値には、自動車法上の車両のみが含まれる。自動車法上の車両には、セダン(乗車定員7人以下)、マイクロバス・乗用バン、バン・ピックアップトラック、自動三輪車、県間タクシー、都市タクシー、 固定ルートタクシー、自動三輪タクシー(トゥクトゥク)、ホテルタクシー、観光タクシー、レンタカー、二輪車、トラクター、ロードローラー、農耕用車両、トレーラー、二輪タクシー(モーターサイ)が含まれる
*2: 電気自動車(EV)には、 HEV(ハイブリッド車) 、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(バッテリー電気自動車)が含まれる

タイの電気自動車(EV)市場

2020年のタイのEV登録台数(累計)は19万1,835台だった。そのうちHEV(ハイブリッド車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)が合わせて前年比21.6%増の18万6,270台、BEV(バッテリー電気自動車)が前年比103.3%増(2倍以上増加)の5,565台となった。

タイ投資委員会(BOI)による投資支援を受けて多くの企業がEVを市場に投入したことで、2020年にはEVの新規登録台数(販売台数)が急増し、特にBEVが前年比94.7%増の2,997台と大きく伸びた。

タイへのバッテリー電気自動車(BEV)の輸入は2019年に始まった。中国ASEAN自由貿易協定(ACFTA)に基づく輸入関税の免除や、価格競争力のある車両への需要が高いことから、中国が主要な輸入先となっており、2019年の中国からの輸入額はCBU(完成車)全体の75%以上を占めた。

タイのBEV市場においては、英国ブランドMGが他のブランドに圧倒的な差をつけて90%近いシェアを占めている。要因は英国というブランド力に加えて、MGが中国企業の傘下に入ったことで輸入関税が免除となり、安価な選択肢となっていることにある。MGは、2020年にBEVの2モデル(EP Wagon、ZS)を826台販売した。

BEV市場に参入する自動車メーカー

タイをEVの生産ハブにすることを目指している政府の方針や投資奨励策は、外資の呼び込みに成功している。中国の自動車メーカーGWM(グレート・ウォール・モーターズ、長城汽車)は2023年内にタイでのBEVの生産開始を計画している。この他、中国ブランドのChangan(長安汽車)、Geely(吉利汽車)、Chery Automobile(奇瑞汽車)や国内ブランドのEnergy Absolute(EA)も、近々タイのBEV市場に参入するとみられる。

現在、タイの自動車市場をリードしている日系のトヨタやホンダは、タイBEV市場においては動きをみせていないものの、BEVのラインナップの拡充を図っている。トヨタはBEVとして新たに15モデルを投入する計画で、一方、ホンダは独自のEVロードマップを発表している。
さらに、台湾の巨大コングロマリットのFoxconnとタイ石油公社(PTT)がEV生産プラットフォームの開発を目指して、合弁企業を設立した。

政府によるEV奨励策

タイ政府は、HEV、PHEV、BEVを生産する企業の投資を促進するため、2019年4月に物品税を改正した。BEVについては、タイ投資委員会(BOI)のインセンティブを申請した製造企業に対する物品税率は2020年から2022年までの期間0%とされ、その後は2%に引き上げられる。EVに対する2019年4月改正の物品税率は2025年12月31日まで有効である。

2021年5月13日のタイ政府主催の国家電気自動車政策委員会によれば、3つのフェーズから成るEV開発計画(2021~2030年)で、全自動車生産に占めるEVの割合を 2030年末までに30%にすることを主な目標としている。

タイをASEAN域内のEV生産ハブにすることを目指す取り組みの一環として、強力なサプライチェーンの構築を推進する政府は、EVの生産に加えてEV部品の製造に対しても強力な支援を行っている。
具体的には、EV電池の投資家は、法人所得税の免税に加え、タイでは入手できない原材料や製造に不可欠な材料の輸入関税の90%減額というBOIの投資優遇措置を受けることができる。

EV産業発展に向けた取り組み

充電ステーション

EV充電設備・サービスについては、国営企業*1が連携して、住宅用の充電設備や公共充電ステーションの設置に向けた先駆的な投資を行っている。一方、エネルギー省エネルギー政策・計画局(EPPO)も、EV充電ステーションへの投資を対象として、公共機関や民間企業への資金の援助を行っている。
タイ国内の充電ステーションの数は徐々に増えており、2021年9月現在、バンコクとその周辺地域を中心とする693カ所に2,285の充電器が設置されている。

*1:タイ発電公社(EGAT)、首都圏配電公社(MEA)、地方配電公社(PEA)

電池

タイをASEAN域内のEV生産ハブにすることを目指す取り組みの一環として、国家電気自動車政策委員会も、EV電池に投資しているメーカーへの支援や電池技術を保有する外国企業との提携の推進を図っている。

まとめ

タイ政府は、自国をASEAN域内における電気自動車(EV)の生産ハブとすることを目指しており、近年、関連インフラ拡充のための投資や様々な支援策を通じてEV産業の推進に力を入れている。

今後の大きな流れとしては、BEVメーカーやEV充電設備の増加、電池技術の開発などが、タイEV産業の発展に寄与する可能性がある。しかしながら、下記課題も残っていることから、投資家やデベロッパーなどは、EV産業の情報を包括的に収集し、慎重に計画を練る必要がある。

レポートのPDFをご希望される方は、下記よりダウンロードください。

<お問合せ先>
山田コンサルティンググループ(株) タイ現地法人
global-support@yamada-cg.co.jp

【メールマガジンご登録のご案内】

a419e6a0960f0a07cb640db2b55c90d6