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更新日:2025/05/19

テーマ: 03.海外ビジネス

タイのコールドチェーン物流、 コロナ禍をきっかけに高まるBtoC需要

概要

タイのコールドチェーン物流市場は、基本的には着実な成長軌道にあり、今後もその傾向は続くと予想されている。タイのコールドチェーンビジネスはBtoBが主流で、新型コロナウイルス感染症の発生前は、食品、医薬品、コンビニ、レストランの市場の拡大に伴って成長していた。感染拡大期には、ロックダウン政策によって外出が制限されたことで、コールドチェーンのBtoCビジネスに新たな需要が生まれた。コールドチェーン物流市場に関連する政策・計画の策定についての政府の取り組みは未だ初期段階だが、今後市場発展のためのパイロットプロジェクトが実施される可能性もある。コールドチェーン物流は、多額の投資や運用・管理技術などが必要なため、他の物流分野より参入が難しいとされる。今後は、技術導入が進んで、コールドチェーン物流の効率性が向上し、競争力が強化するものと期待される。

目次

タイのコールドチェーン物流の概要

・タイのコールドチェーン物流市場は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて2020年に一時的に縮小したものの、2016年以降、基本的には拡大基調を維持している。

・今後も、BtoBとBtoCの両セグメントからの需要を取り込んで、拡大していくことが見込まれる。

主なコールドチェーン物流事業者

冷蔵・冷凍保管

  • Pacific Cold Storage Co., Ltd.
  • Thai Yokorei Co., Ltd.
  • Thai Max Cold Storage Co., Ltd.

保冷輸送

  • Inter Express Logistics Co., Ltd.
  • SCG Nichirei Logistics Co., Ltd.

タイのコールドチェーン物流の概要:サプライチェーン

・コールドチェーン物流とは、サプライチェーン全体を通じて商品の品質や鮮度を維持するために、温度管理機能を備えた倉庫・輸送システムを利用する物流のこと。温度変化の影響を受けやすい農産物等の生鮮食品や医薬品の流通時に不可欠である。

・近年、利用者や消費者の間でコールドチェーン物流の配送品質に対する意識が高まっている。これを受け、事業者側では、コールドチェーン物流の管理に、トラッキングシステム*やトレースシステム*を採用することで、サービス品質を確保している。

コールドチェーン物流を活用するメリット

✓ 製品の品質・鮮度の維持および賞味期限の長期化が可能
✓ 保管時や流通時の食品ロスの低減および食品ロスによる追加コスト発生防止が可能
✓ 食品会社などは、コールドチェーン物流を活用することで、品質の高い製品を提供する事業者としてのブランドイメージ向上が図れる

タイのコールドチェーン物流の概要:市場の動向

・2016年以降、コールドチェーン物流市場の市場規模は継続して拡大していた。しかし、感染拡大によりロックダウン等が実施され、2020年、輸出に大きく依存していた同業界の市場規模は、縮小に転じた。

・一方、感染拡大は、BtoC向けのコールドチェーン物流事業にはプラスの影響をもたらした。ロックダウンにより在宅時間が増える中、特に食品関連事業者が、最終顧客に商品を直接配送するために、コールドチェーン物流を導入した。

・BtoCセグメントの需要拡大、国内輸送・輸出入の回復、コンビニやレストランの拡大等を主な要因として、コールドチェーン物流の市場規模は、2021年から2025年にかけて年平均成長率(CAGR)9%で推移すると予測されている。

タイのコールドチェーン物流市場の拡大を支える業界

・コールドチェーン物流は、主に食品、医薬品業界に支えられている。

・日常生活に欠かせない食品や医薬品の市場は、コロナ禍の影響を受けにくく、拡大している。

・国内のコンビニやレストラン等の店舗数は、コロナ禍で2020~2021年に減少しているが、2022年以降は増加する見込み。それにより、コールドチェーン物流の需要も高まると考えられる。

デューク大学グローバル・ヘルス・イノベーション・センターによると、タイでは、約2億4,300万回分の新型コロナウイルスのワクチンを調達(2022年)。このワクチンは、低温で保管する必要があることから、コールドチェーン物流の需要拡大を加速させた。

タイにおける冷蔵・冷凍保管市場の構造と主な事業者

・2020年、国内の冷蔵・冷凍保管事業者数は計157社、冷蔵・冷凍保管施設は644カ所、最も投資額が多かった地域は、バンコク、タイ中部、タイ南部である。

・コールドチェーン物流業界は、細分化が進んでいて中小企業が多い。Krungsri Research(2020)によると、冷蔵・冷凍保管市場に占める大手プレーヤーの割合は5%で、残りの95%は中小企業である。

・2020年はロックダウンの影響で、輸出入量が減少したため、冷蔵・冷凍保管施設の需要は減少傾向にあった。2021年以降は、規制が緩和され輸出入が徐々に回復していることやBtoC需要が増加していることから、再び施設に対する需要も増加する見込み。

タイにおける保冷輸送市場の構造と主な事業者

・保冷輸送事業は初期コストが高額であるため、感染症拡大前、同市場に参入する事業者は、Inter Express LogisticsやSCG Nichirei Logistics等の大手の事業者のみであった。

・トラックデータサービスセンター(2022年)によると、タイの保冷輸送事業者数は、計2,116社*で、その多くが中小事業者である。

・コロナ禍にあっても、トラック台数は増加傾向(2017~2022年のCAGRは8%)で、2022年には1万1,441台となっている。

事例紹介:MKレストラングループのサプライチェーンにおけるコールドチェーン物流

・タイでは、コンビニやレストランの店舗数の増加がコールドチェーン物流業界の成長要因の一つとなっている。

・タイの大手外食チェーンMKレストラングループのサプライチェーンにおいても、コールドチェーンが必要不可欠となっている。

タイにおけるコールドチェーン物流の支援に関連する政府の計画・プロジェクト

・現在、コールドチェーンの導入と開発に関する計画等はない。しかし今後は、コールドチェーン管理に焦点を当てた政府の計画やプロジェクトが実行され、将来的には同産業の発展を後押しすることが予想される。

関連する政府の計画・プロジェクト

政府による 政策・計画の 策定について

工業省産業振興局とカセサート大学は、コールドチェーン・マネジメントに関する研究プロジェクトを実施し、産業分野のコールドチェーン・マネジメントに関連して、政府が以下の政策や計画に取り組むことを提言した。

・適正流通規範(GDP)と適正保管規範(GSP)に関するWHOガイドラインに準拠したコールドチェーンと、コールドチェーン管理における基準の設定
・トラックシステム、トレースシステム、倉庫管理システム、輸送管理システム、バックホーリング等の技術やイノベーションの利用促進による、コールドチェーンの関連技術やアプリケーションの開発
・IoT、バーコード、RFID、センサー、GPS等、コールドチェーンのデジタル化に対応した機器・装置・ツールの開発
・コールドチェーンマネジメントに関わる人材の育成

その他 関連 プロジェクト

イースタン フルーツ コリドー (EFC)

・EFCは、タイを「世界の台所」にするというタイ政府の構想のもと、ラヨーンのスマートパーク工業団地で実施されているプロジェクトの一つである。
・需要主導型のアプローチで、全てのサプライチェーンとステークホルダーを統合することにより、戦略的にタイ食品セクターを向上させることを目的としている。当プロジェクトでは、パイロット段階でドリアンを対象としている。
・タイ石油公社(PTT)、東部経済回廊委員会事務局(EECO)、タイ工業団地公団(IEAT)は、当プロジェクト推進のためのコールドチェーンインフラ投資(ブラストフリーザー、冷凍庫)に関して、合計3億5千万バーツを出資するというMOUを締結した。

【目標】
タイ東部をフルーツの生産地として発展させる

Q コールド チェーン スタンダード

・Qコールドチェーンとは、運輸省が定めたトラック運行のためのコールドチェーン品質基準(任意)。トラック事業者は評価ガイドラインを遵守し、以下に関わるものを含む要件を満たす必要がある。

  • 輸送管理
  • 衛生管理
  • 冷蔵・冷凍トラックの標準とメンテナンス
  • 人材育成

【目標】
輸送業務の品質基準を満たせるコールドチェーンマネジメントを構築する

    出所:国家経済社会開発委員会(NESDC)、各種報道

 


本サイトではレポートの一部を抜粋して掲載しております。
PDFをダウンロードいただくと下記内容までご覧いただけます。

コールドチェーン物流産業に対するタイBOIの優遇措置

動向、課題、ビジネスチャンス

 

 

レポートの続きをご覧になりたい方は、下記よりダウンロードください。

執筆:YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
(山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

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