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更新日:2025/05/19
テーマ: 03.海外ビジネス
世界が誇る水産加工品の輸出国タイが目指す さらなる成長
世界有数の水産加工品の輸出国であるタイには、関連するインフラが十分に整備され、専門知識も蓄積されている。
漁獲量の減少、水産資源の持続可能性、競争の激化など、多くの課題に直面する中でも継続的な改善策を講じることで、タイの水産加工業は市場ポジションを維持している。
タイ経済全体への影響も大きい水産加工業には、様々な事業機会がある。例えば、新たな水産加工品の開発による高付加価値化や自動化技術の導入による生産効率の向上などを通じた、バリューチェーン全体の改善が期待される。一方、養殖業は、タイ水産業の持続可能性の向上に貢献している。
こうした要因に支えられ、タイ水産加工業は、今後も市場ポジションを維持すること、また長期的には、さらなる成長を果たすことが期待できる。
目次
概要
タイは世界有数の水産加工品輸出国である。
タイの水産加工品は、その多くが輸出向けであり、缶詰、冷蔵・冷凍、調理・保存に大別される。

タイの漁業・養殖業
漁業・養殖業の生産量
タイの漁業・養殖業の生産量の半分以上は、海洋漁業によるものである。
全体の生産量は減少傾向にあり、その結果、水産加工業は原材料を輸入に頼らざるを得なくなっている。

タイの漁業・養殖業の生産量は年平均成長率マイナス1.8%で減少しており、その主な原因は乱獲、養殖コストの上昇、水棲動物の病気、漁業規制による海洋漁業活動の減少である。
水産加工品の主原料である海洋漁業と沿岸養殖による2023年の生産量はそれぞれ130万トンと50万トンであり、タイの水産加工品生産にとって十分な量とはいえない。
水産加工品の主原料の生産量
主要な水産加工品の原材料が不足している。
タイでは、通常マグロやカツオは輸出用のツナ缶加工のために漁獲されるものではない。またカツオの漁獲量は十分とはいえない。
タイのエビ養殖生産は、感染症の早期死亡症候群(EMS)発生の影響を受けた後、回復していない。

コシナガマグロとスマはタイで漁獲される主なマグロ・カツオ類であるが、国外向けの缶詰加工にはあまり適していないため、国内の消費や外食産業向けとして利用されている。
タイで獲れるカツオの量も、特に輸出用の缶詰生産には不十分である。
また、世界のマグロ・カツオの供給は厳しい気候変動と乱獲によって打撃を受けており、長期的にはタイのツナ缶加工業に影響を与える可能性がある。
タイのエビ生産量はEMSが発生した2013年には、2012年比で、ほぼ半減し、それ以降も回復が遅い。
水産加工品の輸入
水産加工品の輸入が増えている。タイは水産加工、特にツナ缶製造の原材料の需要を満たすため、主に冷蔵・冷凍品を輸入している。
主な品目としては、マグロ・カツオ、その他丸魚、イカ・タコ類の冷蔵・冷凍品があげられる。

主な水産加工品の生産量
タイでは、イワシの缶詰を除く水産加工品は主に輸出向けである。イワシの缶詰はそのほとんどが国内で消費されている。
タイは世界有数のツナ缶の生産拠点であり、年間約60万トンの生産量を誇る。

タイの消費者は新鮮な魚介類を好むため、タイの水産加工品は主に輸出用である。
タイはツナ缶の主要生産地で、年間約60万トンを生産している。Thai Union や Sea Value などの大手メーカーは、世界のツナ缶主要ブランドの多くを手掛けている。
冷凍魚の生産は、外食業界などによる国内需要の増加や、消費者行動(利便性や保存期間の長さから冷凍製品を選ぶなど)の変化による輸出需要の増加により、他の水産加工品を上回るペースで成長している。
水産加工品の輸出
過去の実績
タイの水産加工品輸出は、2007年から現在まででみると減少傾向となっている。主な要因は競争力の低下である。
生産コストの高騰、非関税障壁、漁業・養殖業の生産量減少が生産者の競争力低下をもたらし、より魅力的な価格を提示する競合他社に取引相手を奪われている。

タイの水産加工品をめぐるこれまでの状況
タイは、インフラが整っており、水産加工品の質の高さで定評があるにもかかわらず、さまざまな要因による競争力の低下で、輸出が減少傾向にある。
生産コストの高騰:
人件費の上昇と漁業に対する規制の厳格化による追加コストに起因する。
競争力の低下:
特に冷凍エビなどの低付加価値製品については、輸出業者間の価格競争が激化している。
非関税障壁:
タイ漁業の持続可能性に対する懸念から、EUの一般特恵関税(GSP)**制度の対象から外され、非関税障壁が適用されることになった。
漁業・養殖業生産量の減少:
エビの病気、気候変動、漁業に対する規制の厳格化などの影響により、国内の漁業・養殖業の生産量が減少しており、長期的な原材料の確保が困難になっている。
主要カテゴリーと製品
タイの水産加工品は、缶詰、冷蔵・冷凍、調理・保存・加工の3つに大別される。それぞれの主な製品は、ツナ缶(84%)、冷蔵・冷凍エビ(53%)、調理・保存エビ(46%)である。

ツナ缶
2023年は、原材料であるマグロ・カツオの供給量の減少および主要市場での需要低迷により、ツナ缶の輸出が減少した。主な輸出先は米国、日本、オーストラリアなどである。
タイは、国内ツナ缶メーカー競争力が高いことで、ツナ缶主要生産国としての地位を維持している。

冷蔵・冷凍エビ加工品
タイのエビの冷蔵・冷凍品およびエビ加工品は、世界市場で優位性があるとみなされている。しかし、EMS発生による養殖生産量減少からの回復の遅れや、エクアドル、インドネシア、インド、ベトナムといったコストの安い国々との競争激化により、冷蔵・冷凍品や加工品の輸出は最近減少している。
中国と台湾は、消費者需要の高まりにより、冷蔵・冷凍エビのターゲット市場として急拡大している。

タイのエビ生産・加工業者の強み
強力な供給ネットワーク ・タイには、孵化場から、養殖、加工、国内および国外の流通網に至るまで、強力なエビのサプライチェーンがある。 |
品質の高さ ・エビの生産に必要なスキルの高い労働者を確保している。 ・ハイテク生産による幅広い製品の提供で、市場の需要に応えられる。 |
国際標準の認証 ・エビ加工品の質の高さで世界的に知られている。 ・例えば以下を含む多くの国際的な認証を取得している。 ・適正製造規範(GMP) ・危害分析重要管理点(HACCP) |
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水産加工業のサプライチェーン
主要プレーヤー
タイ漁業の持続可能性と政府の支援
食品業界の主な動向
課題と機会
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執筆:YAMADA Consulting & Spire(Thailand) Co., Ltd.
(山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)
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