基礎知識
更新日:2020/08/27
テーマ: 01.事業承継
1-4. 事業承継の事前準備と後継者教育
1. 中小企業における事業承継のポイント
事業承継は、誰に継ぐかによって「親族内承継」「親族外承継(従業員へのMBOなど)」「第三者への承継(M&A)」の3つの手法に分類できます。それぞれの手法で、メリット・デメリットがあるため、それを理解した上で意思決定をする必要があります。 近年では第三者へのM&Aを通じて非同族を後継者に据える中小企業の割合が徐々に高まっていますが、これは、今後、国内における人口減少は避けられず、中小企業は厳しい経営環境に置かれることを見通しての決断であると推測されます。 事業承継とは、具体的には、「ヒト」「モノ」「カネ」、この3つを後継者に引き継ぐことです。「モノ」「カネ」を後継者に承継することを総称して「物的事業承継」、「ヒト」の承継を「人的事業承継」として分けて対策を考える必要があります。それぞれの対策を両輪として機能させることで、後継者へ事業をスムーズに承継させることができるのです。 事業承継の流れは、会社の現状分析から始まり、障壁となる問題点の洗い出し、株価価対策の検討を経て、事業承継を実行します。 円滑な事業承継は、現社長による入念な事前準備とサポートなくして成功はありません。
1-3. 親族内承継・MBO・M&A、それぞれのメリット・デメリット
1-4. 事業承継の事前準備と後継者教育
3つの事業承継方法
事業承継を実行するためには、準備の段階から全体像を把握して検討するべきことが多い。
問題を先送りしたまま株式の移転や社長の交代だけを急いで実行してしまうと、後になって株式の所有者と後継者が一致しないなど、取り組んだ施策と実態との整合性がとれないことになり、かえって時間やコストがかかることにもなり得る。
まずは、必要な手続きの流れとポイントをあらかじめ押さえておきたい。
<事業承継の流れ①>会社の現状分析
始めに取り組むべきことは、会社の現状を把握し、分析することである。
たとえば、過去数年の業績の動きやキャッシュフロー、借入金、資産などを決算書や財務諸表の推移で確認する。また、経営者名義の事業用の土地・建物、個人保証の有無や債務残高なども調べておく必要がある。
同時に、専門家に現時点の株式の評価額を出してもらい、経営者の持株数と、それ以外に誰がどれだけの持分を保有しているのかを調べ、一覧にして整理しておく。
後継者が決まっているのであれば、当人の意思確認をした上で、これらの作業を一緒に進め、情報を共有しておくとより望ましい。
<事業承継の流れ②>事業承継の障壁となる問題点の洗い出し
この段階から、事業承継の障壁となる要因や心配事を全て洗い出す。問題点がわかれば、それらに対する対策を講じることもできる。
また、現状分析や問題点の洗い出しでは、現経営者の仕事内容や社内での役割なども、本人や周囲の人に聞き出し、「見える化」しておくことが重要である。
オーナー経営者の場合、何から何まで1人でやっていることも少なくない。
個人のカリスマ性に任せた仕事のやり方を後継者に求めるのは難しいため、その場合は社内体制や組織を見直し、後継者の負担を抑える対策を練ることも必要である。
そのためには、必要な手続きの流れとポイントを押えた事業承継計画を立てる必要がある。
事業承継計画の作成手順は以下の流れで進める。
① 次世代に向けた改善点、方向性の検討
・現在の経営状況、過去の実績を調査・分析(財務分析)
・将来に向けた改善点や方向性を検討
② 環境変化の予測と対応策・課題の検討
・経営環境の分析と変化の予測(PEST分析)
・重点課題を検討し、対応策を打ち出す
③ 中長期ビジョンと目標設定
・中長期的な方向性、経営ビジョンを検討
・実現するための会社のあるべき姿をイメージ
④ 円滑な事業承継に向けた課題の整理
・後継者を中心とした新経営体制(経営チーム)の検討
・移行までの具体的課題を整理
⑤ 事業承継計画の作成
・具体的な数値目標を盛り込んだ中長期的な経営計画を作成
・事業承継対策の実施時期などを盛り込み、「事業承継計画」を作成
<事業承継の流れ③>株価対策の検討と事業承継の実行
後継者に経営権を譲る際、重要なものの一つとして挙げられるのが株価対策である。
株価対策にもさまざまな方法があり、調達資金、税金、相続に与える影響も異なってくる。
専門家に相談し、いくつかの方法でシミュレーションを行った上で、それぞれの会社に合った最適の方法を検討することが重要といえる。
取るべき対策が決まったら、順番を決めて一つずつ実行に移す。社内体制の見直しや後継者の育成には時間がかかるので、それらも考慮に入れた上で、余裕を持って計画を立てるべきである。
株式が後継者に移り、経営権のバトンタッチが済んでも、それで事業承継が完了するとは限らない。承継後の事業が軌道に乗るまで、現経営者はしばらくの間、役員や相談役などで残り、サポートすることも多い。
後継者の教育
(後継者が身に付けておきたい6つの能力)
後継者の育成は、5年~10年の中長期スパンで取り組まなくてはならない重要な経営課題です。
後継者が身に付けておきたい能力として、具体的には以下の6つがあげられます。
① 経営基礎スキル・財務リテラシー
② 現場理解、数字から現場で起きていることを推測する力
③ 社内外の人脈
外部研修による基本的な知識の獲得と併せて、自社事業のコアとなる部門での業務経験を積むことが現場理解につながり、人脈作りでも効力を発揮します。
現社長が持っている社外ネットワークを継ぐために、各種会合等にも積極的に後継者を連れて行く活動も必要な教育の一つです。
④ リーダーシップ(部下からの信頼)
⑤ 経営者としての志(欲)
⑥ 先代の経営への理解・共感・感謝
「リーダーシップ(部下からの信頼)」そして「経営者としての志(欲)」については、後天的に育成・強化しづらいものです。
そのため、後継者としての素養という意味では、これらを重視するべきかもしれません。
最も重要なのが「先代の経営への理解・共感・感謝」であり、これを忘れてしまうと数年後には先代が返り咲く自体になり、事業承継が停滞してしまいます。
(後継者を支えるチーム作り)
現社長が担っていた役割を、全て後継者自身が引き継ぐことは不可能と考えた方がいいでしょう。
次世代では、各々の強み・専門性を有した経営幹部とともにチーム経営をしていくことを前提に準備を進めていく必要があります。
(中期事業計画の策定)
後継者教育の総仕上げが、次期社長を中心とした次世代の経営チームによる中期事業計画の策定です。
計画そのものの妥当性・質ももちろん重要ですが、それ以上にこの計画を作成するプロセスの中で当事者意識を醸成することが大きな目的といえます。
(「人的」事業承継のゴールとは)
中期事業計画の策定をクリアできれば、現社長も「自分がいなくなっても何とかなりそう」と、不安が軽減されることになります。
それが「人的」事業承継のゴールともいえるでしょう。
事業承継に必要な期間
ちなみに、現経営者が考える「後継者の育成に必要な期間」は、アンケートによると5~10年くらいと回答した人が最多で、約3割を占める(中小企業基盤整備機構・平成23年実施)。
これは事業承継を準備し始めて完了するまでに必要な期間の目安ともいえる。
現経営者は、「事業承継は一朝一夕で終わるプロジェクトではない」ということを念頭に置き、開始するタイミングを検討したい。
事業承継を成功させるために必要なこと
事業承継を成功させるためには、現社長は下記の事前準備を進める必要がある。
□ 既存事業の収益力強化
後継者の育成が進んだとしても、承継直後は以前のようにいかないことも多いはずである。
その際に、土台となる収益力さえあれば、そのロスを補うこともできる。
□ 見える化(KPI、事業計画策定)
承継期間中に「社長の頭の中の見える化」を進めておく必要がある。
特に、経営にとっての重要指標(KPI)の設定、それを把握するためのシステム化、承継までの期間の事業計画策定は行っておきたい。
□ 同年代の幹部の花道づくり
古参幹部が改革の抵抗勢力となってしまうおそれがあれば、現社長は、自身の在任中に現経営幹部と話をして、現社長が退任する前か同時に退職してもらえるよう花道を作っておきたい。
□ 残すべき会社の理念・魂の明文化
事業承継後の会社の在り方については、基本的には後継者に一任するべきでであるが、会社の根幹部分である「なぜ、この会社を立ち上げたのか」「何のために存在する企業であって欲しいか」という経営理念は次世代にも承継していくべき内容といえる。
【事業承継の基本的な流れ】

1-3. 親族内承継・MBO・M&A、それぞれのメリット・デメリット

