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2021/09/09

テーマ: 03.海外

中国保険業界におけるインシュアテック(InsurTech)の動向

目次

1.中国保険業界及びインシュアテックの概要

中国保険市場規模

中国の2020年における元受保険料※1は4.5兆元に達し、2022年には6兆元を超えると見込まれ、2013年から2022年の平均成長率は15%となっている。
2019年の世界保険市場ランキングTOP10を見ると、中国は世界第2位で日本を上回り、Swiss Re Instituteの予測によると、2030年代半ばには、中国が米国を超え、世界第1位の保険市場になるとされている。

※1:保険会社が、保険契約者から保険を引受ける対価として領収する保険料のこと

中国保険市場の潜在性

世界第2位の中国保険市場であるが、保険深度※1は世界平均7.17%に対して中国 4.3%、保険密度※2においても世界平均375ユーロに対して中国317ユーロと、先進国と比較して低くなっている。
このことから、中国保険市場は未成熟であり、今後発展のポテンシャルが大きいと言える。

※1:GDPに占める保険料収入の割合
※2:国民1人当たりの保険料

中国保険業界の課題

中国保険市場は大きいが、赤字企業が多いという課題がある。2017~2019年における中国損害保険会社の経営状況を見ると、約40%が赤字経営となっている。
中国損害保険会社TOP3の利益が業界全体の90%以上となり、トッププレイヤーが市場を寡占しているため、中小企業が苦境に立たされていることが分かる。

従来の中国保険業界において、保険会社では、消費者ニーズが把握しにくいこと、保険詐欺による多額の損失が発生すること、利益率が低いことが課題となっている。一方、消費者にとっては、保険金請求の手続きが複雑なこと、保険募集人から誤解を招くような説明を受けること、保険商品の内容理解が難しいことが課題となっている。

中国インターネット保険市場規模

これまで述べてきたように、中国保険業界では、従来の保険サービスやインフラが貧弱であり、消費者ニーズが十分に満たされていなかったこと、保険会社の利益率向上が求められていること、そして、急速なデジタル化や政策の後押しを背景に、インシュアテック市場が発展している。更に、COVID-19の発生を受け、インシュアテックを活用し、人の手を介さない非接触型の活動への需要も高まっている。
中国インターネット保険料の収入推移を見ると、2016年の2,299億元から2020年には2,909億元となっており、2012~2016年の急成長に対し、それ以降は安定的に成長を遂げていることが分かる。

インシュアテックの定義と世界のインシュアテック分野における資金調達動向

「インシュアテック(InsurTech)」とは、保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語で、保険に関するスタートアップや先進テクノロジーの総称でもあり、保険会社を中心とした革新的な保険のビジネスモデルでもある。
CB Insightsのデータによると、2018年の世界インシュアテック分野における資金調達額は、41.5億米ドルに達し、2012年からの年平均成長率は50%となっている。日本は世界第3位の保険大国であるものの、2017年におけるインシュアテックスタートアップ企業は20社しかなく、米国や中国と比較すると非常に少ない。

中国インシュアテック分野の投資及び資金調達動向

中国保険会社のインシュアテック関連技術への投資額推移を見ると、2019年は319.5億元、2023年には546.5億元に達すると見込まれており、従来型の保険会社においても積極的にIT技術へ投資を行っていることが分かる。
資金調達の状況についても、2015年を皮切りに資金調達額が増加し、2019年には39.8億元と活発化している。

2.中国インシュアテック分野の代表企業紹介

従来型の保険会社 中国平安保険

中国平安保険は従来型の大手保険会社であるが、2017年からのフィンテック分野への積極的な投資を通じて、成長戦略及び事業の在り方を大きく変えている。

インターネット専業保険会社 衆安保険

衆安保険は、中国初のインターネット専業保険会社であり、IT大手のアリババ、テンセントや平安保険等からの出資により設立された。保険商品は、健康、消費者金融、自動車、ライフスタイル消費、旅行の主な5つのカテゴリーで構成されている。

3.インシュアテックが中国保険業界にもたらした変化

顧客満足度の向上

ビックデータ、AI、ブロックチェーン、クラウドコンピューティング、IoT、モバイル・インターネット、VR、遺伝子工学などの技術活用を通じて、中国保険業界では、顧客満足度の向上やコスト削減及び売上高の拡大が期待されている。

コスト削減の実現

i Researchの調査によると、インシュアテックの活用により、中型損害保険会社では、2019年から2025年にかけて、6.6~8.9%のコスト削減ができるとのデータがある。

新しいエコシステムの構築

従来型の保険会社、スタートアップ企業、非保険会社、監督機構は、それぞれの強みを活かし、インシュアテックをてこに事業変革を進め、中国保険業界における新しいエコシステムの構築を行っている。

4.おわりに

日本企業が中国保険業界から得るヒント

中国のインシュアテック業界は、急速に進むデジタル化や政策の後押しを背景に発展してきており、世界的にもパイオニアのような存在である。消費者も日常的にキャッシュレス決済を利用するなど、デジタル技術の活用に慣れており、社会のイノベーションに対する抵抗感がほとんどなかったことも要因と言えるだろう。

一方、日本は世界第3位の保険大国であるが、デジタルインフラが中国ほど普及していないこと、また規制面での制約やエンジニア人材等の不足など、インシュアテックの成長が遅れており、業界のイノベーションがまだまだ進んでいないと言われている。

まずは、インシュアテックを受け入れる社会や消費者側の意識を変えていく必要があり、同時に、新しいエコシステムを戦略的に構築していくことが求められている。

2018年には、損保ジャパン日本興亜が衆安保険とインシュアテック分野での提携を行っており、衆安保険のビジネスモデルやテクノロジーを参考にしながら、日本保険市場のデジタルトランスフォーメーションを積極的に進めていく姿勢を見せている。

このように、インシュアテックで先行する中国勢と組むという戦略も、日本のインシュアテック市場を開拓する手段の1つになるかもしれない。

執筆:上海現地法人 山田商務諮詢(上海)有限公司
(山田コンサルティンググループ株式会社 中国現地法人)

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