海外ビジネス情報
更新日:2022/08/12 公開日:2019/06/13
テーマ: 03.海外ビジネス
中国における日本酒業界の現状と日本企業のビジネスチャンス/前編
目次
市場概要
日本酒類市場の動向
日本における酒類販売量はゆるやかに減少している
日本の酒類販売量は1996年の9,657千㎘をピークに減少の一途をたどっている。
清酒(日本酒)の販売量は1975年の1,675千㎘をピークに著しく減少している。
焼酎※注の販売量は2007年の1,005千㎘をピークに、その後緩やかに減少傾向。
日本酒類市場の動向
日本国内の日本酒の製造免許場数の減少が続いている
酒類販売量の減少に伴い、日本国内の日本酒製造免許場数は1970年代の半分以下まで減少しており、2016年時点で欠損または低収益※注1となっている日本酒製造企業は42.7%に達している。
一方、焼酎の製造免許場数は50年前とは大きな変化は見られないが、2017年時点で欠損または低収益となっている焼酎※注2製造企業は42.3%に達していることから、焼酎業界の厳しい環境が伺える。
日本国内の酒類全体の消費の伸び悩みを背景に、海外需要の開拓は重要な経営課題である。
中国における洋酒※注の消費状況
中国 日本産酒類の消費金額の成長率は高い
「2018年天猫酒類オンライン消費データ報告書」によると、中国消費者の洋酒産地に対する認知はフランスやイギリスを超えて、日本が最も高いペースで成長している。
2018年の酒類別洋酒消費金額の成長率から見ると、梅酒と日本酒・焼酎はブランデーに次いでそれぞれ2、3位となっている。
日本酒の国別輸出動向
日本酒の最も大きな輸出先はアメリカ、焼酎は中国
日本酒の主要輸出先は、香港と中国大陸がそれぞれ37億7,400万円、35億8,600万円と全世界で2、3位となっている。香港の人口は743万人であるが、日本酒の輸出量は中国大陸部と同程度の市場である。
日本酒の認知度向上により、今後中国大陸の日本酒消費量の拡大も期待できる。
一方、焼酎の主要輸出額は中国が1位となっているものの、輸出額自体は日本酒の10分の1以下であり、やや鈍化している。
中国向け日本酒・焼酎の輸出推移
中国向け日本酒輸出量は10年前の8.6倍となったが、焼酎の輸出量は微減
2018年の日本からの中国向け日本酒輸出量は4,146kℓ、輸出額は35億8,600万円で、10年前の2008年と比べると、量では8.6倍、金額では12.9倍となっている。
焼酎の中国向け輸出量は毎年多少変動しているが、10年前の輸出量よりは103㎘減少している。
流通関連
中国における洋酒の主な販売チャネル
従来型チャネルは依然として主要な販売ルートであるが、ECのプレゼンスが高まっている
胡潤百富が中国の300人の富裕層を対象に行った調査レポート「2019年中国酒類消費行為白書」によると、富裕層の洋酒購入ルートは従来型チャネルとECチャネルでそれぞれ66%と34%となっている。
従来チャネルのうち、酒類専門店は29%と最も重要な購買チャネルである。また、ECチャネルのうち、総合ECプラットフォームは依然として重要なチャネルであるが、酒類専門ECプラットフォームも不可欠な存在である。
中国酒類販売の新トレンド
酒類販売専門のECプラットフォームも重要な販売チャネル
洋酒は中国国酒の白酒とは違い、主要消費者層は20~39歳の若者が中心であるため、ECでの販路拡大は一層重要な課題となっている。
知名度の高い総合ECサイト以外に、輸入酒類を専門的に取り扱うO2O※注マーケティング戦略を強みとする酒類販売専門のECサイトも重要な販売チャネルである。
中国における日本食レストランの動向
中国では日本食レストランの増加に伴い、日本酒類の消費も増加傾向
美団点評研究院発表の「中国飲食白書2017」によると、中国における日本食レストランの店舗数は2016年年初時点の27,745店舗から2016年末には35,047店舗へ増加し、種類別料理の店舗数で11位となっていた。
従来の「安心安全」、「ヘルシー」という日本料理の印象に加え、訪日観光客の増加に伴い本場の日本食や酒類に触れる機会の増加が中国における日本食レストランの人気に貢献していると思料される。
日本酒・焼酎輸入規制と輸入手続き、流通経路・所要時間
日本酒・焼酎輸入(日本から中国)に関する規制と手続きの一例
JETROの「日本酒輸出ハンドブック 中国編」の調査資料によると、日本から中国の小売店に届くには最低1カ月前後かかる。
関税、消費税、輸送及び時間等のコストを考えると、中国での販売価格は日本での2~3倍になるのが通常である。
(後編へ続く)
中国における日本酒業界の現状と日本企業のビジネスチャンス/後編
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