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更新日:2024/12/25 公開日:2024/02/02

テーマ: 03.海外ビジネス

バイオ・ハブを目指すタイのバイオプラスチック産業への投資機会

概要

近年、消費者の間でも、様々な業界の製造業者の間でも、環境持続可能性に対する意識が大きく向上している。このトレンドの例にもれずプラスチック産業もバイオプラスチックの部品や製品の開発を行っており、このことが、世界のバイオプラスチック生産能力の著しい拡大をもたらしている。
タイには、キャッサバやサトウキビなど、バイオプラスチックの原料になる農業資源が豊富にある。こうした豊富な資源および国内企業が川上から川下までを占めるサプライチェーンを有することによるタイの競争力を背景に、政府はバイオプラスチックを含むバイオ関連産業にビジネスチャンスを見出しており、様々な支援を行って、2027年には自国をASEAN域内でのバイオ関連産業のハブとすることを目指している。
これとは別にBOI(タイ投資員会)は、投資家に対して税務・非税務両面からの優遇措置を講じている。これらにより、タイにおけるバイオプラスチック産業は、タイ国内外の投資家にとっての大きなチャンスであると考えられている。

目次

バイオプラスチック:定義と世界の生産能力

・European bioplastics (2015)によると、バイオプラスチックとは、バイオマスプラスチック、非生分解性プラスチック、若しくは、その両方の特性を持つプラスチックの総称。

バイオプラスチック

キャッサバやサトウキビ等のバイオマス(生物由来の有機性資源)を原料として使用するプラスチックを指す

生分解性プラスチック

微生物の働きにより、自然界に還元可能なレベルにまで成分が生分解されるプラスチックを指す

総生産能力

・European bioplastics (2022年)によると、世界のバイオプラスチック生産能力は221万7,000トンで、2027年には629万1,000トンに増加する見込み。
・2021年から2027年の年平均成長率は23%と予測されている。

種類別生産能力

・2022年のバイオプラスチックの内訳は、生分解性プラスチック*1が52%、バイオマスプラスチック*2が48%となっている。
・生分解性プラスチック*1は、2022年2027年にかけて総生産能力に占める割合が増加し52%から57%に増加すると予想される。また、 2021~2027年の年平均成長率は、23%になる見込み。
・バイオマスプラスチック*2は、2022年2027年にかけて総生産能力に占める割合が減少し 48%から43%になると予想される。また、 2021~2027年の年平均成長率は、24%になる見込み。

 

注 *1 :生分解性プラスチック(バイオ / 石油ベース) *2 : バイオマスプラスチック(非生分解性)

世界の生産能力:材料・地域・用途別

・2022年、世界のバイオプラスチック製品生産においては、生分解性プラスチック*1の占める割合が52%であった。
・世界の生産能力を地域別に見ると、アジア市場シェアの40%以上を占め、欧州と北米がこれに続く。
・用途別では、バイオプラスチックの殆どが軟包装・硬包装用に作られており、2022年の世界生産能力のほぼ半分を占めている。
・包装用バイオプラスチックの生産能力の拡大は、世界中で企業や人々の環境意識が高まっていることを意味している。
・生産者と消費者の双方の意識の変化が、包装業界を、より環境に優しい製品へと向かわせている。

 

注:*1 :生分解性プラスチック(バイオ / 石油ベース) *2 : バイオマスプラスチック(非生分解性)

タイのバイオプラスチック産業の概要

・タイ政府は、BCG(バイオ・循環・グリーン)経済モデルを掲げ、ターゲット産業を定めている。豊富な資源、政府の提供する支援や優遇措置などがあるため、タイのバイオプラスチック産業は外国人投資家を惹きつけている。

バイオ プラスチック のメリット

・タイ農業の付加価値向上
・資源効率の向上(農業原料)
・カーボンフットプリントと温室効果ガス(GHG)排出量の削減
・持続可能性と環境意識に関するブランド評価の向上
・輸入に頼る化石資源からの脱却

政府の支援策とBOI(投資委員会)の優遇措置

バイオプラスチック投資状況(BOI)

バイオプラスチック・プロジェクト:24件
投資額:370億バーツ
(2018年~2023年9月)

主要企業

Purac (Thailand) Ltd.

SCG Chemicals Pcl.

PTT MCC Biochem Co., Ltd.

Total Energies Corbion Ltd.

Mitr Phol Sugar Corp., Ltd.

Thai Wah Pcl.

タイのバイオプラスチック産業のサプライチェーン

・バイオプラスチックのサプライチェーンにおけるタイ企業(川上~川下)の主な活動は以下の通りである。

タイのバイオプラスチック製品輸出状況

・バンコクポスト(2023年)によると、タイはバイオプラスチック製造国として世界トップ5に入っており、ASEAN地域では他国をリードしている。
・バイオプラスチックの総生産量の90%以上が輸出されており、金額ベースのCAGRは25%、数量ベースのCAGRは23%である(2017~2022年)。2027年にASEAN域内のバイオ・ハブになることを目指しているため、投資家にとって魅力的な各種の優遇措置があり、近年、生産能力だけでなく輸出量も増加している。
・特に生分解性プラスチックの輸出量は、PLAメーカー最大手のTotal Energies Corbion Ltd.が、年産能力7万5,000トンの生産工場に投資したことで、2019年から急増している。

 

タイの競争力:豊富な資源

・タイは天然資源が豊富なことで知られ、特にバイオマスプラスチックの原料となるキャッサバとサトウキビの世界有数の生産国である。
・天然資源が豊富であるにも関わらず、現状、バイオマスプラスチックへの使用率は低く、2020年にはキャッサバとサトウキビの生産量の1%未満が使用されたのみだった。

タイの競争力:国の政策

・タイ政府は、ポストコロナの経済・社会復興に向けた戦略としてBCG経済モデルを掲げた。
・BCG経済モデルは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)へのタイのコミットメントの強化も目的としている。

・タイ政府は、2027年にタイをASEAN域内のバイオ・ハブにすることを目指し、バイオプラスチックの製造および様々な事業セクターや最終顧客によるバイオプラスチック製品の採用をサポートしている。

企業に生分解性プラスチック製品の使用を奨励するために打ち出された金融政策の例

工業省と財務省による法人税減税プログラム

・工業省によると、2022年から2024年の間に生分解性プラスチック製品を購入した企業は、購入金額の125%相当額の経費計上が認められるという法人税減税措置が受けられる。
・ただし、生分解性プラスチック製品は、工業省工業経済事務局が認定した製造業者から購入しなければならない。

タイの競争力:BOI優遇措置

バイオマテリアルはBCG経済モデルのターゲット産業のひとつであり、以下のような税務・非税務の優遇措置がある:

・上記に当てはまる活動については、研究開発用途の機械類・原材料および輸出生産に使用する原材料に対して、輸入関税免税など税務的優遇措置が受けられる。
・さらに非税務的な優遇措置として、土地所有、対象活動に従事する高スキル人材や専門家の入国、投資機会の調査を目的とした外国人の入国、外貨での海外持ち出しや送金などに対する許可も受けられる。

タイバイオプラスチックへの投資状況と主要企業

・2023年9月現在のBOIの発表によると、BOIはバイオプラスチックへの投資プロジェクトを24件推進し、過去5年間で370億バーツ以上を承認している。タイのバイオプラスチック産業の川上から川中に投資をしている関連分野のプレーヤーは、タイ国内外に複数存在する。また、多くのパッケージング企業がバイオプラスチックにも事業を拡大している。

Thai Wah Group:アジアにおけるバイオプラスチック(タピオカ澱粉ベース)のパイオニア

Thai Wah Group の事業内容

グループの中核事業は以下の3つ

1、澱粉・関連製品の製造(タピオカ澱粉、グルコースシロップ、米粉等)、販売
2、食品(春雨、米麺、米春雨、緑豆澱粉麺など)の製造、販売
3、生分解性製品の製造、販売

タピオカ澱粉をベースにしたROSECOのバイオプラスチック

・Thai Wah Groupは、澱粉と澱粉関連製品の大手メーカーで、バイオプラスチックにも事業を拡大する計画。
・澱粉の主原料は、バイオプラスチックの原料でもあるキャッサバで、農家から調達している。
・2022年にはバイオプラスチック製品の自社ブランド「ROSECO」を立ち上げ、農産物の付加価値向上を目指している
・2022年の年次報告書内で、自社を「アジアで初めて商業規模のタピオカベースのバイオプラスチック事業を行うパイオニア」だと称している。
・「ROSECO」ブランドのバイオプラスチック工場はラヨーン県にあり、2022年の計画生産量は3,000トンだった。

今後の動向・課題・機会

レポートの続きをご覧になりたい方は、下記よりダウンロードください。

執筆:YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
(山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

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