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更新日:2025/08/02
テーマ: 03.海外ビジネス
東南アジアにおける生成AIビジネスの潮流と要諦
1. エグゼクティブサマリ
東南アジア各国の概況
東南アジア地域での生成AI関連事業の展開を検討する企業にとって、シンガポール、タイ、インドネシアが足元での参入検討に魅力的な市場と言える。これらの3ヵ国は他国に比して新しい技術やビジネスモデルの受け入れ態勢が整っている上に、政府からの支援もあり、早期に市場機会が創出されることが期待される。
シンガポール:デジタル分野での高い競争優位性(DCIランク1位)を誇るシンガポールは、成熟した市場であり高い需要が生まれている。デジタル企業は強固な基盤を備えており、公共部門や市民サービスにおける生成AIの推進を活発に行っている。
業界特化型の高付加価値ソリューションに注力しており、先進的な生成AIアプリケーションの強力な基盤が整っている。すでにローカライズされた基盤モデルのSEA-Lion大規模言語モデル(LLM) や特化型アプリケーションが開発されており、生成AIソリューションに対応可能性の高いエコシステムが構築されている。
タイ:政府主導の施策や「インダストリー4.0」の推進による経済成長が目覚ましい。1人当たりGDPは中程度(7,182USD)だが、国家AI戦略と行動計画に基づき、組織向け生成AI導入を政府が積極的に支援しているため、導入の加速が期待される。
タイ語処理への関心が高まっており、タイ語に特化した生成AIの大規模言語モデルの初期開発が進行中である。ただし、PathummaやTyphoon LLMといった国内での取り組みにとどまっており、資金不足やリソースの制約により進展が遅れる可能性がある。
インドネシア:2億8,120万人という大規模な人口を背景に、デジタル化が急速に進んでいる。費用対効果が高く、ローカライズされた生成AIソリューションが求められる、大規模でコストセンシティブな市場である。国家AI戦略(2020-2045)により、政府は長期的AI統合にコミットしている。
大企業(Go-To、Tokopediaなど)による生成AI事業の拡大やSahabat AI LLMの開発を通じたローカライズされた特化型アプリケーションの進展がみられ、すでに生成AI関連の取り組みは始まっている。
マレーシア:デジタル環境の整備状況は中程度だが、段階的な生成AIプログラムの実施により今後数年間でエコシステムの整備が進んで規模が拡大する可能性がある。
フィリピン・ベトナム:まだ基礎的なフレームワークを構築している段階だが、デジタル化の進展と関連政策への関心が高まっており、中長期的には成長可能性が見込まれる。
東南アジアの生成AI動向
①生成AIの活用領域
比較的、生成AI活用が進んでいる分野として、ビジネスソリューション(企業データ連携による生産性向上)、ヘルスケア(汎用診断分野、専門特化型ソリューション)、金融サービス(Agentic AI、リスク管理・分析)、マーケティングの領域(パーソナライズコンテンツ制作、キャンペーン高度分析)があげられる。

②各レイヤーの動向
東南アジアにおいては、生成AIの活用はアプリケーション主導型であり、オープンソースモデルやグローバルプラットフォームを地域ニーズに合わせて活用する傾向が強く見られる。インフラ面ではハイパースケーラーが主導権を握る一方、ローカルデータセンターの整備も進められており、データアクセスや主権の課題に対応するための取り組みも進められている。

③今後のビジネスモデルの方向性
東南アジアの生成AIのビジネスモデルは、基本的な大規模言語モデル(LLM)の応用を超えて進化しており、統合型多機能ツールや、汎用AIとローカライズされた業界特有のデータを融合させたハイブリッドソリューション、自律型AIの開発に焦点があたってきている。既存のLLMを活用し、システムやデータとの緻密な統合を図り、業界特化型の機能を開発することが肝要となる。

東南アジアにおける生成AIビジネス参入の要諦
東南アジアでは先行している米国市場でのビジネスモデルとは異なる点を踏まえた参入戦略が必要となる。大規模言語モデルの現地化、デジタルインフラの現地要件への対応に加えて、導入コンサルティング含めた包括的なサービが求められるのではないか。
ローカライズされた言語モデルの開発・活用:米国中心のモデルでは、市場全体で英語が使用されるため、主に英語データでトレーニングを行った基礎モデルが使用できる。対照的に、東南アジア市場では、インドネシア語、タイ語、ベトナム語などのローカル言語に対応した大規模言語モデル(LLM)への最適化が必須である。これにより、生成AIアプリケーションが東南アジア各国(インドネシア、タイ、シンガポール、ベトナムなど)で広く使用される多様なローカル言語を効果的に理解、処理、生成できる生成AIが必須である。このためには、データ収集、モデルトレーニング、文化的背景への適応に対する多大な投資が必要である。
ハイブリッドインフラとローカルデータ主権への対応:米国での事業展開では、米国内のクラウドインフラを活用することが主流である。一方、東南アジア市場では、クラウド・ローカル統合のハイブリッドインフラや、現地要件に適合したデータ主権への対応が重要になる。これは、米国市場との極めて重要な相違点であり、 東南アジア諸国のデータプライバシー規制やデータ保存に関する優先事項の違いによって求められるものである。 東南アジア諸国では、データを国内で保存・処理することを好む、または義務付ける傾向にあり、国内での保存・処理が求められる場合があるため、グローバルクラウドソリューションと併せて、オンプレミスや国内クラウドの導入が必要となる。
市場ごとに異なるデジタル成熟度への対応:米国では、デジタルインフラと技術のレベルが高く、その水準は市場全体で同程度である。一方、東南アジアでは、市場ごとにデジタル成熟度の幅がある。シンガポールのデジタル競争力は極めて高いが、インドネシアではデジタル経済規模が大きくかつ急成長しているものの、地域によってインフラの整備状況やインターネットの普及率が異なる。東南アジアへの参入には、費用対効果の高い生成AIソリューションや、デジタル環境が未成熟な地域でも価値を生み出せる企業内検索やワークフローの自動化に重点を置く必要がある。
地域に根差したコンサルティングと現地パートナーシップ:米国市場への参入では、直販や標準的なチャネルに依存することが多い。一方、東南アジア戦略では、地域に根差したコンサルティング・アドバイザリーサービス、市場評価、パイロットプロジェクトが主要な参入モデルとなる。これは、多様な規制環境や市場ニーズに対応するために、より丁寧な対応とカスタマイズされたソリューションが必要であることを反映している。また、地域の特定の市場ニーズを理解し、運用上の課題を克服するためには、現地のパートナーとの協働が不可欠である。
以降のページでは、下記目次の内容を掲載しております。
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2. 東南アジア各国の政策・取り組みの状況
東南アジア各国の生成AI関連の政策・取り組み
参考)東南アジア各国の生成AI関連の政策・取り組みの一覧
3. 東南アジアの生成AI市場環境とビジネスモデル分析
市場環境
①生成AIの世界市場規模・主要な技術分野
②東南アジアにおける生成AIの主要活用領域
プレーヤー動向
①バリューチェーンと各レイヤーの動向
②東南アジアにおける主要プレーヤー
③各レイヤー参入に係る主要論点
生成AIビジネスモデルの今後の方向性
4. 東南アジアにおける先端事例紹介
統合プロバイダー:東南アジアにおけるNVIDIA
インフラ:Rapidus
政府主導の基盤モデル:AI Singapore(AISG)
政府主導の基盤モデル:MERaLiONコンソーシアム
民間主導の基盤モデル:Elyza(KDDIグループ)
民間主導の基盤モデル:Sahabat AI
アプリケーション:Niveus(NTTデータグループ傘下)
アプリケーション:Doctor Anywhere
アプリケーション:Doctor Anywhere
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執筆:YAMADA Consulting & Spire Singapore Pte Ltd
(山田コンサルティンググループ株式会社 シンガポール現地法人)
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