お問い合わせ

海外ビジネス情報

2020/11/25

テーマ: 03.海外

タイの医療機器市場

目次

タイの医療機器製造

  • タイのFDA(保健省医薬品局)によれば、国内の医療機器・装置の年間生産額は約395億バーツで、そのうちの約70%が輸出向け、残りの30%は国内向け販売である。
  • タイには565社の医療機器・装置メーカーがあり、その多くはバンコクとその近郊に集中している。
  • メーカーの80%以上が中小企業であり、大手メーカーは、主に本国親会社向け輸出品の生産をタイで行う多国籍企業である。
  • 国内メーカーは、主にX線装置や消耗品(医療用ゴム手袋、注射器、カテーテル、オートクレーブ)など先端技術を必要としない製品を製造している。

タイの医療機器輸入

  • 病院やクリニックの数および医療観光客の増加により、タイの医療機器需要は高まっている。
  • タイはASEANにおける医療機器の主要輸入国であり、2019年の輸入額は700億バーツだった。
  • 米国、中国、ドイツ、日本が主要な輸入先であり、2019年の輸入額全体の半分以上を占めている。
  • FDA(保健省医薬品局)によると、タイでは現在約2,500の業者が医療機器の輸入を行っている。
  • 高度な技術を要する医療機器(電気機械装置、眼科用装置・光学機器、放射線機器など)の研究開発には巨額の費用がかかることから、タイはそういった医療機器については輸入に大きく依存している。
  • タイは使い捨て用品(手術用手袋、フェイスマスクなど)の製造拠点であるにもかかわらず、高品質のカテーテルや針製品などは、依然として輸入に依存している。また、病院の数や患者の通院回数の増加に伴って、使い捨て医療用品や保護具の需要が高まり、輸入が増加している。
  • さらに、国内需要が限定的なために、タイに生産投資を呼び込めない一部の医療機器(救急医療用の機器や人工呼吸器など)も輸入に頼っている。

タイの医療機器輸出

  • タイの医療機器輸出額は、2017年以降年間1,000億バーツを超えている。
  • 主な輸出先は米国、EU、日本で、2019年の輸出総額の70%以上を占めている。
  • これらの主要な輸出先の外国企業は、タイをOEM生産拠点として使用し、自国向けに製品を輸出している。
  • 主な輸出品目は、医療用ゴム手袋、カテーテル、医療用チューブ、シリンジ、針、包帯などの使い捨て用品および眼科用装置、光学機器である。
  • タイは世界有数のゴム手袋の生産国であり、フィッチ・ソリューションズによれば、マレーシアと中国に次ぐ世界第3位の手術用手袋の供給国である。
  • タイに製造拠点を置く外国の医療機器メーカーは、主に使い捨て用品を製造している。カシコン・リサーチ(カシコン銀行傘下の総合研究所)によると、タイ投資委員会(BOI)の投資優遇措置を受けている外資系医療機器メーカーの60%以上が、使い捨て医療用品(主にカテーテルと注射器)を作っている。
  • 世界中で高齢化が進み予防的医療への関心が高まっていることから、障害者用の補助製品や体外診断用医療機器(IVD)の輸出市場が急成長している。

コロナ禍の影響

新型コロナウイルス感染拡大期

サプライチェーンの混乱: 他の製品業界と同様、医療機器業界もコロナ禍によるグローバルサプライチェーンの混乱を経験した。これにより、2020年の第1四半期以降、医療機器の輸出入が大幅に減少した。

耐久財の需要低下: コロナ感染拡大と政府による封鎖措置は、病院の財務状況に大きな影響を与えた。タイ医療機器技術産業協会によると、民間病院を訪れる患者数は、感染拡大期間中に約40〜50%減少した。これにより新しい医療機器への投資に抑制や先送りが生じた。

新型コロナウイルスの診断、予防、治療に対する需要の急増: 一部の医療機器に対する需要が落ち込む中で、個人用保護具(PPE)、例えばサージカルマスク、N95マスク、フェースシールド、使い捨て手袋、ガウン、PPEスーツ、診断テストキット、サーモスキャン、人工呼吸器などについては、感染拡大段階で需要が急速に高まった。これらの製品の市場は、ワクチン開発が成功するまで、今後も成長すると予想される。

 

ウィズコロナ・アフターコロナ

-感染流行とソーシャル・ディスタンシングの定着により、医療サービスにおけるデジタル技術の利用が加速している。

-遠隔医療、電子カルテ、遠隔健康モニタリングなどに対応する特定種類の医療機器がパンデミック中に登場したが、これらは医師不足の改善や通院費用の削減にも役立つため、今後も使用されることが予想される。

-タイは十分な感染拡大対策をとっているため、医療機器へのさらなる投資を惹き付けるだろうと予想される。

市場における事業機会

タイの医療ハブ政策

  • タイ政府は、2004年以降国際的な医療ハブとして国を持続的に発展させる政策のもと、投資奨励策や医療ツーリズムの促進を目的とする特別ビザの発給など多くの支援策や施策を継続してきた。
  • 医療ハブ戦略10年計画(2016-2025年)は、関連機関が協力して高度な医療産業エコシステムを開発するためのガイドラインとして作成された。計画は、医療サービスハブ、ウェルネスハブ、アカデミックハブ、および製品ハブという4つの柱から成っている。

医療機器製造業への投資インセンティブ

医療機器製造業界にとっての医療イノベーションセンター(EECmd)

EECmd施設と投資インセンティブ

  • 東部経済回廊開発の一環としてEECmdプロジェクトが、2019年2月からタマサート大学パタヤキャンパスで進められている。
  • 約566ライ(91ha)におよぶエリアは、医療ハブ(ゾーンA)、デジタルイノベーションハブ(ゾーンB)、次世代自動車ハブ(ゾーンC)、住宅およびサービスエリア(ゾーンD)の4つのメインゾーンから成っている。
  • EECmdへの投資は、通常の法人税免税措置に加えて、その後2年間(純利益に対する)法人税の50%の減免措置が受けられる。

市場参入要件

– 医療機器・装置の製造、輸入、およびマーケティング活動は、 FDA(保健省医薬品局) の監督下にある。

– 医療機器の製造、販売、輸入、宣伝活動を行うためには事前に、施設や製品の登録またはライセンスの取得が必要である。

○施設の登録: 医療機器の新規事業者は、操業の前に製造・輸入施設を登録する必要がある。
敷地内、製造場所、製造設備、倉庫は、衛生的かつ良好な状態でなければならない。

○製品の登録: 登録および許可のプロセスは製品がどのカテゴリーに分類されるかによって異なる。
製品は、リスクレベルに基づいて3つのカテゴリーに分類される。

まとめ

  • タイは医療機器の主要な生産拠点であり、ASEAN加盟国の中で医療機器の輸出額・輸入額が最も大きい。同時に国内医療機器市場の規模も大きい。
  • 医療サービスの拡大、医療観光客の増加、人口の高齢化などの要因によりタイの医療機器市場は今後も成長することが予想されている。加えてASEAN域内の中間所得層の台頭も、医療機器の輸出拡大に貢献するものと期待される。
  • 一方、タイは医療機器(とりわけ電気機械装置や精密機器など)については輸入に大きく依存している。このことは多国籍メーカーが輸入代替品としてタイ国内でそうした製品を生産する絶好の機会を生み出している。非耐久性の医療用品および病院設備(ベッドや診察台など)の場合、各種業界(プラスチック、ゴム、自動車部品など)からの強力なサポートや国内の豊富な材料を活用できる。
  • こうした事業機会がある一方で、タイには課題も残る。有資格の医療従事者が慢性的に不足しており、また商品化・事業化につながる研究開発の成果の割合が低いという状況も続いている。
  • しかし医療産業はタイの振興産業の1つに指定されており、政府の優遇措置や支援が外国投資家にメリットをもたらしている。業界の軸足をコスト削減から高付加価値の追求へと移動させられるような高度な技術、イノベーション、研究開発への投資に対しては、特に恩恵が大きい。

執筆:YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
YC Capital Co., Ltd.
(山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

【メールマガジンご登録のご案内】
a419e6a0960f0a07cb640db2b55c90d6

本レポートに関するご感想、ご質問は下記問合せフォーム、またはメールにてお寄せ下さい。
https://www.yamada-cg.co.jp/contact/

メールの方はこちら
global-support@yamada-cg.co.jp

PDFはこちら
タイの宅配サービス.pdf