お問い合わせ

コラム

更新日:2026/09/16

テーマ: 03.海外ビジネス

第2回 インドネシアのコーヒー産業:
世界市場への輸出拡大とサプライチェーン連携の可能性

コラムシリーズ:インドネシア市場探訪では、インドネシア現地から、変化する市場動向や注目産業をお伝えします。

第2回は、インドネシアのコーヒー産業:世界市場への輸出拡大とサプライチェーン連携の可能性です。

概要

世界のコーヒー市場でインドネシアは主要な地位を占めていますが、いま大きな転換期を迎えています。従来の生豆輸出中心から、加工や小売まで事業領域が広がる中、インドネシアには新たな事業機会が生まれています。

インドネシアのコーヒー産業の強みは、ロブスタ種の生産規模が大きいことと、アラビカ種の産地が多様であることにあります。こうした強みに加え、国内消費の拡大やコーヒーショップ市場の成長を背景に、生豆の輸出にとどまらない、さまざまな事業機会が考えられます。

インドネシアのコーヒー市場を理解する3つのポイント

  1. ①注目される理由:ロブスタ種の大規模生産とアラビカ種の産地多様性により、世界コーヒー市場を支える主要な生産国である。
  2. ②市場のトレンド:スペシャルティコーヒー需要の拡大とカフェ文化の広がりが、川下分野の成長をけん引している。
  3. ③事業展開の鍵:調達の持続可能性、加工技術、サプライチェーン連携が長期的な競争力の源となる。

世界有数のコーヒー生産国としてのインドネシア

世界有数のコーヒー生産国であるインドネシアには、海外需要の拡大と国内需要の高まりを背景に、戦略的事業展開の可能性があります。
米国農務省(USDA)の「Coffee: World Markets and Trade」によると、2025/26年度の世界のコーヒー生産量は、約1,073万トン(1袋=60kg、1億7,880万袋)に達する見通しです。
国別では、ブラジルが約378万トンで最大の生産国となり、ベトナムが約185万トン、コロンビアが約83万トン、インドネシアが約75万トン、エチオピアが約69万トンで続く見込みです。

図1. 世界のコーヒー生産量上位5カ国(2025/26年度予測、1袋=60kg)

出所:USDA Foreign Agricultural Service, Coffee: World Markets and Trade, December 2025.

 

インドネシア中央統計庁(BPS)の統計によると、インドネシアの乾燥コーヒー豆の生産量は2024年に約81.3万トンでした。州別では、南スマトラ州が約22.0万トンで最も多く、次いでランプン州が約12.0万トン、北スマトラ州が約9.2万トン、アチェ州が約7.4万トン、ベンクル州が約5.6万トンです。
スマトラ島は、インドネシアのコーヒー生産量を支える主要な生産地域です。

図2. インドネシアの乾燥コーヒー豆の生産量上位5州(2024年)

全国の乾燥コーヒー豆生産量:約81.3万トン | 生産量上位5州:国内生産量の69.0%
出所:BPS-Statistics Indonesia, Indonesian Permanent Estate Crops Statistics 2024

ロブスタ種とアラビカ種が市場を相互に補完

インドネシアのコーヒー産業の強みは、ロブスタ種の生産規模が大きいことと、アラビカ種の産地の多様性にあります。
USDAによると、スマトラ島ではインドネシアのコーヒー豆生産量の約70~75%が生産されています。インドネシアのコーヒー生産量の80~90%を占めるロブスタ種は、南スマトラ州、ランプン州、ベンクル州を中心に生産されています。アラビカ種はスマトラ島北部に加えて、ジャワ島、スラウェシ島、パプア地域の高地でも生産されています。

こうした品種構成により、インドネシアは市場に幅広く対応できます。ロブスタ種は、インスタントコーヒー、粉末状のソリュブルコーヒー、また、RTD(すぐに飲める形態の)飲料などのマスマーケット向け製品に使われます。一方、ガヨ、マンデリン、ジャワ、トラジャなどの産地に代表されるアラビカ種は、スペシャルティコーヒーやプレミアムコーヒー市場でインドネシア産コーヒーの市場プレゼンスを高めています。

インドネシア産コーヒーへの需要が高まる世界市場

世界コーヒー市場の需要は引き続き底堅く、生産規模や産地の多様性を備えた生産国にとって、輸出機会が広がっています。
USDAは、2025/26年度の世界のコーヒー輸出量が約743万トン(1袋=60kg、1億2,380万袋)に達し、世界の消費量は約1,043万トン(1袋=60kg、1億7,390万袋)に達すると予測しています。インドネシアでは、生産規模を背景に、EU、米国、エジプト、ASEAN、日本、中東などに生豆を輸出しています。

産地独自の味わい、スペシャルティグレードの豆、サステナビリティやトレーサビリティの要件への対応などを背景に、インドネシア産コーヒーには大きな可能性があり、インドネシアの輸出機会は生豆に限らず、焙煎コーヒー、ソリュブルコーヒー、プライベートブランド製品など付加価値の高い製品にも広がっています。
こうした動きは、インドネシアがコモディティの供給国から、より幅広い役割を担うグローバルなコーヒーパートナーへと発展する可能性を示しています。

インドネシア国内のコーヒー市場も拡大中

国内のコーヒー市場では、カフェ文化、テイクアウト型コーヒーチェーン、RTDコーヒー、ECによるコーヒーの販売、家庭用コーヒーメーカー、モバイルカフェなどの人気が高まっています。

インドネシアのカフェ・バー市場は、2023年に約20億ドルの売上を生み出しました。インドネシアのブランド系コーヒーショップ市場は7,000店を超えており、2030年末までに1万400店を超えると予測されています。
インドネシアのコーヒー産業は、農業や生豆の輸出だけで成り立っているわけではありません。モダントレードへのシフト、利便性を重視する消費者、現地コーヒーブランドの成長を背景に、川下分野を含む産業へと広がっています。

このように、インドネシアのコーヒー産業は、農家による生産や生豆の輸出だけでなく、加工、製造、流通、小売、カフェなど、消費者に商品が届くまでの幅広い工程によって構成されています。

以下の図は、インドネシアのコーヒー・バリューチェーンを、川上から川下まで簡略化して示したものです。各段階には、品質向上、付加価値化、輸出拡大、ブランド構築、サプライチェーン連携などの事業機会があります。

図3. コーヒーのバリューチェーン

輸出機会を生み出す世界のトレンド

インドネシアのコーヒー輸出を考えるうえで、特に重要な3つのトレンドがあります。

スペシャルティコーヒー需要の拡大

消費者は、品質、産地の透明性、コーヒーの個性や味わいを重視するようになっています。2025年のNational Coffee Data Trends(NCDT)Specialty Coffee Reportによると、米国ではスペシャルティコーヒーの消費が過去最高水準に達しています。この調査は米国市場を対象としていますが、世界市場に大きな影響を与える米国市場での動向として注目されます。

RTDコーヒーなど利便性の高い商品の普及

すぐに飲める商品への需要が高まるなか、RTDコーヒーは現代の生活スタイルに合った商品として特に若年層の間で人気が高まっています。インドネシアにとっては、生豆の輸出だけでなく、消費者向けの加工済み製品へ展開する機会となります。

サステナビリティとトレーサビリティへの対応

欧州委員会によると、欧州破壊防止規則(EUDR)はコーヒーを対象品目に含んでいます。2026年12月30日以降、EU域内に初めて上市される、EU域内で販売される、またはEUから輸出される対象製品については、森林破壊に関与しておらず、生産国の関連法令に従って生産されたものであることが求められます。
EUDRへの対応では、認証や第三者検証の活用も考えられますが、より重要なのは、トレーサビリティ情報の収集・管理体制の構築です。生産者との情報共有、農園の位置情報管理、取引記録の保管など、デューディリジェンスプロセスの整備が事業参入の前提条件となります。

生産規模、産地の多様性、成長が見込まれる川下産業を踏まえると、インドネシアには、スペシャルティコーヒーの生産者、加工拠点、地域のサプライチェーンパートナーとの連携などの領域で、事業を展開する余地があります。こうした事業機会を生かすには、戦略的なパートナーシップと投資が重要です。

インドネシアのコーヒーサプライチェーンが抱える課題

インドネシアのコーヒーサプライチェーンには、大きな成長余地がある一方で、構造的な課題もあります。

品質と供給量のばらつき

小規模農家が生産の中心を担っているため、組織的な支援がなければ、品質基準を統一し、一定量を安定的に供給することが難しくなります。

加工・インフラの制約

収穫後の処理、乾燥、選別、保管には地域差があります。こうした差が、コーヒー豆の品質や輸出に向けた準備状況に影響する可能性があります。

輸出・物流上の参入障壁

トレーサビリティ情報や取引先情報の管理、サステナビリティ要件や各種書類要件への対応は、今後ますます重要になります。特にEU向けでは、EUDRに関連する情報提供やデューディリジェンスへの協力が重要になると考えられます。

生産者と市場をつなぐ仕組みが未発達

農家、協同組合、焙煎業者、輸出業者、バイヤーの間には、より緊密な連携が必要です。連携を強化することで、品質、生産性、価格の透明性を改善しやすくなります。

UGMの指摘が示す課題

ガジャマダ大学(UGM)は、インドネシアを代表する高等教育機関の一つであり、2026年3月に発表した調査報告書の中で、さらに深刻な構造的課題を指摘しました。農園の生産性の低さ、品質のばらつき、一部のサプライチェーンにおける仲買人への依存などが、インドネシアのコーヒー産業の競争力を阻害しているというものです。

これらの課題を踏まえ、品質改善や農家の所得向上に向けて、技術革新、農家支援、コーヒー関連企業との連携などの重要性が示されています。こうした課題は、サプライチェーンパートナーとの連携や農家支援プログラムの必要性を高めています。

パートナーシップと事業機会

インドネシアのコーヒー産業では、以下のようなバリューチェーンの各段階において、幅広いパートナーシップの機会があります。

調達・輸出に関する連携

スマトラ、ジャワ、スラウェシ、パプアなどの産地と海外バイヤーを結びつける取り組みです。

焙煎・加工・プライベートブランド

生豆の輸出だけでなく、焙煎コーヒー、ソリュブルコーヒー、RTDコーヒー、海外市場向けのカスタム製品へ展開する機会があります。

小売・カフェ事業の拡大

国内カフェ文化やコーヒーブランドの成長、中規模都市・小規模都市への店舗展開を生かし、消費者が製品に接する機会を増やすことができます。

責任ある調達と農家支援

トレーサビリティを備えたサプライチェーンの構築、品質基準の改善、国際的なサステナビリティ要件への対応を進める取り組みです。

デジタル・モバイルコーヒー事業

デリバリープラットフォーム、ECによるコーヒーの販売、モバイルカフェ、EVを活用したカフェモデルなどを通じて、新たな事業形態へ展開する余地があります。

 

これらの機会は、インドネシアのコーヒー産業が、現地の起業家に加え、調達、市場参入、ブランド構築、サプライチェーン開発を目指す海外企業にとっても、協業の基盤となり得ることを示しています。

インドネシアのコーヒー産業の今後

インドネシアのコーヒー産業は、単なる原料供給から、イノベーション、川下分野の発展、国際需要の拡大に支えられた、より統合的で付加価値の高い産業へと変化しています。

生産規模が大きく、産地も多様で、国内市場も拡大していることから、インドネシアには世界のコーヒー市場で競争力を高める余地があります。

このような成長機会を生かすには、⑴品質改善と農家支援、⑵サプライチェーン開発、⑶ブランド・小売展開という3つの重点領域で、戦略的なパートナーシップと投資を進めることが重要です。

 

 

関連レポートのご案内
山田コンサルティンググループの海外ビジネス情報サイトでは、さまざまな国や産業・ビジネス環境について、レポートで詳しくご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

インドネシア食品市場におけるハラール認証の重要性とビジネスチャンス

タイのフードサービス業界
~変化する消費者志向と競争環境から読み解く成長機会~

インドネシアにおける医療機器国産化の動向と、外資企業の国内外拡販戦略

米国の成功事例に学ぶ – スーパーマーケットの差別化の方向性

本レポートに関するご感想、ご質問は下記問合せフォーム、またはメールにてお寄せ下さい。
https://www.yamada-cg.co.jp/contact/

メールの方はこちら
[email protected]

【メールマガジンご登録のご案内】
a419e6a0960f0a07cb640db2b55c90d6

【買収ニーズご登録のご案内】
a419e6a0960f0a07cb640db2b55c90d6