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更新日:2025/05/19
テーマ: 03.海外ビジネス
タイのファシリティマネジメント市場におけるテクノロジーと持続可能性の未来
近年、タイではファシリティマネジメントが、ビルの生産性や効率性を左右する必要不可欠なサービスとして認知されつつある。こうしたサービスは、主に不動産市場の成長と、スマートビルなどの新たなトレンドに後押しされて、施設の生産性や効率性の向上に寄与している。また、エネルギーソリューションの採用やソフトウェアの導入など、施設における持続可能性の追求や技術導入の高まりが、今後の市場成長を牽引する主要トレンドとして浮上している。
一方で、資金的な制約、技術導入に対する意識改革の限界、高スキル人材の不足などの課題もある。
それでも、こうしたトレンドや課題は、ファシリティマネジメント企業にとって競争力を強化するための成長ドライバーともなっている。
目次
タイのファシリティマネジメント市場の概要
タイのファシリティマネジメント市場全体の2022年~2028年における年平均成長率は7.6%と見込まれており、今後の成長が期待されている。

タイのファシリティマネジメント市場のセグメンテーション
ファシリティマネジメント(FM)は、企業や組織がその施設や設備を効率的に管理・運営するための総合的なサービスをいう。
FMのセグメンテーションには、主に「インハウス」と「アウトソーシング」の2つの形態に大別される。

ファシリティマネジメント市場の分類:サービス種類別
FMのサービスの種類は、ハード面、ソフト面、付加価値型の3つに分類される。

不動産市場の動向
不動産市場の動向がファシリティマネジメント(FM)市場に与える影響は極めて大きく、不動産市場の成長はFM市場の成長に直結する。
新型コロナウイルス後の不動産市場は、2022年に低層住宅・コンドミニアムとオフィスビルの状況が回復し、全体的に成長の兆しを見せている。
さらに、スマートビルなど不動産市場における新たなトレンドは、不動産プロジェクトへの投資の増加と相まって、今後、FM需要を拡大し市場の成長機会を創出することが期待される。

タイにおけるファシリティマネジメント市場の最新動向
タイのファシリティマネジメント(FM)市場は、新型コロナウイルス感染拡大以降、成長が加速している。これは、様々な組織が施設利用者の快適性向上だけでなく、組織の効率性と生産性を高めることでFMの重要性と利点を理解し始めたためである。
2022年のFMの売上高の合計は47億1,500万米ドル(1,652億4,400万バーツ)で、そのうちの49.3%がインハウスのFM、50.7%がアウトソーシングのFMであった。

2022年から2028年にかけての売上高年平均成長率予測は、インハウスのFMが7%、アウトソーシングのFMが8.1%と、アウトソーシングFM の方が若干早いペースで成長する見通しである。
アウトソーシングのFMについては、特に清掃や警備といった労働集約的なノンコア業務サービスを委託するデベロッパーや企業が増加している。
アウトソーシングのFMが人件費の圧縮、柔軟なサービス提供、高スキル人材の確保、専門知識獲得の容易化、新型コロナウイルスによる労働力不足の補完といったメリットをもたらしたためである。
インハウスのFMも同期間中に成長を見せている。要因としては、様々な不動産会社が既存事業の拡大や、インハウスのFMサービス拡充のための新規事業の立ち上げを実施していることがあげられる。
例えば、LPN Development Groupの子会社であるLPP Property Management Co., Ltd. は、2022年にブランド名を変更し、統合ファシリティマネジメント(IFM)サービスにより重点を置くようになった。また、Origin Property Groupの子会社であるPrimo Service Solutions PCLは、2022年に新規事業に進出し、このセクターでの市場シェアを拡大している。
2022年のアウトソーシングのファシリティマネジメント(FM)の売上高は、73%をソフト面のサービスが占め、これにハード面のサービス(14%)、付加価値型サービス(13%)が続いた。
その内訳をみると、清掃サービスが28%と最も割合が大きかった。これは、新型コロナウイルスにより、全セクターのエンドユーザーが衛生環境の強化を迫られ、需要が高まったことが主な要因である。
しかし、2022年から2028年にかけて9%と最も速い成長が予測されているのはハード面のサービスである。主な要因は、不動産開発の拡大、エネルギー効率化需要の高まり、建物関連基準の遵守をより厳格に求める政府の取り組みなどである。
したがって、デジタル化プロセスを含むハード面のサービス需要は、FM市場全体の成長ドライバーとなることが予想される。

近年、商業開発プロジェクト、特に複合施設や高級ビルの増加に伴い、統合ファシリティマネジメント(IFM)サービスの需要が高まっている。
今後、持続性の向上やデジタル・トランスフォーメーションに関わる需要の拡大に後押しされて、市場は急成長することが予測される。
2022年、タイのIFMの市場規模は、2億500万米ドル(72億100万バーツ)、Non-IFMの市場規模は21億8400万米ドル(765億3,700万バーツ)となった。
IFM市場は2022年から2028年にかけて、年平均成長率15%という高い伸び率で成長すると予測されている。
IFMの成長を促す要因は主に、大規模複合用途ビルやAグレードビル、特にバンコク首都圏内のビルの増加である。
さらに、グリーンビルやデジタルトランスフォーメーションが重視されるようになったことも、IFMサービスの需要増加を後押ししている。
シームレスなサービスを一括で提供するIFMについては、商業開発プロジェクト、特に複合施設や高級施設において、高品質のサービスや期待を上回る顧客体験を提供する需要がますます高まっている。
IFMサービスを活用することで、企業は管理の質向上を促進し、確実で円滑な運営が行える上、運営コストも削減できる。

One Bangkok は、TCC Assets Thailand と Frasers Property Holdings が共同開発したタイ最大級の複合施設で、バンコクの一等地、ワイヤレス通りとラマ4世通りの角に位置する。
このプロジェクトにおいて、JLLはOne Bangkokと協同し、Aグレードのオフィスビル、商業ビル、高級ホテル、住宅タワー、全体の共用部を含む全施設に対して統合ファシリティマネジメント(IFM)サービスを提供している。


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タイのファシリティマネジメント市場の主要企業
主要トレンド
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執筆:YAMADA Consulting & Spire(Thailand) Co., Ltd.
(山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)
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