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2020/04/28

テーマ: 03.海外

中国におけるシルバーサービス業界の動向

目次

1.中国シルバーサービス業界の概要

取り巻く環境① 高齢者人口と割合の増加

高齢化社会とは、総人口に占める高齢者(本稿においては65歳以上)の割合が7%以上の状態を指す。

中国では、2002年から高齢化社会に突入し、2035年頃に超高齢化社会(総人口の20%以上)に入ると予測されている。

高齢者の人口は、2000年に0.88億人であったが、2020年には1.7億人になると見込まれ、中国社会の高齢化が加速していることが見て取れる。

取り巻く環境② 市場規模

市場規模は、2018年に6.2兆元となり、2024年には11.2兆元に達する見込み。2010年から2024年までの年平均成長率は16%となり、急成長していることが分かる。

一方、GDPに占めるシルバー産業の割合を見ると、先進国は20%以上であるのに対し、中国はわずか7%であり、業界全体がまだ初期段階にあると言える。

取り巻く環境③ 業界マップ

中国のシルバー産業とは、高齢者向け医・食・住・行・衣に関連するサービスと用品を提供する業界のことを指す。

そのため、シルバー産業は、大きく「シルバーサービス産業」と「シルバー用品産業」に分けられる。本稿では、シルバーサービス産業(主に介護サービス)を中心に論述する。

取り巻く環境④ 主要プレイヤー

シルバー産業における8つの事業の主要プレイヤーは、以下の通りである。

業界概要① 業界構造

中国のシルバーサービス体系は、「在宅養老」、「社区養老」、「施設養老」から構成される。

現在主流の養老方式は、在宅養老90%、社区養老7%或いは6%、施設養老3%或いは4%の、上海における「9073」モデルと北京における「9064」モデルである。

業界概要② バリューチェーン

シルバーサービス業界の川上は機器と施設のメーカーや人材育成学校であり、川中は養老施設とサービス提供者、川下はユーザー、つまり支払者となっている。

業界概要③ 中国社会保険の現状

中国社会保険の被保険者数は、2018年に13.4億人に達し、人口全体の95%以上をカバーしている。

しかし、医療保険は診察と入院費用しか給付対象となっていないため、介護費用は個人負担となる。

業界概要④ 日中介護保険の比較

2016年に中国人力資源社会保障部は「長期介護保険制度試行展開の指導意見」を発表し、中国の介護保険の試験運用が開始された。

現在中国では、加入対象が政府認定された長期的に介護が必要な人に限定されており、日本の被保険者数やシステムと比較すると中国の成熟度が低いことが分かる。

中国でも、将来的には対象者の拡大が見込まれ、人口規模を鑑みると、シルバーサービス業界のポテンシャルは日本を大きく上回る。

業界概要⑤ 政策

2002年に中国が高齢化社会に突入した後、政府はシルバーサービス業界の体系化構築に力を入れてきた。

そのため、次々と業界発展に向けた政策が発表されている。

2016年にシルバーサービス業界の全面開放に関する意見が発表され、2020年までに全面開放という目標が掲げられた。

政府と民間資本の提携促進により、2018年には中国シルバー産業が安定的に成長する段階に入った。

2.企業の成功事例

事例① 訪問介護の代表 福寿康

福寿康は在宅高齢者を主要ターゲットとし、長期介護・在宅看護・個人専用介護・リハビリ指導・認知症ケア等の訪問介護サービスを提供。2018年には4,000名の高齢者にサービスを提供している。

事例② 訪問介護とリモート介護の融合 安康通

安康通は設立20年の実績がある介護サービス提供者で、主に地方政府と提携し、在宅・社区・施設の高齢者に訪問介護及びリモート介護関係のサービスを提供している。

政府と緊密に提携しており、売上の90%近くは長期介護保険から得ている。

事例③ 社区介護施設の代表 誠和敬

国営企業である誠和敬は、介護施設のチェーン化と標準化を目指し、老人ホームブランド「誠和敬長者公館」と社区介護ブランド「誠和敬養老駅」を立ち上げ、高齢者にサービスを提供している。

また、専門人材を育成する「誠和敬学院」と高齢化向け住宅設計を行う「適老化設計センター」を設立し、シルバーサービス業界におけるチェーンの確立を目指している。

事例④ 医療・介護融合の老人ホーム代表 復星康養

復星康復養老産業発展集団はFOSUN Group傘下で総合的なシルバーサービスを提供する事業集団で、老人ホーム、リハビリ介護、社区向けの介護サービスの3つの業務内容に分けられている。

日系企業の進出状況

日系介護サービス企業は、2010年から独資およびJV設立の方法により中国へ進出し、主に介護施設の運営、訪問介護サービスの提供、介護人材教育、介護コンサルティング事業を展開している。

日系企業の進出スキーム事例① ニチイ学館

ニチイ学館は、日本における業界トップとして2012年に中国へ進出。

2014年には、中国政府系の中民養老企画院と戦略提携し、主に合併・再編を通じて事業を展開してきた。

日系企業の進出スキーム例② リエイ

リエイは、2011年に中国へ進出。

現在、独資子会社1社、合弁会社2社、合弁孫会社2社を運営している。

3.中国における資金調達状況

投資規模と地域分布

シルバー産業における資金調達は2014年から始まり、2016年には43件、調達資金は6.9億元に達した。その後、投資審査が厳しくなったことにより、投資金額・件数共に徐々に減少している。

地域別で見ると、北京が最も多く、直近6年間で35件が資金調達に成功している。次いで、上海20件、広東省16件となり、発展地域の方が融資獲得がしやすい傾向にある。

資金調達段階と調達資金分布

資金調達段階別で見ると、プロジェクトの早期段階で資金調達を行っている案件が多い。直近5年間のデータによると、Aラウンド及びその前段階で資金調達を行ったものが平均84.6%となっており、業界が発展初期の段階にあることが見受けられる。

1案件あたりの調達資金から見ると、小規模案件がメインとなっている。直近5年間のデータによると、2,000万元未満の投資案件が平均71%、 5,000万元未満の投資案件が平均90%となっている。

事業内容別融資獲得企業数

中関村科技のデータによると、2018年のシルバー産業融資獲得企業は計18件であった。事業内容別で見ると、シニアエンターテイメントが6件で全体の33.3%、スマート介護が4件で21.1%、養老施設は3件で16.7%を占めている。

日系企業が中国で事業展開するにあたり、伝統的な養老施設や介護サービス以外にも、シニアエンターテイメントやスマート介護分野にもビジネスチャンスがあると考えられる。

4.トレンドと今後の課題

トレンド① 市場拡大の傾向

中国経済・社会の環境変化を背景として、今後シルバーサービス市場の拡大が見込まれる。

トレンド② 医療・介護の融合とスマート化

中国政府によるシルバー産業促進政策やテクノロジーの発展により、医療・介護の融合およびスマート化が進んでいる。

今後の課題

中国のシルバーサービス産業は成長しているものの、高齢化が急速に進んだため、インフラ・社会システム面などで整備されてない課題が多く、発展途上の段階にある。

おわりに

中国における高齢者人口の増加に伴い、シルバー産業の市場規模は、2018年に6.2兆元、2024年には11.2兆元と、急成長が見込まれている。

2002年の高齢化社会突入後には、中国政府が業界の体系化構築に力を入れており、次々と発展に向けた政策の発表や民間資本の参入促進を進めている。

シルバーサービスは、在宅養老が主流となっており、訪問介護やリモート介護等のニーズがある。長期介護保険からの収入がメインとなるため、政府との提携が事業展開のキーポイントとなる。

また、平均家庭人数の減少により、伝統的な在宅養老以外に、社区養老・施設養老の必要性も高まっていくことが見込まれ、更に都市化の発展や所得・中間層の増加により、高品質な介護サービスのニーズが増加する傾向にある。

今後のトレンドを見ると、医療・介護の融合、スマート介護やシニアエンターテイメント分野においても、ビジネスチャンスがあると考えられる。

一方で、中国における人材不足や社会保険の未整備など、インフラ・社会システム面の未発達、日中の文化・慣習の違いにより、先進的な日本式の介護サービスの人気は高いものの、苦戦している日系企業も多い。今後、長期的に中国での事業展開を成功させるにあたっては、上記を考慮した新たなビジネスモデルの構築・模索が必要となるだろう。
執筆:上海現地法人 山田商務諮詢(上海)有限公司
(山田コンサルティンググループ株式会社 中国現地法人)

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