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コラム

更新日:2025/03/18

テーマ: 07.不動産

次世代が困らない不動産承継対策 第7回

本コラムは「月刊 地主と家主」2024年3月号に掲載されたものです。

土地の収益を上げて財産を守る! ~次世代により多くの財産を残すために~

相続税が高い日本においては、代々受け継いできた大切な不動産を守りたくても、何も対策をしなければ相続のたびに手放すことになります。より多くの不動産を次世代に残すためには、不動産の収益性を高めて相続に備える必要があります。不動産承継対策に携わってきた6人のコンサルタントが、その経験をリレー形式で伝える本連載。第7回は、“財産を守るために収益を上げる”ことの重要性について解説します。

少しでも多くの財産を残す

相続で引き継いだ土地を、どうしたらより多く次世代に残せるのか、対応策に悩む地主の方は少なくないようです。
都内の地主A氏の例を紹介します。A氏の家は代々続く地主で、多くの土地を所有していました。A氏の父親が亡くなり、相続税納税後、残された財産は時価10億円の貸し宅地(底地)と更地(駐車場)でした。
土地を貸し宅地や駐車場として賃貸した場合の利回りは、一般的に2%程度(所得税や固定資産税を差し引くと1%台)です。少しでも多くの財産を次世代に残したいと考えた場合、A氏は今後どのような対応をすべきでしょうか。ここで、土地を賃貸の収益を得ながら保有した際の利回りの違いと、それに対して将来的に残る財産の変化を検証してみます(表1) 。なお、便宜的に、保有コストや地価の変動などは考慮しないこととします。

【表1】一定の利回りで保有した場合の財産の変化イメージ(円)

税引き後の
利回り1.0%
2.0% 3.0% 4.0%
当初 引き継いだ
財産
10億 10億 10億 10億
30年後 30年間保有
した後の財産
13億 16億 19億 22億
1回目の
相続発生後
7億5750万 9億1037万 10億5680万 11億9180万
60年後 さらに30年間保有
した後の財産
9億8250万 14億5037万 19億5680万 23億9180万
2回目の
相続発生後
5億9576万 8億3424万 10億8236万 12億7811万

※机上での計算です。実際の金額とは異なります

【前提条件】
●保有するのは時価10億円の土地(相続税評価額は路線価で8億円)
●30年おきに相続が発生、相続人は1人
●不動産から得た収益は生活費に充当せず、再運用もしない

具体例として、引き継いだ時価10億円の土地を、税引き後の利回り1%で賃貸し続けた場合について説明します(表1太枠部分)。年間の賃料収入は1000万円(10億円×1%)。30年間保有して得た収入は合計3億円(1000万円×30年)で、時価10億円の土地と合わせて財産は13億円になります。

【表2】1回目の相続税の計算式

土地 現預金 相続税評価額
(10億円×80%=8億円) (1000万円×30年=3億円) 11億円
※土地の相続税評価額は、時価10億円×80%と仮定して計算しています

相続税評価額 基礎控除 課税遺産総額
11億円 (3000万円+ 600 万円) 10億6400万円

相続税額

課税遺産総額 税率 控除額
10億6400万円 × 55% 7200万円 5億1320万円

A氏が亡くなり、土地8億円(相続税評価額)と現預金3億円に対する相続税は5億1320万円(表2)。賃貸収入で得た現預金3億円と駐車場の一部を売却して納税し、時価7億5000万円の土地が残りました。A氏の次の代も引き続き1%の利回りで賃貸し続け、30年間で2億2500万円(7億5000万円×1%×30年)の収入を得ました。財産は当初の財産10億円近くまで増えましたが、2回目の相続発生時も、賃貸で得た収入だけでは相続税が賄えません。そこで前回の相続時と同様、土地の一部を売却して納税します。相続税納税後、約6億円近い財産が残りましたが、60年間で約4割の財産を失ってしまいました。
一方で、3%以上の利回りで賃貸した場合は、士地を売却することなく10億円の財産を守ることができています。より多くの財産を次世代に残すためには、A氏は引き継いだ財産を利回り1%程度でそのまま保有するのではなく、さらに収益を上げるための対策を講じることが必要となります。

土地の収益を上げる方法

では、具体的にどうすれば土地の収益を上げられるのでしょうか。次の三つの手法を紹介します。
①地代の見直し
②土地の有効活用
③資産の組み換え

①の地代の見直しについてです。先代の頃から何十年も地代を改定していない場合があります。現在の水準に見合った地代ではない可能性があるため、現在の地価や固定資産税などと照らし合わせて確認します。
②の土地の有効活用として一般的に広く知られているのは、「賃貸アパートを建てる」手法ですが、立地条件などによっては不向きな場合もあります。「定期借地権方式」や「建設協力金方式」など、そのほかの活用手法とも比較検証したうえで、ベストな選択をしたいものです。ただし、いずれの手法もそれぞれリスクがありますので、十分に理解したうえで総合的に判断し、実行することが必要です。
③の資産の組み換えは、収益性の低い不動産を売却して、別の収益性の高い不動産を購入する手法です。地代の改定など、収益の改善が見込めない場合や、さらなる収益向上を図る場合などに有効です。
代々受け継いできた土地を自分の代で手放すことに括抗がある人も多いようです。しかし、わずかな収益しか生まない不動産をそのまま保有し続けていると、結局のところ相続で手放すことになります。
A氏のケースでは、まずは①地代の見直しをし、収益向上が図れないのであれば③資産の組み換えを。駐車場については②の有効活用を実行することで、次世代により多くの財産を残すことが可能になると考えます。

次世代とも連携を

より多くの財産を次世代に残すためには、収益性を高めることが必要不可欠だということがわかりました。とはいえ、次世代から「貸し宅地を残されては困る」「賃貸用不動産は相続したくない」などと言われてしまっては元も子もありません。何を残し、何を納税資金に充てるべきかなど、保有する不動産の価値・収益性を正しく把握したうえで、次世代と連携しておくことも重要です。

解説者紹介

山田コンサルティンググループ株式会社
不動産コンサルティング事業本部 営業部
シニアコンサルタント
宮尾 啓子(みやお けいこ)

宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター。賃貸物件の仲介・管理の経験を経て、2008年、TFP不動産コンサルティング(現山田コンサルティンググループ)に入社。不動産の売買仲介や有効活用、収益用不動産の購入コンサルティングなど、幅広い役務経験から顧客の資産承継を支援。

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