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コラム

公開日:2025/01/21

テーマ: 02.M&A

飲食M&Aの基礎知識!相場や買収事例を徹底解説!

飲食M&Aの基礎知識!相場や買収事例を徹底解説!
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飲食業界におけるM&Aのプロセスやポイント、成功事例を紹介します。
業界ならではの論点や業界の最新情報を把握し、M&Aを成功させましょう。

目次

飲食M&Aの基本がわかる!

飲食M&Aは、飲食業界における企業の買収や合併を指します。飲食M&Aは主に、経営資源の効率化や市場シェアの拡大、新規事業の展開などを目的としています。
特徴としては、店舗やブランド、従業員、ノウハウなどの引き継ぎが含まれ、従業員雇用や事業の継続性が重視されます。
具体的なプロセスとしては、まずM&Aの目的を明確にし、適切な買い手や売り手を見つけることから始まります。次に、デューデリジェンス(企業調査)を行い、財務状況やリスクを確認します。その後、交渉を経て基本合意書を締結し、最終契約を結びます。
飲食業の市場規模は、新型コロナウイルスの影響で縮小傾向にありますが、一方で業界再編が進んでおり、大手企業によるM&Aが活発化しています。また、最近ではデジタル化やデリバリーサービスの強化が進められています。これにより、飲食業界全体の競争力が向上し、新たなビジネスモデルが生まれています。

飲食M&Aの特徴を深掘りする

飲食業界特有のM&Aの特徴として、まず第一に競争が激しい市場環境が挙げられます。飲食業界は多くの企業がひしめき合い、消費者の嗜好やトレンドの変化に敏感に対応する必要があります。そのため、M&Aを通じて規模の拡大や新しいビジネスモデルの導入を図る企業が多いです。
また、飲食業界ではブランド力や店舗の立地、商圏が重要であるため、これらを引き継ぐことがM&Aの主な目的となります。さらに、従業員の引き継ぎや店舗運営のノウハウも重要な要素であり、これらを円滑に移行するための計画が必要です。

飲食業界におけるM&Aの目的を探る

飲食業界でM&Aが行われる主な理由や目的は以下の通りです。

■既存事業拡大と市場シェアの拡大
飲食業界は競争が激しいため、M&Aを通じて他社の店舗やブランドを取得し、事業規模を拡大することで市場シェアを増やすことが目的です。例えば、飲食店を経営する企業が、食品製造業の企業を買収し、競争力を強化することなどが挙げられます。

■新規市場への進出
地域や業態の異なる市場に進出するためにM&Aを活用します。これにより、新しい顧客層を獲得し、売上の多様化を図ることができます。例えば、海外の飲食チェーンを買収し、国際展開を進めるなどです。

■経営資源の効率化
経営資源の効率化を図るために、他社の優れたノウハウや技術を取り入れることが目的です。これにより、コスト削減やサービスの質向上が期待されます。

■後継者問題の解決
高齢化が進む中で、後継者がいない企業がM&Aを通じて事業を継続させることが目的です。これにより、従業員の雇用を守り、地域経済への影響を最小限に抑えることができます。例えば、地方の老舗飲食店が大手チェーンに買収されるケースなどです。

M&Aのプロセスを知る

飲食業界のM&Aは、以下のプロセスを経て進行します。それぞれのプロセスでのポイントや注意点も併せて解説します。

1.目的の明確化と準備
ポイント: M&Aの目的を明確にし、社内での合意を得ることが重要です。事業拡大、新規市場進出、後継者問題の解決など、具体的な目標を設定します。
注意点: 目的が曖昧だと、適切な買い手や売り手を見つけるのが難しくなり、交渉の際にも意思統一が困難になります。社内の関係者と十分にコミュニケーションを取り、共通の理解を持つことが必要です。

2.アドバイザーの選定と企業評価
ポイント: M&Aアドバイザーや専門家を選定し、企業価値の評価を行います。これにより、適正な価格設定が可能となります。
注意点: 信頼できるアドバイザーを選ぶことが重要です。また、企業評価は財務状況だけでなく、ブランド価値や市場ポジションも考慮する必要があります。

3.買い手・売り手の選定と交渉
ポイント: 適切な買い手や売り手を見つけ、秘密保持契約を締結します。その後、具体的な条件を交渉し、基本合意書を作成します。
注意点: 交渉は双方の利益を考慮し、お互いが納得する条件を設定することが重要です。秘密保持契約を結ぶことで、情報漏洩を防ぎます。

4. デューデリジェンス(企業調査)
ポイント: 財務状況や法務リスク、事業運営の実態を詳細に調査します。これにより、潜在的なリスクを把握し、適切な対策を講じることができます。
注意点: デューデリジェンスは専門家に依頼し、目的に応じて徹底的に行うことが重要です。見落としがあると、後々のトラブルの原因となります。

5.最終契約とクロージング
ポイント: 最終契約書を締結し、取引を完了させます。クロージングでは、必要な手続きを経て、正式にM&Aが成立します。
注意点: 最終契約書の内容を十分に確認し、全ての条件が満たされていることを確認します。クロージング後も、統合プロセスを円滑に進めるための準備が必要です。

飲食店のM&A成功事例

飲食M&Aの成功事例としてゼンショーホールディングスによるM&Aを紹介します。
ゼンショーホールディングスは2000年から2010年にかけてはココスジャパンやなか卯、ジョリーパスタなど他業種の飲食店のM&Aを行い、
2010年以降は飲食店に関連する製造・調達機能をもつ企業や、小売事業、海外の飲食店をM&Aしてきました。
近年では原材料の調達にも事業を拡大しています。

ゼンショーは「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という企業理念を掲げており、
中期経営計画では「世界のフード業におけるリーディングカンパニー」を目指していることを明らかにしています。
上記の理念、目指す姿という明確な目的があることから事業拡大、M&Aの方向性、詳細な候補先の条件や交渉上譲れないポイントがはっきりし、M&A後のPMIにおけるKPI管理などもスムーズに行えます。
これこそがゼンショーがM&Aによる事業拡大を成功させている秘訣といえるでしょう。

同じく飲食M&Aを通じて成長を目指す場合には、企業理念、経営戦略から一気通貫したM&Aの目的、条件を設定することが重要であるでしょう。

ゼンショーのやつ

飲食店のM&A最新情報

飲食店M&A市場は、コロナ後の新常態やテクノロジーの進化、法規制の変更により大きな変化を遂げています。
コロナ禍で多くの飲食店が経営難に陥り、M&Aが再編の手段として注目されています。特に、デリバリーやテイクアウトの需要が急増し、これに対応するためのデジタル化が進んでいます。具体的には、オンライン注文システムやデリバリープラットフォームの導入が加速しました。
また、法規制の変更も市場に影響を与えています。例えば、営業時間やアルコール提供に関する規制緩和が進み、これに対応するためのM&Aが増加しています。さらに、環境への配慮やサステナビリティを重視する動きが強まり、エコフレンドリーな店舗運営を行う企業が注目されています。これらのトレンドを背景に、飲食店M&A市場は今後も活発に推移することが予想されます。

コロナ後の新常態と市場の変化

コロナ禍が飲食店M&A市場に与えた影響

コロナ禍は飲食店M&A市場に大きな影響を与えました。
多くの飲食店が営業自粛や営業時間短縮を余儀なくされ、売上が激減しました。これにより、経営難に陥った飲食店が増加し、M&Aを通じて事業再編や資本注入を図る動きが活発化しました。特に、デリバリーやテイクアウトに対応できる企業が注目され、これらの分野でのM&Aが増加しました。

ポストコロナ時代の新たなトレンド

■デジタル化の進展
オンライン注文システムやデリバリープラットフォームの導入が進み、これらの技術を持つ企業が人気です。例えば、Uber Eatsや出前館などのデリバリーサービスを活用する飲食店が増加しています。

■サステナビリティの重視
環境への配慮や持続可能な経営を行う企業が注目されています。エコフレンドリーな店舗運営や地産地消を推進する企業がM&Aの対象となるケースが増えています。

■多様な業態の融合
カフェとコワーキングスペースの融合や、レストランとリテールの融合など、多様な業態を組み合わせた新しいビジネスモデルが登場しています。これにより、顧客の多様なニーズに対応することが可能となります。

■地域密着型の展開
地域コミュニティとの連携を強化し、地域密着型の店舗展開を行う企業が増えています。これにより、地域経済の活性化とともに、顧客の信頼を得ることができます。

デジタル化とテクノロジーの影響

飲食店M&Aにおいて、デジタル技術の活用が重要な役割を果たしています。AI、IoT、ビッグデータなどの最新技術が、業務効率化や顧客満足度向上に寄与しています。

AIの活用
AIを用いた需要予測や在庫管理システムにより、無駄な食材ロスを削減し、コスト効率を高めることが可能です。また、AIチャットボットを導入することで、顧客対応の迅速化とパーソナライズされたサービス提供が実現します。

IoTの活用
IoTデバイスを活用したスマートキッチンでは、調理機器の遠隔操作やメンテナンスが可能となり、効率的な店舗運営が実現します。さらに、IoTセンサーを用いた衛生管理システムにより、食品の安全性を確保しやすくなります。

ビッグデータの活用
ビッグデータ解析により、顧客の嗜好や行動パターンを把握し、マーケティング戦略の最適化が可能です。例えば、顧客の購買履歴を分析し、個別にカスタマイズされたプロモーションを展開することで、リピーターの増加が期待されます。

法規制の変更とM&Aの注意点

飲食店M&Aを実施する際には、いくつかの法的リスクや注意点があります。まず、デューデリジェンス(DD)を徹底的に行うことが重要です。財務状況や法務リスク、労務問題などを詳細に調査し、潜在的なリスクを把握する必要があります。特に、労働基準法や食品衛生法に違反している場合、買収後に法的トラブルが発生する可能性があります。また、契約書の内容を十分に確認し、譲渡範囲や条件を明確にすることが重要です。特に、従業員の雇用継続や取引先との契約継続に関する条項は慎重に検討する必要があります。さらに、独占禁止法に抵触しないよう、競争法の観点からも適切な対応が求められます。これらのリスクを回避するためには、専門家のアドバイスを受けながら進めることが推奨されます。

飲食店M&Aの流れを理解する

飲食店M&Aは、以下の段階を経て進行します。それぞれの段階でのポイントや注意点も併せて解説します。

1.目的の明確化と準備
ポイント: M&Aの目的を明確にし、社内での合意を得ることが重要です。事業拡大、新規市場進出、後継者問題の解決など、具体的な目標を設定します。
注意点: 目的が曖昧だと、適切な買い手や売り手を見つけるのが難しくなります。社内の関係者と十分にコミュニケーションを取り、共通の理解を持つことが必要です。

2.アドバイザーの選定と企業評価
ポイント: M&Aアドバイザーや専門家を選定し、企業価値の評価を行います。これにより、適正な価格設定が可能となります。
注意点: 信頼できるアドバイザーを選ぶことが重要です。また、企業評価は財務状況だけでなく、ブランド価値や市場ポジションも考慮する必要があります。

3.買い手・売り手の選定と交渉
ポイント: 適切な買い手や売り手を見つけ、秘密保持契約を締結します。その後、具体的な条件を交渉し、基本合意書を作成します。
注意点: 交渉は双方の利益を考慮し、公平な条件を設定することが重要です。秘密保持契約を結ぶことで、情報漏洩を防ぎます。

4.デューデリジェンス(企業調査)
ポイント: 財務状況や法務リスク、事業運営の実態を詳細に調査します。これにより、潜在的なリスクを把握し、適切な対策を講じることができます。
注意点: デューデリジェンスは専門家に依頼し、徹底的に行うことが重要です。見落としがあると、後々のトラブルの原因となります。

5.最終契約とクロージング
ポイント: 最終契約書を締結し、取引を完了させます。クロージングでは、必要な手続きを経て、正式にM&Aが成立します。
注意点: 最終契約書の内容を十分に確認し、全ての条件が満たされていることを確認します。クロージング後も、統合プロセスを円滑に進めるための準備が必要です。

準備段階:自社分析と目標設定

M&Aを成功させるためには、準備段階での自社分析が不可欠です。自社分析の方法としては、まず財務状況の把握が重要です。財務諸表を詳細に分析し、収益性や負債の状況を確認します。次に、事業の強みや弱みをSWOT分析などを用いて整理・評価します。これにより、競争優位性や改善点を明確にできます。また、従業員のスキルや組織体制の評価も重要です。

M&Aの成功には、明確な目標設定が欠かせません。目標が明確であれば、適切な買い手や売り手を見つけやすくなり、交渉もスムーズに進みます。また、目標を共有することで、社内の理解と協力を得やすくなり、M&A後の統合プロセスも円滑に進めることができます。

理想の相手企業を見つけるプロセス

飲食店のM&Aを成功させるためには、理想の相手企業を見つけることが重要です。以下のプロセスと方法を参考にしてください。

1.目標と条件の明確化

2.ターゲット企業の選定
例えば、下記のような条件が考えられます。
業態の一致: 自社と相性の良い業態かどうか
財務状況: 健全な財務状況かどうか

3.情報収集

4.専門家・マッチングサービスの活用
自社単独で候補先と接触するのはハードルも高く、接触できる範囲にも限りがあります。
M&Aアドバイザーや仲介会社を活用することで、専門家のネットワークを利用でき、接触できる範囲が大幅に広がります。
そのため、基本的には専門家に相談することをおすすめします。
また、プラットフォームなどのマッチングサービスを利用する方法もあります。

交渉と契約の重要ポイント

飲食店M&Aにおける主な法的論点として下記3点を紹介します。

・労働環境
従業員の労働環境、雇用契約を調査し、条件に従って経営されているかが論点となります。
また、未払残業代などがある場合にはその金額は明確にしておく必要があります。

・商標権
店名やロゴなどの商標権の取り扱いを協議しましょう。

・競業避止義務
一般的に売手企業は、M&A後に近くのエリアで同業態の店舗を運営することが認められないことが多いです。
例えば、オーナーがM&Aによる引退後に似た業態で新たな事業を始めたい場合には、買手側と交渉することになります。

上記の他、CoC条項のある契約や、衛生管理の引継ぎなども論点となる場合があります。

飲食店M&Aのメリットとデメリット

飲食店M&Aにおけるメリットとしては、主に事業を拡大、効率化できる点、新技術やノウハウを獲得できることが挙げられます。
一方でデメリットとして、統合の難しさ、財務リスクを紹介します。

メリット:事業拡大と相乗効果

飲食店M&Aによる事業拡大には多くのメリットと相乗効果があります。まず、既存の店舗やブランドを買収することで、新規出店に比べて初期投資を抑えつつ、迅速に市場シェアを拡大できます。これにより、競争力を高めることが可能です。また、買収先のノウハウや人材を活用することで、経営効率の向上やサービスの質の向上が期待できます。さらに、複数の店舗を統合することで、仕入れコストの削減や物流の効率化が図れ、スケールメリットを享受できます。

メリット:新技術とノウハウの獲得

飲食店M&Aを通じて、新たな技術やノウハウを獲得することが可能です。例えば、買収先の店舗が持つ独自の調理技術やレシピ、効率的なオペレーションシステムなどが挙げられます。これにより、自社のメニューの多様化や品質向上が期待できます。また、デジタル化が進む現代においては、ITシステムやデータ分析技術の導入も重要です。例えば、POSシステムや顧客管理システムを活用することで、売上データの分析や顧客の嗜好を把握し、マーケティング戦略を最適化することができます。

デメリット:文化の衝突と統合の課題

飲食店M&A後の企業文化の衝突や統合の難しさは、しばしば大きな課題となります。例えば、買収元企業と買収先企業が異なる経営スタイルや価値観を持っている場合、従業員間のコミュニケーションや協力がスムーズに進まないことがあります。具体的には、ある企業が顧客サービスを重視する文化を持っている一方で、もう一方が効率性を重視する文化を持っている場合、業務プロセスやサービス提供方法に対する意見の対立が生じることがあります。

デメリット:財務リスクと負債の引き継ぎ

飲食店M&Aにおいて、財務リスクや負債の引き継ぎは重要な課題です。例えば、買収先企業が多額の負債を抱えている場合、その負債も引き継ぐことになります。これにより、買収後のキャッシュフローが圧迫され、経営が困難になるリスクがあります。また、買収先企業が過去に税務上の問題を抱えていた場合、その問題が表面化し、追加の税負担や罰金が発生する可能性もあります。さらに、未払いの取引先債務や訴訟リスクも引き継ぐことになるため、これらのリスクを適切に評価し、対策を講じることが必要です。

これらのリスクを回避するためには、事前調査(デューデリジェンス)が非常に重要です。デューデリジェンスを通じて、買収先企業の財務状況や負債の詳細を徹底的に調査し、潜在的なリスクを明らかにします。具体的には、財務諸表の分析、税務調査、法務デューデリジェンスなどを行い、問題点を洗い出します。これにより、買収価格の適正化や契約条件の調整が可能となり、リスクを回避、移転することができます。

まとめ

飲食業界はコロナ禍の不況を経て業界再編が進んでいる業界です。
業界全体のコロナ対策や技術発展についていくことが難しい中小企業が苦境にある一方で、事業拡大のためM&Aを狙う大手企業も多いです。
紹介してきたように業界ならではの論点やプロセス上のポイントを理解している、経験豊富なアドバイザーに相談することをおすすめします。

監修者情報

山田コンサルティンググループ株式会社
コーポレートアドバイザリー事業本部
企画室