海外ビジネス情報
更新日:2026/08/10
テーマ: 03.海外ビジネス
中国事業で競争力を高める戦略再構築のポイント
~中国企業との連携・共創を踏まえた次世代中国戦略~
本稿は2026年7月29日開催のWebセミナーの講演内容を編集・要約したものです。
中国は欧州、ASEAN・アフリカ・中南米などグローバルで影響力を強め、着実に中国経済圏の拡大を図っています。今後、中国国内のみでのバッティングから、中国以外の第三国で中国企業とバッティングする機会が増大することになります。これにより、日本企業には「脱中国」、「中国依存低減」に加え、中国企業や海外の華僑との連携も視野に入れた「中国内での地産地消」および「中国発の第三国展開」、「第三国での中国企業との連携」などの多面的な戦略の再構築が求められています。本稿では、実際の経営判断や事業運営にお役立ていただけるよう、中国における日系企業の課題やリスクを整理分析し、中国事業の成功事例を紹介し、日本企業の取り得る選択肢を分かりやすくお伝えします。
1. 直視すべき4つの現実
第一に、外部環境は「変化」ではなく「断絶」が起きています。米中対立に伴う関税・輸出規制・投資規制が同時進行し、中国国内でもデータ安全法などの運用強化が進み、事業継続の前提条件そのものが変わっています。
第二に、競争相手が入れ替わり、中国の外にも拡大しています。中国企業が主役となり、ASEANや中東・欧州など第三国においても日本企業が中国企業と直接競合する場面が増えています。
第三に、サプライチェーンの内側から競争構造が崩れています。自動車業界では日系サプライヤーの系列内調達に代わり、中国系サプライヤーの直接採用(現調化)が進み、コスト・品質・スピードで上回る場面も出ています。
そして最も深刻な第四は、この変化を直視できていないことです。5〜10年前の中国像が意思決定の前提として残り、現地の実態が本社に正確に伝わっていないケースが少なくありません。
2. 4つの戦略オプションと選択の視点
これらの現実を前提に、日本企業が取り得る戦略は次の4つに整理できます。
| オプション | 内容 | 対象となりやすい領域 |
|---|---|---|
①脱中国 | 撤退・移転・代替 | 先端半導体、防衛関連、原薬・バイオなど安全保障規制の直撃を受ける領域 |
②依存低減・見直し | チャイナ+1によるリスク分散 | 汎用化学品・レアアース、汎用電子部品など |
③地産地消 | 中国市場向けを中国で完結(in China, for China) | 自動車・EV、パワー半導体、医薬品・化粧品など |
④第三国中華共創 | 第三国で中国企業と連携し共創へ転換 | ASEANの自動車部品、インフラ、越境EC・物流など |
重要なことは、これらを「業界」や「企業」単位で判断しないことです。扱う商材や事業部によって適した戦略は異なり、同一企業内で複数のオプションが併存し得ます。
3. 戦略再構築の実例
拠点や売上規模の拡大ではなく、「何を残し、何を現地化するか」を選び直した3社の事例を紹介します。
レゾナック・ホールディングス:ポートフォリオ変革
半導体・電子材料メーカーのレゾナックは、半導体・電子材料の売上構成比を現在の約38%からさらに拡大させる方針を掲げています。中国売上比率は2020年の約12%から2025年に約14%まで上昇していますが、注目すべきは規模ではなく事業の選別です。蘇州拠点(半導体用封止材等)は増設する一方、アルミ圧延品や鉛蓄電池などの事業は事業譲渡・生産停止によりカーブアウトを進めています。
この事例からは、将来の競争力を基準に事業ごとの継続・撤退を判断し、リソースを中核事業へ再配分する発想が示唆となります。

パンチ工業:ニッチ領域への深化
金型部品メーカーのパンチ工業は、中国企業と大量生産品で競うのではなく、特殊品領域での専門性を武器にしています。中国売上高は2012年の約100億円から2025年に約249億円まで拡大し、中国売上比率は約40%から約59%まで上昇。近年は中国系の新エネルギー車(NEV)メーカーとの取引を収益の柱としています。
この事例からは、 中国企業との正面競合を避け、顧客の需要構造の変化を先取りすることが持続的成長につながるという示唆が得られます。

サイゼリヤ:調達・生産体制の現地化
店舗数拡大だけでなく、短期的な利益を追わず取組みを継続する経営姿勢のもと、食材の調達・生産・物流の現地化を進めてきました。中国を中心とするアジアの売上高は2013年の約205億円から2024年に約838億円まで拡大し、サイゼリヤの全社利益の65.4%をアジアが占めています。賃料の安い高層階・地下区画を選ぶ出店戦略と、自社での現地調達・生産体制が収益を支えています。
この事例からは、店舗数の拡大を目的化せず、供給網を含めた事業モデル全体を現地に適合させることが持続的な収益確保につながるという示唆が得られます。

3社に共通するのは、「残るか出るか」の二択ではなく、事業のどの部分を現地化し、どの部分を絞り込むかを具体的に選択している点です。
4. 中国企業との連携という選択肢
中国企業との連携による選択肢を具体化すると、連携の形は資本関係の深さと地理(中国国内/第三国)の2軸で整理できます。
中国企業との連携・共創を踏まえた次世代中国戦略のマトリクス
| 非資本(契約) | 資本を伴う連携 | 深い資本連携 | |
|---|---|---|---|
中国国内 | ①技術ライセンス | ⑥新規JV組成 | ⑨資本参加・買収 |
第三国 | ②OEM供給(海外向け) | ⑤海外JV・共同PJ | - |
その他・ | ④標準化・コンソーシアム参画 | - | ⑪CVC戦略投資 |
実務上は、契約ベースの協業を通じて相手企業を見極め、信頼関係を構築したうえでJV化など資本を伴う連携に進む段階的なアプローチが多く見られます。昨今、中国企業は価格競争力に加え、世界で通用する技術力も具備し始めています。一部のハイテク領域では、日本を凌ぐ技術力を有している分野も出てきています。日本含むグローバル市場で中国企業とバッティングする機会が増えることを前提として、今後の戦略を考えなければなりません。日本本社を含めた資本提携も選択肢に入れる必要があります。
本セミナーのさらに詳しい内容については、下記からアーカイブ配信およびセミナー資料をご参照ください。
執筆:上海現地法人 山田商務諮詢(上海)有限公司
(山田コンサルティンググループ株式会社 中国現地法人)
本レポートに関するご感想、ご質問は下記問合せフォーム、またはメールにてお寄せ下さい。
https://www.yamada-cg.co.jp/contact/
メールの方はこちら
[email protected]
海外ビジネス情報内の人気・注目記事ランキング
関連記事
03.海外ビジネス



