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更新日:2025/07/17
テーマ: 03.海外ビジネス
カーボンニュートラル実現に向けたタイのエネルギー転換
タイでは温室効果ガス排出量の70%がエネルギー使用に起因している。このため、タイの官民セクターは連携し、カーボンニュートラルの達成に不可欠なエネルギーの転換に注力している。
本レポートでは、再生可能エネルギー、省エネルギー技術、電気自動車、エネルギー貯蔵システム、水素といった将来性のあるエネルギーソリューションについて概説している。これらのソリューションはそれぞれ異なる開発段階にあり、多様なビジネスチャンスを生み出している。
外国人投資家がタイで事業を展開する際には、有利な政策環境が整備されている一方で、競争激化、消費者が製品やサービスに対して抱く懸念、市場の動向といったさまざまな課題を認識することが重要である。また、顧客基盤の構築、既存ネットワークへの参入、市場情報や規制要件の理解には、信頼できるパートナーとの提携も視野に入れる必要がある。
目次
タイのカーボンニュートラルの現状
温室効果ガスの排出状況
タイの温室効果ガスの70%はエネルギー使用によって排出されており、 主に発電、輸送、製造活動における化石燃料の燃焼から発生している。

カーボンニュートラルに向けたタイの取り組み
2050年のカーボンニュートラル達成に向け、タイ政府はエネルギーセクターでのCO₂排出削減に注力している。

有望なエネルギー技術に関する国家目標および施策
政府は、再生可能エネルギーの活用拡大、省エネルギー技術の向上、電気自動車(EV)とエコシステムおよびエネルギー貯蔵システムの推進、水素技術の開発などを通じ、排出量削減に向けた多様な対策を実施している。

ビジネスセクターにおける炭素排出削減の取り組み
ビジネスセクターに対しては、規制、支援政策、サプライヤーとの協力を通じて、炭素排出量を削減するための措置を講じることが奨励されている。
以下の通り、大企業と中小企業はそれぞれ異なるアプローチをとっている。

有望なエネルギー技術
再生可能エネルギー
業界の概況

重要な展望と動向
再生可能エネルギー市場は、2037年までに約35 GWの容量が追加されることにより急速な成長を遂げる見込みである。
将来的には太陽光発電と風力発電が再生可能エネルギー市場の大半を占めると予想される。
今後10年間における再生可能エネルギーへの大規模投資
- カーボンニュートラルの達成に向けた炭素排出量削減に最も効果的な戦略は、再生可能エネルギーの導入である。特に発電セクターでは、石炭や天然ガスに代わる新たな発電源として、再生可能エネルギーを優先的に利用することが求められる。
- 各再生可能エネルギーの目標は、技術の進歩、関連コスト、市場動向など、さまざまな要因に基づいて定期的に見直されている。
- 電力開発計画(PDP)2024(草案)では、2037年までに再生可能エネルギーの割合をタイの発電量全体の50%超に引き上げることを目指している。この目標を達成するには、新規の再生可能エネルギー発電プロジェクトやエネルギー貯蔵システムへの大規模な投資が不可欠である。
- 太陽光発電と風力発電は、設置や設備の費用が低下傾向にあることや燃料費が不要であるといった利点から、新たな再生可能エネルギー発電容量の主要な構成要素になると予測されている。
- エネルギー貯蔵システム、特にバッテリーエネルギー貯蔵システム (BESS)は、電力網内での再生可能エネルギーの利用拡大において重要視されている。政府は2022年に公共調達を目的とした太陽光発電プロジェクトでBESSの導入を開始した。さらに、今後数十年間で、発電容量を10 GW追加するという野心的な目標を設定している。

再生可能エネルギー業界では、新規参入者の増加や既存事業者の多角化により、競争が激化している。
外国投資も増加しており、特に電力購入契約(PPA)モデルの成長が太陽光発電セグメントの競争を加速させている。
国内外企業の市場シェア争いで競争が激化
- 再生可能エネルギー業界における競争は、新規参入者の増加や既存事業者の事業多角化により、激化している。
- 業界は、GULF、BGRIM、ACE、EGCO、RATCHといった大手によって支配されている。これらの大手事業者は、技術力と資本力を活用して政府の入札プロジェクトを獲得し、さまざまな種類の再生可能エネルギーに事業を多角化している。
- 再生可能エネルギー業界では、特に国内パートナーとの合弁事業を通じた外国からの投資が増加している。
- 最も競争が激しいセグメントは太陽光発電である。太陽光発電分野では、新たに登場した民間部門向けPPAモデルにより、競争がさまざまな面で一層加速している。
-
- 大手事業者は民間部門向けPPA モデルを活用し、公共事業プロジェクトに加えて民間顧客向けの事業を展開することで顧客基盤を拡大している。
- エンジニアリング・調達・建設(EPC)サービスを提供する事業者は、建設サービスから太陽光発電のPPAモデルへと事業モデルを拡大している。

太陽光発電は、用途、プロジェクトの種類、投資形態の多様化に伴って、普及が進んでいる。
タイにおける普及傾向
すべての用途において普及が拡大
- 地上設置型太陽光発電は大幅に普及が進んでいる。主な推進要因は公共電力調達政策に基づく固定価格買取制度(FIT)である。
- 屋根設置型太陽光発電は、電力コストの上昇と炭素排出削減の目標が推進要因となり、住宅、商業、産業などすべてのセクターで普及が進んでいる。
- 浮体式太陽光発電は、技術の進歩や貯水池および水力ダムの効率化における注目トレンドとして浮上している。
- さらに、電力の安定性向上および電力供給の変動リスク軽減を目的とした太陽光発電と蓄電システムを組み合わせたシステムへの関心が高まっている。このトレンドは、特に公共部門向け電力購入契約(PPA)プロジェクトにおいて顕著である。
自己資金調達モデルと民間部門向けPPAモデルの増加
- 近年、需要が高まっている投資モデルは、自己資金調達モデルと民間部門向けPPAモデルである。
- 自己資金調達モデルは、税制優遇の恩恵を受けている住宅、ビル、一部の製造業者向けの小規模太陽光発電システムに主に適用されている。
- 民間部門向けPPAモデルは、初期投資が不要であることから、十分な資本がなく、メンテナンス負担を回避したい製造業者にメリットがある。

タイにおいて、太陽光発電ほど急速ではないものの、風力発電が大きく成長している。
現時点では十分に活用されていない風力発電の今後の成長可能性は極めて高い。
タイの風力発電の動向
陸上風力発電所の拡大
- タイの風力発電は過去10年間で著しい成長を遂げ、2014年の224 MWから2023 年には4 GWにまで増加した。
- 現在、タイの風力発電プロジェクトはすべて陸上風力発電所である。風力発電所プロジェクトの大部分は北東部地域内に集中しており、同地域の既存施設の容量は国内全体の80%超を占めている。
- 近年、新たな風力発電所の建設が加速しているが、 風力発電技術のコスト低下と政府の有利な電力購入政策を背景に、 さらなる機会拡大が期待される。
今後成長が見込まれる風力発電の未開拓分野
- 電力開発計画(PDP)2024(草案)によると、政府は風力発電の総設置容量を9.4 GWとすることを目標としており、2025~2037年の間に5 GW以上の容量の施設が建設される予定。
- これとは別に、低風速に適応した最新の風力タービンを導入すれば、タイには13〜17 GWの発電潜在力があるとの研究報告がある。
- 一方で、風力発電技術のコストが低下しているという利点がある反面、地理的制約、初期コストの高さ、低風速が投資家にとっての懸念材料となっている。

洋上風力エネルギーの可能性
- タイ湾は洋上風力発電の最有力候補地であり、国家資源環境政策計画局(ONEP)の調査では、約7 GWの潜在力があると推定されている。
- 南部地域に広がる長い海岸線は、洋上および沿岸近くのプロジェクトに大きな機会を提供する。
バイオマスエネルギーについては、発電と産業用熱利用の両分野で拡大の余地がある一方、原料に関する課題が依然として残っている。
タイのバイオマスエネルギーの動向
緩やかに成長するバイオマス発電
- タイのバイオマス発電業界は2015年から2023年にかけて年平均成長率4%で緩やかに成長した。主な要因としては以下があげられる。
農業残渣が豊富なこと
燃料供給のアクセス向上、公共電力調達の促進、投資インセンティブの提供を目的としたさまざまな政府の取り組み
2023年時点で、バイオマス発電は国内電力網に3 GW以上を供給しており、政府は2025年から2037年の間にバイオマス発電から追加で1 GWの発電能力を確保する計画である。
大手企業が市場を寡占
- バイオマス発電業界は、原料確保の競争が激しく、設備投資の負担が大きいため、参入障壁が高い。そのため、業界は大手企業による寡占状態にある。
主要なバイオマス発電事業者には、生産過程で多くの残渣を生み出す大手製糖工場(Mitr PholグループやBuriram Sugarグループなど)や燃料供給業者との強力なネットワークを持つ独立系事業者(ACE、TPCパワー、NPSなど)が含まれる。
バイオマス発電の成長を阻害する要因
- 農業残渣が豊富に入手可能であることが、バイオマス発電の大きな成長機会を提供する一方、物流コストの高さや農業残滓の保管の難しさが、投資に対する主要な阻害要因となっている。

バイオマスの熱利用は大幅拡大の見込み
- 産業用熱利用には、石炭や天然ガスなどの化石燃料が使用されているが、セメント、セラミックス、ガラス、食品加工、製紙などのエネルギー集約型産業では、化石燃料をバイオマスに置き換える動きが加速している。
- 代替エネルギー開発計画(AEDP 2024)によると、タイ政府は産業用熱利用におけるバイオマス使用量を、2023年末時点の5,300 ktoeから2037年には23,000 ktoeに増加させることを目指している。
- 取引先からの要請によるサプライチェーン内での炭素排出削減の圧力により、産業用熱利用におけるバイオマスの採用が増加すると予測される。
- この動きは、関連する機械、システム、サービスの需要を押し上げる可能性がある。
政府の取り組み
タイは、再生可能エネルギー事業に対する優遇政策やインセンティブを通じて、継続的に国内外の投資を引き寄せ、再生可能エネルギーの導入を促進している。

ビジネスチャンスと課題
太陽光、風力、バイオマスエネルギーのプロジェクトは成長が見込まれる分野であり、今後大きなビジネスチャンスが見込まれる。こうした再生可能エネルギーシステムの開発、設置、保守の分野において需要が高まるものと思われる。
しかし、各エネルギータイプには、それぞれ固有の課題があり、それらを十分に検討し対策を講じる必要がある。

以降のページでは、下記目次の内容を掲載しております。
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省エネルギー技術
業界の概況
主要な開発と動向
政府の取り組み
ビジネスチャンスと課題
電気自動車(EV)とエコシステム
業界の概況
主要な開発と動向
政府の取り組み
ビジネスチャンスと課題
エネルギー貯蔵システム
業界の概況
主要な開発と動向
政府の取り組み
ビジネスチャンスと課題
水素
業界の概況
主要な開発と動向
政府の取り組み
ビジネスチャンスと課題
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執筆:YAMADA Consulting & Spire(Thailand) Co., Ltd.
(山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)
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