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更新日:2026/08/27

テーマ: 03.海外ビジネス

ASEAN主要6カ国の貿易と物流
~構造的動向、主要なインフラ構想、および戦略的意義~

エグゼクティブサマリ

ASEAN主要6カ国は、力強い経済成長と拡大する国際貿易に牽引され、ますます魅力的な物流市場として台頭している。2024年の同地域の国際貿易額は約3.7兆米ドルに達し、世界貿易の約8%を占めるに至った。

外国直接投資(FDI)の加速に伴い、貿易の流れはさらに拡大すると予想されており、同地域は電子機器、半導体、EV製造におけるグローバルサプライチェーンの一翼を担う位置づけになりつつある。

各国の輸送特性

ASEAN主要6カ国はそれぞれに輸送特性が異なり、物流オペレーションに大きな影響を与えている。

  • シンガポールは高所得国であり、最も先進的な物流インフラを備え、地域の物流ハブとしての地位を確立している。
  • マレーシアは、輸送手段のバランスが取れ、国境を越えた広域的な交通ネットワークを有する一方、マレー半島部とボルネオ島部に分断されていることが、オペレーション上の課題となっている。
  • タイは、4カ国と国境を接する地域の要衝に位置し、主要な自動車製造拠点として機能する一方、道路渋滞が国内貨物輸送の効率化を妨げている。
  • ベトナムは道路輸送への依存度が高く、南北間の貨物輸送の構造的な不均衡が物流コストを押し上げている。しかし、急速に拡大する製造業への投資は、大きな市場機会をもたらしている。
  • インドネシアは、人口2億8,400万人および国土面積190万平方キロメートルを有するが、群島という地理的条件により、物流コストは高く、海上輸送への大幅な依存を余儀なくされている。
  • フィリピンは、インドネシアと同様に島嶼が分散する地理的条件にあり、市場規模も相対的に小さいことから、国境をまたぐ交通・物流網の構築に制約がある。

こうした状況を背景に、複数の重要なトレンドが域内物流の構造に変化をもたらしている。

  • サプライチェーンが重要な機能を担う産業への投資集中:半導体、エレクトロニクス、EVといったサプライチェーンが重要な機能を担う産業への海外投資が大規模に流入し、専門性が高く、複雑化した物流体制への需要を押し上げている。
  • Eコマースの拡大:プラットフォーム事業者や中国企業との競争が激化する中、Eコマース市場は急速に拡大しており、利益率の低下とサービス要件の見直しが進んでいる。
  • 貿易枠組みの整備:ASEANの貿易協定により、国境を越えるコストが大幅に削減され、域内貿易が促進されているが、加盟国間の導入状況には依然ばらつきがある。
  • インフラ整備:各国は増大する貿易量に対応すべく港湾能力の拡充を優先課題に掲げており、輸送コストの削減と効率化を図るため、マルチモーダル輸送や鉄道網の整備にも注目が集まっている。

世界および域内の物流事業者は、こうした構造的な成長機会を取り込むために様々な戦略を展開している。既に事業基盤を確立しているグローバル事業者は、域内で急速に高まる投資需要を取り込むべく、倉庫・輸送能力などの物理的インフラの拡充に多額の投資を行っている。また、急速に拡大するEコマース需要、とりわけ越境取引への対応力強化に向けては、M&Aや現地事業者との提携も活用しながら、デジタル化と業務効率化を加速させている。さらに、コールドチェーンをはじめとする高成長分野でのシェア獲得に向けて、合弁事業や資本参画を通じた市場特化を進める動きもみられる。持続可能性も競争上の差別化要因として重要性を増しており、事業者は効率性と環境面での責任を重視する顧客ニーズの高まりに対応するため、AI、自動化、グリーン物流への投資を加速させている。

目次

I. ASEAN主要6カ国のマクロ物流環境

経済・物流指標

下表は、物流事業者に関連するASEAN主要6カ国の経済・物流指標を整理したものである。
シンガポールは、物流上の摩擦が極めて少なく、高効率な物流ハブとして際立っている。インドネシアは、市場規模の大きさで圧倒的な存在感を示している。マレーシア、タイ、ベトナムは、良好なインフラと隣国との陸上での接続性を備えている。一方、フィリピンには陸上での国境がなく、6カ国の中で最も貿易総額が小さい。

貿易パターンおよび主要貿易相手国(輸出)

6カ国に共通する主要輸出品目は、電子機器類である。その他の国別主要品目は、石油製品(シンガポール・マレーシア)、 自動車(タイ・インドネシア)、 金属(インドネシア・フィリピン)、衣料品・家具(ベトナム)である。
主要な輸出先は、一貫して米国・中国・日本が上位を占めている。

貿易パターンおよび主要貿易相手国(輸入)

6カ国に共通する主要輸入品目は、電子機器類、機械類、燃料類である。その他の国別主要品目は、プラスチック類(マレーシア・ベトナム・インドネシア・フィリピン)、鉄鋼(タイ・ベトナム)である。
主要な輸入元は、中国・日本・米国・台湾である。

II. ASEAN主要6カ国の物流・貨物輸送の現状

ASEAN諸国では、物流パフォーマンス指数(LPI)、物流コスト、国土条件に大きな差があるため、域内に進出する事業者には市場ごとに最適化した事業モデルの構築が求められる。

ASEAN主要6カ国における、国内貨物輸送の主な輸送手段は道路輸送であり、特にベトナムではその依存度が高い。
一方、国際貨物輸送における輸送手段の構成は、各国の貿易構成によって異なる。

  • ASEAN主要6カ国における国内貨物輸送は、主に道路輸送に依存している。ベトナムは輸送量が最も多く、道路への依存度が特に高い。
  • タイの物流インフラは比較的成熟しており、道路輸送と水上輸送がバランスよく利用されている。一方、鉄道貨物輸送は整備が十分に進んでおらず、依然として限定的である。
  • インドネシアでは、水上輸送と鉄道輸送の割合が大きい。鉄道輸送量も一定規模に達している。
  • フィリピンでは、現時点では鉄道貨物輸送はごくわずかだが、物流コストを削減するための鉄道整備計画が進められている。

  • シンガポールは、世界的な航空貨物中継ハブとしての地位を確立しており、航空輸送が優位である(貿易額の50%超)。再輸出貿易であることに加え、半導体、電子部品、および生物医学製品の主要な製造国でもある。海上輸送が貿易額に占める割合は小さいものの、世界有数のコンテナ積み替えハブとして毎年数百万TEUを取り扱っている。主な取扱品目は、製造消費財、石油・石油化学製品、自動車部品である。
  • インドネシアは総貿易額の90%超を海上輸送に頼っている。これは同国の主要輸出品が、バルク貨物(石炭、ニッケル、パーム油など)であり、輸送において時間よりもコスト効率が重視されるためである。
  • 一方、フィリピンはインドネシアと同様の島嶼国であるにもかかわらず、航空貨物の割合が34%と高い。これは米国、日本、欧州市場向けの輸出において、高付加価値の電子機器が大きな割合を占めているためである。
  • マレーシア、タイ、ベトナムは、海上・航空輸送のバランスが比較的よい。ASEAN域内および中国との貿易ルートを結ぶ「陸の架け橋」としての立地のよさから陸上輸送が貿易額の10〜13%を占め、これを補完している。

出所:ASEAN事務局、シンガポール統計局、タイ運輸省、ベトナム国家統計局、BPS – インドネシア統計局、フィリピン統計局

宅配便・速達・小口貨物配送(CEP)市場およびEコマース物流市場には、中国企業や国有企業系事業者の進出が目立っている。国際物流大手はシンガポールやマレーシアを地域ハブとして事業を展開している。一方で、外資規制や地理的条件といった構造的な障壁があるため、現地企業も各国の国内市場で引き続き確固たる地位を維持している。

  • CEPは、Eコマースの急速な成長に支えられ、ASEAN主要6カ国全体で構造的に重要なセグメントとして台頭している。Eコマースのラストマイル需要取り込みを狙う中企業や民営化された国有郵便事業者の影響力が高まっている。
  • CWT、DSV、DHL、FedExなどのグローバル総合物流企業は、先進的なインフラや貿易円滑化の枠組みを備えたシンガポールとマレーシアに事業を集中させ、両国を地域ハブの中核拠点としている。
  • タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンでは市場固有の構造的要因により、現地事業者が優位な地位を維持している
    • タイ:外資規制と地域に根ざした企業エコシステムにより、外国企業の事業拡大が制限されている。
    •  ベトナム:国有企業が政府の指示に基づき、港湾、郵便インフラ、バルク輸送への支配力を維持している。
    •  インドネシア・フィリピン:島嶼という地理的条件により、専門的な海上輸送・島間物流に対する需要が生まれているが、グローバル企業やASEAN域内で事業を展開する企業は、こうした市場への大規模な参入には至っていない。

 

以降のページでは、下記目次の内容を掲載しております。
ご覧になりたい方は、本稿下段にあるフォームからダウンロードしていただけます。

 

III. ASEAN主要6カ国における物流再構築のトレンド

巨額の外国直接投資(FDI)の流入

急成長するEコマース市場

ASEAN貿易枠組みの整備

輸送インフラの整備

IV. 各国における主要な交通インフラプロジェクト

シンガポール

マレーシア

タイ

ベトナム

インドネシア

フィリピン

V. 主要物流事業者の事業拡大戦略

VI. まとめと示唆

レポートのPDFをご希望される方は、下記よりダウンロードください。

執筆:YAMADA Consulting & Spire(Thailand) Co., Ltd
(山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

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