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2023/06/15

テーマ: 03.海外ビジネス

デジタル化が進むタイ農業機械市場

タイの農業機械市場は、広大な農地と豊富な労働人口に支えられている。近年、タイの農業機械市場では、時間・コストの節約や生産効率の向上をもたらす精密農業に向けたデジタル化、IoT化、自動化が進んでいる。
今後も、様々な要因やトレンドに後押しされ、農業機械・部品やアタッチメント、デジタルソリューション、関連サービスを含む農業機械事業には多くの成長余地とビジネスチャンスが存在する。

目次

タイの農業部門について

タイ経済における農業部門の貢献度

農業部門は、2021年のGDP全体の約8.5%を占めており、タイ経済の大きな柱の一つとなっている。過去5年間(2017~2021年)の農産物の輸出額は、年間1兆バーツ以上に上り、国全体の輸出額の約16〜18%を占めている。
タイ国内の約3分の1の世帯が農業部門に従事している。

タイの主要作物

タイの総農地面積は約1億4,900万ライ(約2,400万ヘクタール)で、国土の47%を占めている。
タイでは主に、水稲、ゴム、アブラヤシ、サトウキビ、タピオカ、トウモロコシなどが生産されており、農地は全国に点在している。

水稲
米は、タイの主要農産物である。
水稲の総栽培面積は6,900万ライで、タイ農地全体の46%を占めている。
主に東北、北部、中部地方の県で栽培されている。
稲作に使用される主な機械は、動力耕耘機、トラクター、稲刈り機。
多年生作物
タイの主な多年生作物は、ゴムとアブラヤシである。主に、南部地方で栽培されている。
果物の栽培地域は、北部・中部・東部に点在している。
多年生作物の栽培に使用される主な重機はトラクターで、整地工程に使用される。手入れや収穫などその他の作業には、小型でローテクの機械が使用される。

畑作物
タイの主要な畑作物は、トウモロコシ、サトウキビ、タピオカである。
畑作物の主な栽培地域は、東北・中部地方。
畑作の作業の多くは、人力で行われている。Fitch Solutionsによると、サトウキビの収穫において、機械による収穫量は30%に過ぎない。
しかし近年は、人件費と比較して機械が安価であることから、機械の導入が進んでいる。
農業機械メーカーによる低金利の支援策も奏功している。
整地用のトラクターやコンバインなどの重機が主に使用されている。

タイ農家の実情

タイでは農業従事者の高齢化や若者の減少による、将来的な労働力不足が懸念されている。
農業従事者の教育水準やデジタルリテラシーが低いことから、農業へのデジタル技術の導入は一部でしか行われていない。

農家の高齢化、若者減少による労働力不足
タイでは、2020年末時点で、60歳以上の農業事業者が、国内の農業労働力の約2割を占めている。
15〜39歳の農業従事者は、より良い報酬を求め非農業部門に転向する傾向があり、若者の農業人口は減少している。
この傾向は今後も強まり、将来的な農業分野での労働力不足が懸念されている。
一方、将来的な労働力不足に対応するため、今後、農業機械・機器市場は成長することが見込まれる。

教育水準やデジタルリテラシーの低さ
農業センサス(2013年)によると、タイの農家の約78%は最高でも初等教育までしか受けておらず、教育水準の低さが問題となっている。
しかし、中等教育以上を修了している農業従事者の割合は2003年の12.1%から2013年には21.5%に増加している。未だ割合は少ないものの、傾向としては中高等教育を受ける人は増えている。
一方、デジタルリテラシーの低さから、農業分野におけるデジタル技術の導入は進んでいない。
農業協同組合省(MOAC)が発表した調査によると、調査対象の農家の約40%がデジタルアプリケーションを使用しているが、その主な目的は天候、資材や農産物の価格、農業指導などの情報の検索であった。精密農業のために、ドローンやセンサーなどのデジタル技術を利用しているのはわずかに6%となっている。

タイの農業従事者は土地の狭さや資金難などの問題を抱えており、これが農業機械市場の成長を阻む大きな要因となっている。
多くの農家は、新しく高価な機械の購入よりも、人を雇ったり中古の機会をレンタルしたり購入したりする傾向にある。

土地の所有
タイの農業従事者の多くは、小さな土地で農業を営む小作人である。1世帯の平均農地面積は14〜15ライ(2.2〜2.4ヘクタール)である。また、所有する土地の規模は縮小傾向にある。
多くは土地を所有せず、土地を借りて農業を営んでいるため、農業機械への投資は行っていない。
*国有地を含む他人の土地(保存林、劣化林など)で、所有権無しに無償で農業を行う場合もある。

資金難
タイの農家は平均年収の2倍近という大きな負債を抱えている。これは、以下の要因による。
農業世帯の3分の2は単一栽培を行っているか、または年に1回しか作物を栽培しないため、損失リスクが大きい
肥料、農薬、種子を含む投入資材のコストが上昇している
予測不可能な天候の影響が大きい
農産物の付加価値が低い
国連タイ事務局によると、農家の約30%が一人当たり平均年間農業所得を上回る負債を、10%がその3倍以上の負債を抱えている。
このため、多くの農家には農業機械を導入する経済的余裕がない。

タイの農業機械市場

タイの農業機械の市場規模

Kre Research社によると、タイの農業機械の市場規模は、2021年に約830億バーツと推計される。
タイ市場で販売されている農業機械の70〜80%は国産品で、20〜30%は輸入品である。主な輸入先は日本と中国で、その合計は輸入額全体の60%以上を占めている。
最も輸入金額が大きいのはトラクターで、農業機械・器具の輸入総額の60%以上を占めている。

タイの農業機械市場の動向 - 主要機械の保有状況

農業普及局(DOAE)の調査によると、トラクターを所有している農家は全体の約15〜18%程度。殆どの農家は、耕作を業者に依頼するか、手押し耕うん機やロータリー耕うん機など他の機械を使用している。
タイでは、小型トラクターが市場を席巻している。タイでは、小規模農業が一般的であるため、小型で費用対効果の高い機械を所有する傾向にある。

タイ農家の97%以上は耕作機械を所有しておらず、そのほとんどが人力、機械のレンタル、外部業者への作業委託に頼っている。
農業普及局(DOAE)の調査によると、高価でなく別の作業(施肥)にも使える播種機は、10%以上の世帯が所有している。
作付面積が広い農家でも、移植機を所有している農家は少ない。
トウモロコシ植付機やサトウキビ植付機などの大型機械は、最近所有率が上昇している。

タイの農家の収穫機の所有率は、非常に低い。稲・キャッサバの収穫機を所有している農家およびサトウキビ・トウモロコシの収穫機を所有している農家はともに全体の1%未満に過ぎない。
半数以上の農家は、収穫機械をレンタルするか、収穫作業の外部委託をしている。また、小規模農家や傾斜地に農地を所有する農家は、人力で収穫することが一般的。
収穫機の所有率は未だ低いものの、農業残渣のエネルギー利用の需要の高まりやゼロ・バーニング(野焼き禁止)政策を背景に、近年は所有する傾向が高まっている。

タイのトラクター市場

現在タイで流通しているトラクターは60万台以上。
2018~2021年の新車登録台数は年間約5万3,000~6万1,000台で、タイのトラクター市場は飽和状態にある。その内の80%超が農業用、20%以下が非農業用。
2021年の新車のトラクター需要は、新型コロナウイルス感染症による失業者の農業回帰、好天による農作物生産量増加、農産物輸出の好調などを背景に13%増加し、6万台を超えた。
タイのトラクター市場では、6ブランドが市場の90%以上を支配している。Kubotaの2021年のシェアは約78%。その他の上位ブランドは、Yanmar、John Deere、Ford、コマツ、New Hollandである。

競合他社の状況

主要プレーヤー

タイの農業機械市場は、外国企業による寡占状態で、競争が激しい。Siam Kubotaは、市場の約80%のシェアを占め、Yanmar S.P.がこれに続く。その他、John Deere、New Holland、イセキなどのブランドが参入している。
現地の中小メーカーは、主に小型機械やローテクの収穫機、農機部品などを製造している。また、これまでの経験を生かし、タイの農家の特殊なニーズに合わせた農業機械の開発にも取り組んでいる。

主要プレーヤーの主な戦略

販売チャネルの拡大、特に高価格帯の機械の試運転などが可能なディーラーのネットワーク拡大は、農業機械の販売戦略上、極めて重要である。
また、割賦販売も販売促進のための重要な手段である。大手農機メーカーは、自社の金融会社を通じて、あるいは他の金融機関との提携によって、支払期間を柔軟に設定し、低金利で農業機械を農家に販売している。

グローバル企業は、業界のトレンドとなっている精密農業、環境に配慮した農業などへの対応のため、革新的技術を備えた機械の開発に注力している。
タイ市場向けとしては、自律走行型トラクターなどのハイテク技術が紹介されている他、タイ農家にとって利用しやすく、かつ現地ニーズを満たす農業機械が展開されている。

農業機械に関連するタイ政府の施策

農業分野における政策フレームワーク

農業は、政府が掲げるタイランド4.0政策やBCG経済モデルにおけるターゲット産業の一つである。タイは、農業分野においても、スマート農業や精密農業など高度な技術の活用を推進し、競争力を強化することを目指している。
世界のトレンドに合わせて、安全で環境に配慮した農業や、農産物・食品の高品質化、高付加価値化を進めている。
また、メーカーと農家が協働する大規模農業も、生産性向上のための農業政策の中心となっている。

農業機械・アグリテックの振興策

農業水準の向上および「スマート」農家の育成のために農業の機械化・デジタル技術の推進を図るタイ政府の方針に基づき、投資委員会(BOI)が、農業機械への投資促進のための優遇措置を定めている。
農業機械や農業技術への投資に関しては、技術レベルに応じて3年から8年の税制優遇措置を受けることが可能。

デジタル経済振興機関(DEPA)は、 農業分野での技術導入を促進するための重要な施策として補助金を提供している。
この補助金は、技術開発者と技術利用者の双方に提供される。

タイ農業機械市場のトレンドと可能性

様々な要因やトレンドに後押しされ、 機械・部品やアタッチメント、デジタルソリューション、関連サービスなどを含む農業機械事業には、多くの成長余地とビジネスチャンスが存在する。

まとめ

タイの農業機械市場は、労働力不足、農産物需要の増加、農家とメーカー双方に対する政府の支援政策などの様々な要因が追い風となって、今後も成長することが予想される。さらに、タイでは農業の機械化があまり進んでおらず、農業機械の保有率も低いことから、市場成長の余地があると考えられる。

近年タイの農業機械市場では、時間・コストの節約や生産効率の向上をもたらす精密農業に向けたデジタル化、IoT化、自動化が進んでいる。

一方、市場拡大に向けた課題もある。例えば、タイ農家の所得やデジタルリテラシーは未だに低く、土地を所有していない農業従事者も多い。また、近年の機械やイノベーションの活用は、新世代や大規模農家、契約栽培農家など、一部に集中している。

タイの農業機械業市場においては、特にトラクター、移植機、収穫機の競争が激しく、このことが大きな参入障壁となっている。しかし、機械部品やアタッチメントなどのOEM、デジタルソリューションなどには、潜在機会がある。

タイ農家の購買力や技術対応力を見極めた上で、適切な農業機械を提供することが重要な要因となる。

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執筆:YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
(山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

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