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2021/07/07

テーマ: 03.海外

タイのアルコール飲料市場の概要と今後の動向

目次

タイのアルコール飲料市場の概要

アルコール飲料の消費量トップはビール

  • ▪ 2019年のタイビール市場の規模は、数量ベースでは20億リットル、金額ベースでは約2,000億バーツで、いずれも前年比で3%増加した。
  • ▪ タイのビール消費量は着実に増えている。購買力が高く、品質と洗練度の高い味わいの高価格帯のビールを選ぶ傾向にあるミレニアル世代*が増えているためである。
  • ▪ 高価格帯ビールの中で、クラフトビールと輸入ビールは、過去数年間消費が伸びており、わずか1%未満と市場規模が小さいにも関わらず、タイ市場に登場して以来大きな成功を収めている。
  • クラフトビール市場

  • ▪ 2019年のクラフトビールの売上高は約30〜40億バーツだった。
  • ▪ ブンロート・グループやTCCグループなどのタイの主要メーカーは、さまざまなクラフトビールを市場に投入している。
  • ▪ 一方、規模の小さい一部の企業も、近隣諸国への製造施設の設立や外国メーカーとの生産契約締結を行ってタイに製品を輸入することで市場に参入している。こうした動きの理由は、タイ国内での生産に対する規制があり、投資が少数の大手事業者のみに限定されているためである。
  • 輸入ビール市場

  • ▪ アルコール飲料の中で、タイへの輸入量が最も多いのはビールで、ウイスキーとワインがこれに続く。ビールの主な輸入先はベトナム、ベルギー、メキシコ、ドイツである。
  • ▪ 2020年のタイへのビールの最大の輸入先(金額ベース)はベトナムである。ベトナムからの輸入額は2018年以降大幅に増加している。この主な背景としてはタイ・ビバレッジやブリューベリーなどの主要プレーヤーがベトナムに醸造所を持っていることや、クラフトビール人気が高まっていることなどがある。
      • 出所:タイ商務省、各種報道
      注:*ミレニアル世代とは1981年から2000年の間に生まれた世代で、ジェネレーションYまたはネットジェネレーションと呼ばれることもある

    主要プレーヤーがホワイトスピリッツやブランデーへの投資を拡大

  • ▪ アルコール飲料の中で2番目に消費量が多いスピリッツの2019年の消費量は、約7億2,800万リットルとわずか1%の伸びにとどまった。
  • ▪ タイスピリッツ市場においては国内産が最大シェア(売上高全体の約70%)を占めるが、これは家庭での飲酒用に伝統的な飲料が購入されるためである。
  • ▪ 中間所得層が拡大ししつあることや市場競争が穏やかなことから、高価格帯のホワイトスピリッツとブランデーの市場は依然として潜在的な魅力が高い。
  • ▪ スピリッツの生産に対する規制が厳しいため、スピリッツ市場への新規参入は困難である。そうした状況下でTCCグループ傘下のタイ・ビバレッジが長らく市場を支配していたが、カラバオグループ傘下のタワンデーン1999が参入を果たし、市場初の主要な競合となった。
  • ホワイトスピリッツ市場

    過去数年間ホワイトスピリッツ市場の成長は緩やかで、現在プレーヤー数もごくわずかである。
    ホワイトスピリッツ市場はシェアの80%以上(価格ベース)を占めるTCCグループ傘下のタイ・ビバレッジが支配している。またタイ・ビバレッジはスピリッツ市場全体をリードしている。

    ブランデー市場

    タイのブランデー市場全体の規模は年間約45億バーツとされ、85%のシェアを握るRegencyブランド(スワンナプーム社製造)が市場をリードしている。
    ただし、Regencyの生産性が低下しているため、ブランデー市場への新規参入余地はまだある。

      出所:各種報道

    新型コロナウイルスの影響

  • ▪ タイでは2020年2月以降新型コロナウイルスの感染が拡大し、政府は、懇親目的の会食などを抑制するため、娯楽施設の営業停止やあらゆるアルコール飲料の販売の禁止を一時的に実施した。これはタイのアルコール飲料業界に大きな影響を及ぼし、製造業者や消費者の行動にも変化をもたらした。
  • タイのアルコール飲料市場の主要プレーヤー

    ブンロート・グループ

    ブンロートはタイで最大のアルコール飲料メーカーであり、取扱製品は自社ブランドと提携外国ブランドの両方で構成されている。

    TCCグループ(タイ・ビバレッジ)

    タイ・ビバレッジは最大のスピリッツメーカーであり、タイで2番目に大きいアルコール飲料メーカーである。

    TAPグループ

    タイの投資家とハイネケンのJVであるタイ・アジア・パシフィック・ブルワリー(TAP)は1995年にタイでハイネケンの醸造と販売を開始した。

    タワンデーン1999

    エナジードリンク大手のカラバオグループ傘下の企業。米焼酎、ラム酒、ブランデー、アルコール度数4度のホワイトスピリッツなどアルコール飲料の全製品カテゴリーにわたって蒸留、国内販売、輸出を行っている。

        出所:会社ホームページ、各種報道

    輸入業者

    タイのほとんどの酒類輸入業者は、自社で輸入・流通を行う正規販売業者である。主要プレーヤーとしては、ディアジオ・モエ・ヘネシー、サイアム・ワイナリー、ペルノ・リカール、ブリューベリーがあげられる。

    規制と税制①

  • ▪ タイでは、アルコール飲料の販売や飲酒場所、酒類の販売日時、広告内容に対する規制があり、これらは関連法に記載されている。
  • ▪ 主な法律には酒類規制法B.E.2551(A.D.2008)がある。
  • アルコール飲料の販売

    販売と飲酒場所の規制

    以下の場所でのアルコール飲料の販売・飲酒は禁止されている。

    ► 寺院、その他宗教施設
    ► 公共医療保健施設、薬局
    ► 官公庁、庁舎
    ► 学生寮、教育施設またはその近辺
    ► 公共公園
    ► ガソリンスタンド
    ► 工場
    ► バスターミナル、鉄道の駅、列車内、客船が出入港する公共港湾

    販売日・時間の制限

    販売時間:午前11:00~午後2:00、午後5:00~深夜0:00
    販売禁止日時:
    ► 重要な仏教祭日(ホテルおよび国際空港は除く)
    ► 選挙日前日の午後6:00から選挙日の全日

    購入者の年齢制限

    ► 20歳未満へのアルコール飲料の販売は禁止されている。

    アルコール飲料の広告

    広告に関わる規制

    ► アルコール飲料の特性、良さ、品質や飲酒の様子を表示しないこと。
    ► アルコール摂取の悪影響に関する警告を表示すること。
    ► 広告表現に、実際の製品またはパッケージを使用しないこと。
    ► ブランドや製造会社のロゴは、既定の基準に沿った内容で表示すること。

    広告時間帯の制限

    ► 午前5:00~午後10:00のラジオ・テレビ広告は禁止されている。

        出所:酒類規制法B.E.2551(A.D.2008)

    規制と税制②

  • ▪ タイは酒類の生産と販売を管理するために免許制度を導入している。酒類の製造には工場ライセンスと酒類製造ライセンスの2種類が必
    要とされる。
  • 工場ライセンス

    ✓ あらゆるタイプの工場に必要とされる。
    ✓ 2000年以降、酒類製造施設の新規設立を制限するために、工場の規模と立地に関して酒類製造には厳しい条件が適用されている。

    酒類製造ライセンス*

    ✓ 酒類製造に必要とされる。
    ✓ ライセンスの条件は、製品の種類によって異なる。

        注:*地域の小規模な酒類製造所は含まれない
        **タイ国籍の個人または法人が株式資本の51%以上を保有していること
        出所: (1)酒類製造許可に関する省令:Liquor Production Permission(2017年)
        (2)財務省による酒類管理に関する告示:Liquor Administration(2000年)
      (3)国家環境保全推進法/Environmental Conservation and Promotion Act(1992年)

    規制と税制③

  • ▪ アルコール飲料事業者にライセンス料がかかるだけでなく、アルコール飲料には、酒税、物品税、輸入税といった様々な税金がかかってくる。
  • ▪ アルコールの価格とアルコール度数の両方に課税される物品税額は、アルコール飲料価格の半分以上を占める。
  • ▪ ライセンス料からは酒税が、物品税からは目的税が徴収され、公衆衛生や社会活動に関わる基金に充てられている。
  • アルコール飲料の税

    今後の動向と展望

    今後の市場動向

    高価格帯アルコール飲料

  • ▪ クラフトビール、輸入ビール、高級スピリッツブランドの製品が、特にモダントレード(近代的小売店)で入手しやすくなるにつれて、高価格帯製品の人気が高まっている。
  • ▪ 高価格帯のアルコール飲料製品は、味わいが向上しており、そうした製品を選ぶ消費者や扱うレストランのイメージアップにつながることから需要が高まっている。
  • ▪ この流れを受けて大手も、高価格帯のビールやスピリッツの自社製品を今後市場に投入することを計画している。
  • ■ 促進要因:
    ✓ 高価格化
    ✓ ライフスタイルの変化
    ✓ 中間所得層と若年層の飲酒者の増加
    ✓ モダントレードの拡大
    ✓ 飲酒行動の変化
    ➢ 洗練度の高いものを好む消費者が増加

    ノン・低アルコール飲料

  • ▪ 健康志向の高まりに伴ってアジアを含む世界各地で、ノン・低アルコール飲料を飲む人がますます増えている。
  • ▪ タイでは、一部のアルコール飲料市場プレーヤーによる、ビール、サイダー・ペリー、RTD(直ぐ飲めるタイプの飲料)など低アルコール飲料へのシフトの動きが加速している。この動きの背景には、人々の健康志向がもたらした価格競争や市場拡大などがある。
  • ■ 促進要因:
    ✓ 飲酒行動の変化
    ➢ 健康志向の高まり
    ✓ 女性の人気が高い
    ➢ 女性は男性に比べて、飲酒をしない人や低アルコール飲料を好む人が多い

    市場機会を獲得するには…

    ► 高価格帯市場の需要を満たす製品を発売する。
    ► ベトナムなど他国にクラフトビール製造施設を設立し、タイに輸入する。
    ► 洗練度の高いものを好む消費者の嗜好に合うような新たな飲料を提供する。
    ► ノン・低アルコール飲料市場に投資して市場の需要を満たす。

    潜在市場・セグメント

    ► 高価格帯のアルコール飲料市場
    • ビール:クラフトビール、輸入ビール
    • スピリッツ:ホワイトスピリッツ(Sura Khao Hom)、ブランデー
    ► 新規性の高い新製品の市場
    ► 低アルコール飲料市場
    ► ノンアルコール飲料市場

    まとめ

  • ▪ タイのアルコール飲料市場はタイ国内で生産された製品が独占している。
    この背景としては、特に生産ライセンスを所有しているという強みがあることに加え、コスト上のメリット、強固な流通ネットワークが確立していること、消費者の嗜好を把握できることなどがある。
    製品カテゴリー別にみると、タイ消費者の間で最も人気があるのはビールで、スピリッツ、ワインなどがそれに続く。
  • ▪ 近年高価格帯の輸入ビールやクラフトビールなどの需要が高まっており、そのほとんどがベトナムから輸入されている。
    一方、市場の主要プレーヤーが新たにホワイトスピリッツやブランデーブランド製品を発売するようになり、最近では高価格帯のスピリッツも注目を集めている。
  • ▪ 中間所得層の拡大や消費者の健康志向の流れを受け、今後のタイのアルコール飲料市場では高価格化やノン・低アルコール飲料の需要の高まりが予想される。
  • ▪ タイでは、新型コロナウイルスの感染拡大が危機的状況にあるときでさえ、高価格帯のアルコール飲料市場はほとんど影響を受けなかった。
    危機の影響を受けた他のセグメントの救済策の一環として政府は酒類生産許可法B. E. 2560を改定し、国内中小規模の生産者を支援するとしている。
  • 本レポートのPDFは下記フォームよりダウンロードいただけます。

    <お問合せ先>
    山田コンサルティンググループ(株) タイ現地法人
    global-support@yamada-cg.co.jp

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