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2021/09/09

テーマ: 03.海外

ベトナムの住宅不動産市場レポート

本レポートの要旨

■近年の不動産市場動向・変遷

ベトナムでは2007年の経済開放以降、不動産市況は二度の過熱と停滞のサイクルを繰り返した。足元はコロナ禍により新規供給が減っており、またオフィスやリテール分野では空室率が上昇している。

政府は不動産開発の認可や、金利政策、不動産融資に対する規制等により、過度な加熱・収縮が生じないようにコントロールを続けている。

 

■人口動態と不動産需給

都市への集中
ベトナムでもかつての日本と同様に都市への人口流入が続いており、ハノイ・ホーチミンの2大都市で全国の人口の17%強を占めるに至っている。今後もこの状況は続き、引き続き都市部での住宅需要は生まれ続けると予測される。

人口増加の点では、ハノイ・ホーチミン以上にその近郊エリア(北部ではバクニン省、フンイェン省等、南部ではビンズン省、ドンナイ省等)が高い成長率を示している。住宅の供給についても、従来はアパート建設はハノイ・ホーチミンに集中していたが、今後は近郊エリアやハイフォン・ダナンといったその他の直轄都市でも主要デベロッパーのプロジェクトが計画されている。

住宅用地の供給・地価の上昇
住宅開発は国家による住宅用地への転換・払い下げにより用地が供給されるケースもあるが、民間での取引、開発による割合が高いと言われている。そのうち個人や小規模のブローカー等による非公式なものも相当数あり、特に都市部の低所得層に対し安価だがインフラの十分整っていない住宅の供給源となっている。

都市部を中心に土地の取引価格の上昇ペースは速く、需要の多い中級以下の住宅開発を進める上でのネックになっている。なお、5年毎に更新される公示地価は低い水準で維持されており、実態と乖離している。その中でも、郊外や都市近郊エリアでは公示地価も上昇を示している。

 

■ホーチミンとハノイの住宅開発

ホーチミンとハノイの住宅事情の違い
ハノイではホーチミンよりも住居の質・グレードを重視しており、広い居住面積を選ぶ傾向にある。また、所得水準も二極化しており、高級物件に対する需要が多いと想定される。一方で、アパートに関してはホーチミンの方が高級案件の比率が高くなっている。

郊外へのシフト
ハノイ・ホーチミンともに人口増加エリアは周辺部へと移ってきており、逆に中心部は停滞・減少してきている。各市政府の都市計画上も周辺エリアへの拡大を謳っており、今後地下鉄による通勤事情の変化もあり周辺部へのシフトが進むと想定される。

目次

近年における不動産市場全般の動向

2007年以降のベトナム不動産市場概要(2007-2012)

ベトナムの不動産市場は2007年から現在に至るまで、過熱と停滞を繰り返している。

2007年のWTO加盟による市場開放は外資流入から投資ブームを引き起こしたが、高インフレへの懸念から政府が急激な引き締めにシフトし、2012年にかけて市場は一気に冷え込んでいった。

2007年以降のベトナム不動産市場概要(2013-2020)

その後市況回復のために政府による緩和、支援策が取られ2013年以降は市場は回復に向かった。

2018年以降は再度不動産市場の過熱への懸念から、住宅を中心に認可の厳格化や、不動産融資への規制強化に舵を切った。

コロナにおける不動産市況

コロナの影響により、ハノイ・ホーチミンの両方のオフィスと小売の空室率が増加した。

アパートの供給も2019年と比較して大幅に減少した。

人口動態と不動産需給

都市及び近郊への人口集中

ベトナム全体で人口は増加しているが、特にハノイ・ホーチミン及びその近郊の市省の増加率が著しい。

都市への人口集中は今後も続くと予想されており、2039年においては、ハノイ・ホーチミンの2都市で全国の人口の19.3%を占めるに至ると予測されている。

各エリアでの住宅建築動向

2010‐2019年にかけて、主要市省及び全国を中心に住宅建築は増加傾向にあった。

ハノイ・ホーチミンでも住宅建築は進んだものの、人口構成及び人口流入の状況(前頁記載)と比較するとペースが追い付いてない状況であった。

参考:日本の地域別人口動態

2大都市で比較すると日本とベトナムの人口集中度合はかなり近づいているものの、近郊エリア等を含めるとベトナムの集中度合は日本に比べ依然低く、今後の人口流入も想定される。

2大都市でも人口密度を比較すると、依然ベトナムは日本程高くない状況にある。

都市部の住宅需要の推計

ベトナム全土では都市部への人口流入及び都市部の拡大が続くことが見込まれる。

都市部での世帯数の増加に伴い、2039年までに計12百万戸程度の住宅の潜在需要が見込まれる。また、所得水準の向上により中級グレード以上の住宅への需要も大きく高まると予測される。

住宅用土地の供給

住宅用地の供給は、国家による払い下げ、デベロッパーや不動産事業者による民間の取引に加えて、正式な手続を経ない取引によってもなされており、全体像を把握するのは難しいと言われている。

住宅需要の増加に伴い、2005年からの30年間で住宅用地面積は3.4倍に増加するという予測もある。

地価の上昇

ホーチミン市では、ホクモン県(52%増)、ゴーヴァップ区(12%増)を除いて、公示住宅用土地価格は横ばいから微減である。 但し、公示地価は市場価格の実勢を反映しておらず、市場価格ベースでは19年において市場地価は、最低価格で平均200%、平均価格で142%、最高価格で101%上昇している。 なお、地価の上昇は、2区、7区、8区、9区、12区他、郊外に集中

ハノイ市の2020-2024年の公示地価は5年前に比べ上昇率9〜19%上昇しているが、やはり市場価格との乖離が大きい。 現在、ハノイの地価表は市場価格の約30〜60%にすぎないのが現状。

ホーチミン市とハノイ市の近隣の省では、土地価格表と市場地価のギャップを狭めるために、2015-2019年の期間と比較して2020-2024年の地価を大幅に調整した結果、公示地価はハノイ・ホーチミンに比べ上昇している。

アパート建設の状況(主要都市)

2020年までの住宅建設プロジェクトはハノイ・ホーチミンに集中していた。

2021年以降も引き続きハノイ・ホーチミンにおけるプロジェクトが多いが、その他近郊エリアにも拡大してきている。

ホーチミンとハノイの住宅開発

ベトナムにおける住宅の形態

ベトナムにおける住宅は大半が戸建建設であり、マンションの占める割合は全体の2%程度。

ホーチミンと比較するとハノイの方がマンションに居住する割合が高いとされている。但し、昨今での建設についてはホーチミンのマンションの割合が高まっていると推測される。

ホーチミンとハノイの住宅事情の違い

ホーチミンとハノイでは住宅購入に対する意識が異なる。

ハノイの方がホーチミンよりも、住宅に対してお金をかける傾向が見られる。

ホーチミンの都市計画マスタープラン

2010年に首相により承認された2025年までのホーチミン市建設マスタープランの調整提案は、市の社会経済分野において包括的な投資、建設、開発計画の策定のための重要な指針となっている。

その後、時間の経過とともに、都市設計、戦略的環境アセスメント、地下空間計画、気候変動への適応に関する具体策の不足、その他の不備が明らかとなり、2021年1月に人民委員会で「2060年までを視野に入れた2040年までの都市建設の一般計画」が発行された。

ホーチミン都市鉄道計画

2013年4月8日に承認された決定No. 568 / QD-TTgに従って、ホーチミン市の8つの地下鉄路線、全長169kmが計画されている。今後中心部から各郊外に向けた地下鉄網により、郊外にニュータウンが生まれると予想される。

但し、計画は全般的に遅れており1号線の稼働は早くとも2022年以降となる見込み。2号線は2022年に建設が開始される予定であるが、その他の路線については依然具体的なスケジュールは未定である。

ホーチミンの地域別人口推移

2016‐2019年の期間におけるホーチミン市の平均人口増加率は1.6%/年である

都市部の土地が少なくなり、生産、事業、住宅等不動産案件は周辺部や農村部にシフト。人口は、1区、3区、フーニャン区などの中心業務地区と都心部で減少し、2区、9区、12区などの郊外とニャーべ県、クチ県などの郊外で大幅に増加する傾向を見せている。

ハノイの都市計画マスタープラン

首都のハノイは、中心市街地、5つの衛星都市、および放射軸を組み合わせた環状道路交通システムによって接続された町を含む、都市クラスターモデルに従って開発されている。

2030年までに、都市部の住宅の平均面積は、少なくとも30㎡/人、農村部では少なくとも25㎡/人との目標を設定している。

ハノイ都市鉄道計画

2050年までを視野に入れた2030年までのハノイの都市鉄道計画によると、ハノイメトロネットワークは全長約318kmの8本の路線で構成されている。 完成後、公共交通機関を利用する人々の割合が35〜40%に増加すると予想される。

ただし、8路線のうち着工しているのは2A号線カットリン-ハドン(13.1 km)、および3号線ニョン-ハノイ駅(12.5 km)の2つの線のみ。

ハノイの地域別人口推移

ハノイの2009‐2019年の平均年間人口増加率は2.22%/年であり、全国の増加率(1.14%/年)よりも高く、紅河デルタで2番目に高い

ホアンキエム区、バディン区などの中心地区の増加率が減っている一方で、周辺のホアンマイ区、ロンビエン区、タインスアン区等に都市部が拡張し人口が大幅に増加する傾向が見られる。

ハノイ・ホーチミンでのアパート建設

新しいプロジェクトのライセンス取得および既存プロジェクト変更の許諾プロセスは長く、新型コロナウイルスの影響もあり、 ホーチミン市・ハノイ市における2020年の供給台数は2019年と比較して急減した。またホーチミン市では、2015年以降、アパート供給戸数が減少傾向にある。

ホーチミン市でもハノイ市でも、供給戸数はミッドエンド以下が過半を占める。その中でホーチミンは依然ハイエンド以上のアパート供給も相応に続いているが、ハノイではロー・ミッドエンドのアパートの割合が高く供給数自体も増えている。

レポートのPDFをご希望される方は、下記よりダウンロードください。

執筆:YAMADA Consulting & Spire Vietnam Co., Ltd.
(山田コンサルティンググループ株式会社 ベトナム現地法人)

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