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海外ビジネス情報

2023/05/24

テーマ: 03.海外ビジネス

世界最大規模の自動車展示会「上海モーターショー2023」現地視察レポート

世界最大規模の自動車展示会である「第20回 上海国際汽車工業展覧会(以下、上海モーターショー)」が、4月18~27日までの10日間、上海市国家会展中心にて開催され、来場者数は90万人以上にのぼりました。
東京ドーム8個分にあたる総展示面積36万平方メートル超の会場に、自動車関連企業1,000 社以上が出展。車両展示台数は1,413 台で、うち、新エネルギー車(以下、NEV)が513台(中国ブランド186台)、世界初公開車が93台(中国ブランド65台)となり、中国メーカーを中心にNEV一色となりました。
我々も21日に、上海モーターショーの会場へ実際に足を運びましたので、写真と共に会場の様子や所感を書き記します。

目次

日系各社は中国市場での巻き返しをアピール

NEVシフトが急速に進む中国自動車市場において、対応が遅れ、苦戦を強いられている日本勢も、相次いで新型NEVを初ローンチし、挽回に向けて動き出す姿勢が鮮明となりました。

トヨタ

「bZ」シリーズの新型コンセプトモデル2車種を世界初公開し、2024年に中国市場での発売を予定。18日の記者発表会に登壇したトヨタの中嶋裕樹副社長は、「今後も中国専用のEVの開発を現地で強化していく」と述べており、2025年までに「bZ」シリーズ7車種を含むEV15車種を揃える計画を推進しています。

bZスポーツクロスオーバー

・若者向けモデル
・「トヨタ」と「豊田汽車研究開発センター(以下、TMEC)」、トヨタと比亜迪(以下、BYD)の合弁会社「BYD豊田電動車科技」及びトヨタと中国第一汽車(FAW)の合弁会社「一汽トヨタ」の4社が共同で開発

bZフレックススペース

・家族向けモデル
・「トヨタ」と「TMEC」と「広州汽車集団(以下、GAC)」及びトヨタとGACの合弁会社「広汽トヨタ」の4社が共同で開発

ホンダ

中国専用EVブランド「e:N」シリーズ第2弾のプロトタイプと第3弾のコンセプトモデル、計3車種を世界初公開し、2024年内に発売を予定。更に、スポーツカー要素を取り入れた第4弾の「e:N GT Concept」も紹介され、2025年以降に発売を予定していることが発表されました。

ホンダは、これまで「2040年に新車販売の全てをEVにする」としていた世界共通目標を、中国で5年前倒しの「2035年」に、「2030年以降に中国で投入するモデルの全てをEVにする」としていた目標を、3年前倒しの「2027年以降」にすることも明らかにしました。合弁会社の「広汽ホンダ」と「東風ホンダ」を通じて、中国で2027年までに10車種のEVを投入し、EV化を加速させる計画です。

第2弾 e:NP2 / e:NS2

・SUVの特徴である機能性の高さとセダンの車体のデザインを融合させたのが特徴
・ホンダが提案する従来の枠に囚われないEVの新たな価値観を打ち出した
※写真は「e:NS2」

第3弾 e:N SUV 序

・第2弾までのモデルとは異なる車台を採用し、最新の安全運転支援システムや人工知能(AI)を搭載したコネクト技術により、室内全体で智能化を感じられる空間を実現

日産

中国市場向けに開発されたEVコンセプトモデル「Arizon」(発売時期未定)を世界発公開、オープンカータイプのEVコンセプトカー「Max-Out」を中国初公開、更に、中国にて「e-POWERエクストレイル(SUV)」のHVを発売することも発表し、18日より予約販売が開始されました。
日産は、2030年までに世界で19車種を含むEV27車種を投入することを発表しており、それ以外にも、「ソフトウエア定義車両(SDV)」の開発に力を入れる方針を示しています。

Arizon

・「CMF-EVプラットフォーム」を採用した低重心な車体に自動調光のサンルーフやセンターピラーレス構造を採用して開放感を演出したことが特徴
・車載システム「エポロ」を搭載し、時間や天気、地図などの情報を人間のように対話しながら乗員に提供

中国メーカーを中心に多種多彩なラインナップ

人気のSUVだけではなく、低価格帯の小型EVから高価格帯のスポーツカーまで、あらゆる消費者のニーズを意識した発表が見られ、中国メーカーを中心に、NEVの性能や価格の多様化が進んでいます。

BYD(比亜迪)

世界的NEVメーカーへと変貌を遂げているBYDは、「BYDブランド」と高級車ブランド「仰望」、BYDとメルセデス・ベンツとの合弁ブランド「DENZA(騰勢)」の3つのブースを出展し、市販化モデルを中心に6つの新車種を発表しました。特に注目を集めていたのは、BYD初の高級車ブランド「仰望」の新車種であるオフロードSUV「U8」とEVスーパーカー「U9」。これまで得意としてきた低・中価格帯以外に、高価格帯まで幅広い層に対応したラインナップを揃えることで、中国をはじめ、世界のNEV市場で存在感を更に高め、強固な地位を確立しようとしています。

仰望 U8:高価格帯

・販売価格は109万8,000元(約2,140万円/1元=19.5円)

※写真出所:买车网
https://m.maiche.com/news/detail/2954676_all.html

仰望 U9:高価格帯

・発売時期・販売価格は未公表

※写真出所:买车网

https://m.maiche.com/news/detail/2954676_all.html

Seagull(海鴎):低価格帯

・販売価格は7万8,800~9万5,800元(約153万~187万円/1元=19.5円)

※写真出所:买车网

https://m.maiche.com/news/detail/2946091.html

NIO(蔚来)

新興NEVメーカーのNIOは、新型「ES6」(5月下旬販売開始)、2023年型「ET7」など、市販化モデルを中心に6つの新車種を発表しました。
車両の展示以外にも、ライフスタイルブランド「NIO Life」のコーナーを設置し、車両製造の過程で生じた端材を再利用して作られた、衣料品や鞄、家具・インテリア雑貨等を販売するなど、既存のカーオーナーや潜在顧客との対話・関係構築を意識したブースとなっており、大勢の人々で賑わっていました。

その他中国メーカー

広州汽車の高級ミニバン「伝祺E9」

・販売価格は33万~39万元(約643万~761万円/1元=19.5円)

第一汽車の高級セダン「紅旗L5」

・販売価格は明らかとなっていないが、1億円以上と言われている

 

※写真出所:买车网

https://m.maiche.com/news/detail/2947569_2.html

合衆新能源のスポーツカー「哪吒GT」

・販売価格は17万8,800~22万6,800元(約348万~443万円/1元=19.5円)

※写真出所:买车网

https://m.maiche.com/news/detail/2946130.html

小鵬の空飛ぶ車(eVTOL:電動垂直離着陸機)「旅航者X2」

・小鵬傘下の「小鵬匯天」にて開発
・2024年には量産開始が予定されており、販売価格は100万元(約1950万円/1元=19.5円)以下になると言われている

存在感増す自動車部品メーカーやIT関連企業

今回の上海モーターショーでは、自動車メーカー以外にも、多くの自動車部品メーカーやIT関連企業が出展・発表を行いました。世界の自動車業界で「CASE」が大きな潮流となる中、これまで自動車メーカーがメインだった中国の大型モーターショーにおいて、自動車部品メーカーやIT関連企業が存在感を高めています。

CATL(寧徳時代)

電池大手のCATLは、革新的な電池技術「凝聚態電池」を発表。これは、リチウムイオン電池の一種で、同じ重さで従来の約2倍ものエネルギーを蓄えることができ、高い性能と安全性を両立させています。2023年内にも量産可能で、EVや電動航空機での搭載を予定しています。加えて、2025年までにコア事業で、2035年までにバリューチェーンで、カーボンニュートラルを実現するという、リチウム電池産業において最大規模のカーボンニュートラル戦略も発表しています。

CATLが展開する電池交換ステーション「EVOGO」の実演風景

その他大手メーカー

企業名 概要
滴滴出行
(配車サービス大手)
滴滴出行傘下の「滴滴沃芽科技」にて開発された自動運転タクシーのコンセプトカー「DiDi Neuron」を披露し、2025年の量産化を目指す方針を発表
百度
(IT大手)
運転支援システムの開発で中国半導体企業と組むと発表し、2023年後半の実用化を目指す
華為技術
(通信機器大手)
高精度地図が不要になる最新の自動運転システム「HUAWEI ADS 2.0」を発表し、今後10車種以上に搭載予定

中国メーカーの勢いが露呈した上海モーターショー、中国・世界における日本企業の戦略再構築が求められる

吉利汽車ブースでのパフォーマンス風景

我々も21日に上海モーターショーの会場を訪れ、各ブースを見て回りましたが、中国車を実際に間近で見ると、NEVの種類の多さや洗練された魅力的なデザイン、コストパフォーマンスの高さに驚き、技術的に細かい部分までは比較できていないものの、日本車・欧米車と同等、ないしはそれ以上に優れている中国車もあるのではないかと感じるほどでした。

また、集客プロモーションという観点でも、中国メーカーは、日系・欧米系メーカー以上に力を入れていたイメージで、例えば、吉利汽車のブースでは、歌のパフォーマンスやDJイベントが行われていたり、前述したNIOのブースでは、車両以外の展示を行うなど、注目を集めるための工夫が凝らされていました。そのためなのか、ブースの混雑状況も、中国メーカーと日系・欧米系メーカーを比較すると、一目瞭然となっていました。

このように、NEVが主役となった今回の上海モーターショーにおいて、中国メーカーの勢いと同時に、日系・欧米系メーカーのプレゼンスの低下をひしひしと感じることができましたし、会場の一般客に加えて、メディアやインフルエンサーによるライブ配信を通じて、大勢の消費者にそれを印象付ける結果となったのではないかと思います。何より、日本や欧米から出張で来ていた業界関連者は、大きな危機感を抱いたのではないでしょうか。

中国では、2022年末にNEV普及を推し進めた補助金政策が終了し、中国メーカーが国外での販路拡大を見据え、NEV化が進展する欧州や日本の主戦場であるASEANの自動車市場へ本格的に参入をしている状況です。このままいけば、今後、中国市場だけではなく、世界全体で日系メーカーのシェアが低下し続けてしまう恐れがあり、日本の自動車メーカー及び部品メーカーには、中国市場の強化と共に、世界全体での戦略再構築が求められています。

 

 

執筆:上海現地法人 山田商務諮詢(上海)有限公司
(山田コンサルティンググループ株式会社 中国現地法人)

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