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2022/06/16

テーマ: 03.海外

タイの食肉加工品市場の概要、コロナによる影響と今後の動向まで

世界有数の食品加工・輸出国であるタイにおいて、食肉加工は巨大市場であり、
国内外の大きな需要を背景に、引き続き市場としても生産拠点としても右肩上がりで成長が見込まれます。
新型コロナウイルスの感染拡大も影響し、健康志向やトレーサビリティの需要の高まり、ハラール対応も含め、
タイの食肉加工品業界は市場のニーズに応じた転換が求められているところです。

本レポートでは、タイ食肉加工市場の現状とコロナウイルスの影響、今後の動向について解説します。

目次

タイ食肉加工品市場の概要(2021年)

タイの食肉加工品の種類

本レポートでは、タイの食肉加工品をソーセージおよび類似品と鶏肉加工品の2つに分類し、さらにそれぞれを製品タイプ別に分けた。

タイにおけるソーセージおよび類似品の輸出入状況

タイには2021年現在、約90のソーセージおよび類似品の工場がある。
同製品の輸出は金額・数量ともに輸入を上回っている。
2020年の新型コロナウイルスの感染拡大により、同製品の工場などは一時的に生産停止を余儀なくされた。
2021年に入って輸出の状況は回復したが、2022年初めに一部の輸出先で豚肉加工品に使用されていた豚が病気に感染していたことがわかり、タイからの輸出が禁止された国もあり、今後輸出額・量が減少する可能性がある。

タイにおける鶏肉加工品の輸出入状況

タイは世界最大の鶏肉加工品の生産国であり、2020年の世界市場シェアは数量ベースで28.9%である。
タイには2021年現在、69の鶏肉加工工場があり、総生産能力は年間66万5,000トンである。
タイの鶏肉加工品の生産量の約95%は輸出用で、残りは国内消費用である。また鶏肉加工品の輸入もしており、その量は輸出状況によって変動する。
新型コロナウイルスの蔓延により、タイ国内では鶏肉加工工場を含むさまざまな工場が操業停止に追い込まれた。

タイ食肉加工品市場のセグメントおよび主要プレーヤー

食肉加工品市場は、品質によりエコノミー、スタンダード、プレミアムの3つに分類される。
Euromonitor Internationalによると、業界全体の市場規模(売上高)は約112億3,800万バーツ(約400億円)である。
Speedaによると、大手2社で全体の34%のシェアを占めている。
1位はCPF(Charoen Pokphand Foods)で19%、2位はBetagroで15%である。

主要プレーヤー①Charoen Pokphand Foods

■ポジショニング
栄養、味、食品安全性の面で良質な製品を、手頃な価格と多様な品揃えで提供する

■主なブランド
・BKP
・SUPER CHEF
・CP
・BUCHER
・MEAT ZERO

■事業戦略
特定セグメントに特化したブランドを立ち上げ、さまざまなセグメントで製品を提供
川上から川下(飼料・畜産・食品)まで対応
健康志向の消費者をターゲットとした「Meat Zero」ブランドで植物由来肉市場に進出
セブンイレブンやCPフレッシュマートなど、オンラインとオフラインの両方で独自の販売チャネルを持つ

主要プレーヤー②Betagro

■ポジショニング
衛生的で、抗生物質や残留物のない肉から作られた高品質で味のよい製品を提供する

■主なブランド
・BETAGRO
・ITOHAM×BETAGRO

■事業戦略
特定セグメントに特化したブランドを立ち上げ、さまざまなセグメントで製品を提供
川上から川下(飼料・畜産・食品)まで対応
日本スタイルの高価格帯ソーセージでのプレミアムセグメントへの参入を目的に伊藤ハムとのJVを設立。ブランド名はItoham Betagro
ベタグロショップなど、オンラインとオフラインの両方で独自の販売チャネルを持つ

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスは、食肉加工品業界を含むタイのさまざまな産業に影響を与えている。食肉加工品事業に対するタイでの影響について、生産、消費者行動、販売チャネルの観点から以下にまとめる。

生産

新型コロナウイルスの流行により、食肉加工品の生産停止が余儀なくされた。食肉加工工場を含む国内各地でクラスター感染が発生したため生産を停止せざるを得ず、その結果、一定期間製品の不足を招いた。しかし、政府によるバブル・アンド・シール政策や積極的なワクチン接種の実施により、その後工場は再稼働を果たした。

新型コロナウイルス以外にも、伝染病によって数百万頭の豚肉が死亡したことによる供給不足と値上げに見舞われ、タイの食肉加工工場では一時的に減産を余儀なくされた。

消費者行動

新型コロナウイルスの蔓延が消費者の購買行動を変えた。例えば、コロナ前は、昼食時や休憩時のおやつとして、小袋入りの加工肉製品の購入が一般的だった。しかし、ロックダウン期間中に在宅を強いられ、人々は必要な時にのみ外出するようになり、1個入りの小袋ではなく、たくさん入った大袋で製品を購入するというように購買行動を変えた。

パンデミックは、消費者の健康への意識にも影響を与えた。消費者は、ウイルス感染を避けたいという気持ちから、加工肉製品を選ぶ際にも、より健康的なものを選ぶようになっている。

販売チャネル

ロックダウン政策など感染拡大防止に関する規制に対応するため、企業はEC企業との提携や独自のオンラインプラットフォームの立ち上げなど、販売チャネルをオンラインにシフトさせた。
政府による関連規制が緩和されても、オンラインチャネルは依然として顧客の代替オプションとなっている。

  • Eコマース: Lazada, Shopeeなど
  • デリバリープラットフォーム: Lineman、Grab、Food Pandaなど
  • モダントレードオンラインプラットフォーム: Tops, Makro、セブンイレブンなど
  • 製造会社のオンラインプラットフォーム: Betagro Shop、CP Fresh Mart など消費者は商品の受け取りについて、店舗受け取りか配達のいずれかを選択することができる。

食肉加工品業界の主な動向

健康志向の顧客

顧客の健康志向が高まる中、さまざまな業界がこの流れに対応しようと試みているが、食肉加工品業界にとっては、食肉加工品が多くの病気のリスクとなる健康によくないものだと受け止められがちであることが課題となっている。多くの企業は、健康志向の需要を取り込むためのヘルシーなレシピや肉の代替品を模索している。

ヘルシーなレシピ

顧客は、加工肉に含まれる健康に良くない食品添加物や濃い味付けなどを気にするため、添加物などの量を減らすことも企業戦略の一つとなる。
オーガニックの肉を使うことでも、他のブランドよりもヘルシーであることがアピールできる。

 

■ヘルシーな調味料
企業は脂肪、塩分、保存料、人工着色料を削減・中止することで、より健康的な製品を目指している。
例えば、Betagroは健康志向の顧客向けに、さまざまなフレーバーの低脂肪ソーセージを発売した。

■ヘルシーな食材

よりヘルシーな食材として、肉そのものに加えて副原料という観点からのアプローチも可能。
鶏胸肉のソーセージやハムなどは、ヘルシーレシピによく使われる。
加工肉に加えるヘルシーな食材としては、こんにゃくやキヌアなどがある。

肉の代替品

健康意識の高い顧客は、代替品によって肉の消費量を減らしている。

■植物由来肉
植物由来の代替肉は多くの国で幅広く消費されており、タイ市場にも浸透し始めている。
例えば、CPFはタイ国内向けの加工品を含む植物由来肉の製品ブランド「Meat Zero」を立ち上げた。

■昆虫由来のタンパク質
昆虫の消費は増加しており、これは食肉加工品業界にとって今後の潜在的な代替手段の1つとなり得る。

食肉・食肉加工品業界は、他の業界よりも植物由来の食品が浸透する可能性が高い。

食品のトレーサビリティ

■定義
食品のトレーサビリティとは、製品の安全性や規格の適合性を確保するために、すべての関係者の情報を結びつけ、原材料の原産地、生産工程、流通方法、最終消費者までのすべてのサプライチェーンをさかのぼることができることを指す。

■主な成功要因
新たな貿易関連法令の遵守
デジタルプラットフォームでの サプライチェーンデータの保管
関連ステークホルダーとの協働

トレーサビリティに関わる最近の主な政策
EUのFarm to Fork政策
FDAからのトレーサビリティ記録、環境影響などに関する追加事項の要求


■タイの食品トレーサビリティ

タイには食品のトレーサビリティに関する特別な法律や規制がないにもかかわらず、一部の業界ではトレーサビリティに取り組み始めている。
タイ商務省は有機農産物のブロックチェーントレーサビリティプラットフォームのTraceThai.comを立ち上げ、消費者が原産地、工程、関連証明書を追跡できるようにしている。
タイではすでに食品トレーサビリティの取り組みが開始されているため、近い将来、これが他の産業にも応用されることが考えられる。

■推進要因
食品の安全性
労働福祉
環境サステナビリティ
新型コロナウイルス感染拡大

ハラール

OIC(イスラム協力機構)の加盟国および非加盟国の両方における購買力の高い顧客に支えられ、ハラール市場は世界的に成長を続けている。
2020年、タイはハラール製品の輸出国として世界第12位、アジア第3位、ASEAN第1位にランキングされた。
タイには2021年現在、ハラール基準の食品安全認証を取得済みの企業が5,000社あり、16万点の製品が登録されている。
タイは、イスラム圏の人にとって主要な観光地の一つであるため、輸出市場と国内市場の両方でシェアを獲得することができる。

 

メリット
輸出市場とイスラム観光客がもたらす国内市場の両方の大きな需要を取り込むことができる。
高い品質を維持できる。

タイ食肉加工品業界に関わる優遇措置および法令

現在タイでは、食品関連産業への投資に対して、さまざまな優遇措置が提供されているが、食肉加工品業界に参入する場合、投資家が厳守しなければならない法律や規制がある。

今後の動向・課題・機会

法律や経済などの面でさまざまな課題はあるものの、健康志向や食の安全への取り組みに力を入れることで、今後も食肉加工品業界は成長することが期待される。

今後の動向

健康志向:
製品内の原材料や健康によくない添加物に対する消費者の意識が高まっている。
植物・昆虫由来のタンパク質は、栄養価や倫理的価値から肉の代替品として食品業界に浸透しつつある。
テクノロジーを活用してラボで培養された肉が今後の重要なトレンドとなる。

食品トレーサビリティ:
消費者は食品の安全性に関心を持ち、摂取する食品の原産地を知りたがっている。

ハラール市場:
高い購買力と需要に支えられてハラール市場が成長していることは紛れもない事実である。

課題

・加工肉に関する税制・関係法令等
・食肉の価格変動
・食肉の供給不足
・加工肉に対するネガティブなイメージ(加工肉=不健康・有害)
・新型コロナウイルスによる顧客の可処分所得の減少、購買力の低下

機会

●製品戦略
・消費者の健康志向がもたらす需要を取り込むため、ヘルシーな加工肉の新製品を発売する。
・ハラール市場の顧客に対応するため、ハラールの基準と要件を満たす新製品を発売する。
・既存の製品を新しい基準や規制に適合させる。

●顧客が製品の原産地を追跡できるように、アプリケーションやシステムを導入するか、あるいは既存のシステム提供者と提携する。

まとめ

タイの食肉加工品は、豚肉を原料とするものが最も多く、これに鶏肉、牛肉、ラム肉が続く。同業界全体の売上高に対する新型コロナウイルス感染拡大の影響は小さく、2020年から2021年にかけても前年比成長率が若干低下した程度であった。

ソーセージおよび類似品の輸出額は、2021年以降回復しているが、鶏肉加工品の輸出額は減少している。

新型コロナウイルスの感染拡大は、健康志向の高まりや食品トレーサビリティへの動きなど食肉加工品業界に関わる動向に大きな影響を与える要因の1つとなっている。

タイの食肉加工品業界は、国内外の大きな需要を背景に、市場としても生産拠点としても右肩上がりで成長しており、今後業界の動向(健康志向、トレーサビリティ、ハラール対応等)に適合した戦略を打ち出し、実行できる業界関係者・投資家の台頭が期待される。

 

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山田コンサルティンググループ(株) タイ現地法人
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