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更新日:2026/03/16

テーマ: 03.海外ビジネス

ベトナム屋根置き太陽光発電の最新動向:DPPA制度・自家消費・BESSによる投資機会

~政令改正と導入事例から読む、2024–2025年の制度・技術のポイント~

目次

ベトナムの太陽光発電市場

ベトナムの太陽光発電市場

・ベトナムの電力発電構成の変化を見ると、2018年は化石燃料が中心だったが、2024年には再生可能エネルギー(特に太陽光や風力)の割合が大幅に増えた。
・屋根置き太陽光が電力発電構成に占める割合も高まって、2024年には全体に占める割合が1割近くになっている。
・2024年のベトナムの総設備容量に占める割合を見ると、石炭が33.8%で最大シェアを占めている。次いで水力が27.5%、太陽光、風力、バイオマスを合わせると約27%を占めている。

    出所: Deutsche Gesellschaft für Internationale Zusammenarbeit (GIZ)より、山田コンサル作成

屋根置き太陽光発電向けの政府の計画

・ベトナムにおける2050年までの屋根置き太陽光発電の開発方針は、「自家生産・自家消費」モデルに重きを置き、国の送配電網への依存を減らすことを優先し、2030年までに世帯やオフィスの50%で利用可能にすることを目標としている。
・2025-2030年には、26,376MWの屋根置き太陽光発電を追加で開発する計画があり、特に電力需要が高い北部や南部で追加分の9割以上を占める。

    出所: 改定版PDP8より山田コンサルまとめ

屋根置き太陽光発電の設置状況

・2017年4月にFIT 1(9.35 米セント/kWh)が公布され、屋根置き太陽光発電でもグリッドに接続して余剰電力の販売が可能になって以来、屋根置き太陽光発電の設置が急増した。2019年4月にFIT 2(8.38 米セント/kWh)が公布され、更に発電量全て販売可能になった結果、2018年に僅か30MWしか設置されなかった屋根置き太陽光発電は2020年に101,029MWに達した。
・2020年12月31日にFIT 2が終了し、以降優遇制度は発表されず、屋根置き太陽光発電のブームは収まった。
・2024年および2025年にDPPA(直接電力購入契約)制度や自家消費型太陽光発電に関する政令が公布され、屋根置き太陽光発電の成長を後押しするはずだが、DPPA制度実施のためのガイドライン等が未公布である。公表されている導入計画はあるものの、稼働しているか確認出来る案件はまだ見られない。

    出所:ニュース記事より山田コンサル作成

屋根置き太陽光に関する法制度

・2017年から2020年にかけて、屋根置き太陽光発電は強く推奨され、FIT価格等の優遇制度も設定されていた。
・2020年のFIT 2終了とともに屋根置き太陽光発電ブームは落ち着いた。その後は基本的に自家消費型が前提とされている。
・2024年にDPPAや屋根置き太陽光発電の自家消費型に関する政令が公布された。

屋根置き太陽光発電のモデルの整理

・現在のベトナムにおける屋根置き太陽光発電は、制度上では自家消費型とDPPAのモデルに整理される。
・DPPAは2024年に制度として定められたものの、現時点ではほぼ導入まで至ったと確認できる案件はなく、現状ベトナムで導入されている屋根置き太陽光発電は基本的に自家消費型(リースモデル含む)である。

DPPA制度

DPPA制度関連の政令改正

・政令80/2024/ND-CP号はベトナムのDPPA制度を正式化させたが、条件等の制限がまだ厳しい。僅か8か月後に代替の政令として公布された政令57/2025/ND-CP号は参加者の条件や取引条件等を緩和し、DPPA制度の実施を後押する。
・政令57/2025/ND-CP号が2025年3月に公布され、同年10月に改定草案が検討されていた。余剰電力の販売に対するキャップの緩和や、事業者の対象の拡大等が検討内容に含まれている。

    出所: 政令80/2024/ND-CP号、政令57/2025/ND-CP号、NNAより山田コンサル作成

DPPA制度における屋根置き太陽光発電

・2024年公布の政令80/2024/ND-CP号が失効し、2025年公布の政令57/2025/ND-CP号によってDPPA制度が規制されている。
・DPPA制度において、EVN送電網を利用しない場合はオンサイトDPPAスキーム、利用する場合はオフサイトDPPAスキームが適用されている。
・いずれのスキームでも、電力の取引価格に上限が設定されており、通常毎年商工省によって見直される。

    ※NLDC:ベトナム国家負荷分散センター
    REC: 再エネ証書
    出所:政令57/2025/ND-CP号より山田コンサル作成

DPPAの見込み案件

・DPPAに関する政令が公布された後、再生可能エネルギー市場では新たなDPPAプロジェクトの発表が相次いでいる。
しかし、これらの合意の大部分はMOUの締結段階にとどまっている。
・即座に拘束力を持つ経済契約ではなく、MOUという形態が優先されている事実は、関係者の慎重な姿勢を反映している。
 まずはインフラの準備を整えつつ、より具体的な法的シグナルを待つという戦略をとっている。

    ※VSIP 3工業団地は、大手顧客向けの電力供給源として50ヘクタールの太陽光発電所を所有しており、Lego社が使用契約に署名した最初の企業である。

現行のDPPA制度の課題

・政令57/2025/ND-CPによって2025年3月よりDPPA制度が仕組化され始めたが、2025年末時点において、大型電力需要者によるDPPA契約まで持ち込める事例は存在していないと言われている。
・政令57/2025/ND-CPはDPPA制度の体制や構造を規制したが、大型需要者が導入を決断するための財務シミュレーションがしにくい状況である。ガイドラインも不足しており、また中小企業は現DPPA制度の対象外であることで、いまだにDPPA案件が成立していない原因となっている。

自家消費型屋根置き太陽光発電

自家消費型の屋根置き太陽光発電

・屋根置き太陽光発電の自家消費型は2024年公布の政令135/2024/ND-CPにて定義されており、オフグリッドとグリッド接続で定義されている。
・オフグリッドの場合、基本的に当局への通知が条件であり、設置容量が1,000kW以上は電力ライセンスの取得も必要となる。
・EVNグリッドに接続し売電する場合は国家電力計画(PDP8)での承認が必要である。売電量も設置容量の20%までの上限がある。1,000kW以下は当局への通知で対応できるが、1,000kWを超える場合は当局への申請が必要である。さらに、余剰電力を売電する場合、電力ライセンス取得は必須となる。売電にはPPA契約の締結が求められ、取引価格はSMP(System Marginal Prices:システム限界価格)と規定されている。

    出所:政令135/2024/ND-CP号、政令58/2025/ND-CP号、より山田コンサル作成

プレイヤー 太陽光パネルメーカー

・ベトナムの太陽光発電用パネル製造業界では、LONGi、Trina Solar、JA Solar、Canadian Solarといった海外大手メーカーが生産量の85%以上を占める一方、国内企業による生産は年間1GW程度にとどまっている。
・しかしながら、 外国企業による国内での生産活動の大部分は、依然として組み立てや加工の段階に集中しているのが現状である。ポリシリコン、ウエハー、セル、その他多くの主要なコアコンポーネントといった原材料は、依然として輸入に頼らざるを得ない。コア技術、製品設計、知的財産は、海外の親会社が掌握している状況である。
・したがって、サプライチェーンは輸入政策の影響を受けやすい状況にある。問題は認識されており、ベトナム商工省は状況に対処するための新しい政令を起草中である。

    出所: Mordor Intelligence「ベトナムの太陽光発電市場規模・シェア分析 – 成長動向と予測(2025年~2030年)」より、山田コンサルまとめ

今後の屋根置き太陽光トレンド BESS

BESSの現状と開発計画

・再エネ開発が今後も加速し、安定的かつ効率的な電力供給のためにBESSの活用が積極的に検討されている。
・現在のBESSの活用は限定的で100MW以下とされるが、PDP8ではBESSの容量を2030年は16,300MW、2050年は96,120MWに開発する目標となっている。BESS案件は太陽光・風力発電所の近隣に設置すべきとされている。
・BESSの導入費用および運用費用は今後も減少し、導入障壁が低くなることでBESSの導入が加速すると予測されている。

    ※変動O&M費:補助燃料費用(水、オイル、燃料添加剤等)、O&M関連の廃棄物処理・処分費用、スペアパーツ(保険適用分除く)
    ※固定O&M費:O&M関連の事務費用、人件費、O&M契約関連の支払い、送電網費用、資産税、保険料、修繕費等
    出所:商工省「Vietnam Technology Energy Storage」(2023/11)、PDP8より山田コンサル作成

国内BESS案件

・2025年月付に公布されたPDP8改訂版の実施計画では、2030年までベトナムの電力総容量の1.8%を占めるBESS容量300MWが承認されたが、進捗・導入状況の詳細は不明である。そのほか、既存再エネ発電所に接続するBESSなども検討案件とされており、2035年までのBESS容量を20,287MWに引き上げる予定になっている。
・技術や部品等は輸入に依存しているが、BESSの国内製造者も登場している。

    出所:商工省「決定1509/QD-BCT号」(2025/5)、ニュース記事より山田コンサル作成

BESS製造者の概要

・T&T Groupは不動産開発、都市開発、再エネを中心に事業を展開しており、中国パートナーであるCospower社とBESS事業の展開を図っている。今後もT&T Groupのようなベトナム大手グループ会社のBESS事業への参画が期待されている。
・GG IndustriesはBESS事業に専念しており、中国パートナーであるGoldwind社との提携によって期待される新興企業である。

    出所:各社HPより山田コンサル作成

BESS関連の法令

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執筆:Yamada Consulting & Spire Vietnam
(山田コンサルティンググループ株式会社 ベトナム現地法人)

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