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事業承継の基礎知識 4. 種類株式・属人的株式・信託を活用した事業承継

株式には議決権と財産権という2つの側面がありますが、事業承継のケースによっては、これらを切り離して承継させる必要が出て来ます。このとき活用できるのが、種類株式、属人的株式、信託です。種類株式とは内容の異なる複数種類の株式をいいます。 これらの制度を活用することで、受け取る配当の金額や行使できる議決権の内容等について、ある株式は配当を多くもらえる、ある株式は議決権が制限されるなど、株式間で差をつけることができます。 種類株式は、後継者のみに議決権を集中させる、先代経営者に拒否権を持たせてモニタリング期間を置く、少数株主を排除(スクイーズアウト)するなどの場面で活用されるのが一般的です。属人的株式も種類株式と同様に、議決権を集中させたいときなどで活用されますが、「株式」ではなく「株主」に帰属したものなので、その効力は後継者には引き継がれないものとされています。 信託を活用すると、ひとつの財産に付帯する権利を区分して権利行使できる者を別々に設定したり、多様な条件をつけることも可能になります。他の承継方法(相続、贈与、譲渡など)よりも自由度の高い財産承継の方法といえるでしょう。

4-3. 事業承継における種類株式の具体的な活用法

 

種類株式を活用することにより、財産権の移転と経営権の移転を分離することができるが、これを事業承継に生かすには、次のような方法が考えられる。

(種類株式の活用法①)後継者のみに議決権を集中させる

現経営者が自社株式を100%保有しているとする。この経営者に複数の子がいて、相続では一人の後継者だけに議決権を集中させたいが、他の相続人の遺留分を侵害してしまうおそれがある場合、無議決権株式又は議決権制限株式を活用する。
あらかじめ発行しておいた無議決権株式又は議決権制限株式を後継者ではない相続人に、普通株式は後継者に取得させることで、遺留分を気にせずに後継者のみに議決権を集中させることができる。
後継者以外の相続人から、議決権がないことに対して不満が出ないよう配当優先としたり、取得請求権を付与したりすることもある。

特定の後継者に集中させる場合ではなくても、課税上の理由から、遠い親戚や従業員持株会といった第三者に株式を持たせたいという場合、無議決権株式又は議決権制限株式のみを保有させ、後継者に近い親族については普通株式を保有させる形も考えられる。
後継者等以外が所有する種類株式について、無議決権株式と議決権制限株式のいずれにするかは留意が必要である。
相続、遺贈又は贈与により取得する「取引相場のない株式」の評価は、株式を取得する者の取得後の議決権割合等を基礎として、原則的評価方式か特例的評価方式(配当還元方式)のいずれかに判定される。
無議決権株式は議決権ゼロ、議決権制限株式は普通株式と同様の議決権数で取り扱われるため、後継者等以外の株主が保有する株式を無議決権株式に転換したことで、ある株主が保有する普通株式の評価方法が特例的評価方式から原則的評価方式に変わったことで、相続税法上の評価額が大きく上がり、課税額が増加してしまうこともあり得る。

(種類株式の活用法②)先代経営者によるモニタリング期間を置く

拒否権付種類株式とは、株主総会又は取締役会で決議すべき事項について、株主総会決議のほかにその種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とする株式であり、「黄金株」とも呼ばれている。
拒否権付種類株式を取得することにより、重要事項の拒否権を握ることで実質的に経営権を掌握することが可能となる。
この種類株式は、あくまで拒否権を有しているのみであって提案権等はない。

例えば、第三者への事業承継を選択した際、親族外の株主にすべて議決権を握られることに抵抗がある場合や、親族内への事業承継であっても、後継者が若くて危なっかしく感じる場合、一定期間は現経営者が拒否権付種類株式を保有することで経営監視を行うことができる。
ただし、この種類株式を保有する者が、加齢によりの判断能力が低下した場合や、急な相続の発生などにより、この種類株式が経営への関与が薄い配偶者などの手に渡ってしまった場合、いたずらに拒否権を行使されてしまうと、経営が成り立たなくなってしまう。
そのため、あらかじめ時限的な取扱いとすることを権利内容として織り込んだり、現経営者の相続発生を一定事由とする取得条項付種類株式とするなどの対策も同時に検討しておきたい。

(種類株式の活用法③)少数株主を排除(スクイーズアウト)する

遠い親族などへ分散された株式は、後継者などが買取りを行うことで集中させることが可能ではあるが、各々の株主との個別の交渉が必要であり、手続きが煩雑になる。また、株式の買取りに反対されたことで、M&Aなどの重要な意思決定が頓挫してしまうこともあり得る。
このような場合、全部取得条項付種類株式を活用してスクイーズ・アウトすることで、議決権を集中させる方法がある。

手続きとしては、種類株式を発行する旨の定款変更決議(株主総会の特別決議)を行い、発行済み株式のすべての普通株式に全部取得条項を付す。次に普通株式を取得の対価として全部取得条項付種類株式を取得する特別決議を行う。
このとき、少数株主の保有する全部取得条項付種類株式数や普通株式の交付割合によっては、普通株式の端数株が割り当てられる。この端数株は競売等の方法による売却ないしは買取代金の交付が実施されるため、結果として、少数株主を排除(スクイーズアウト)することができる。
ただし、全部取得条項付種類株式を発行する場合、反対株主の買取請求権が発生することに留意したい。

種類株式の活用にあたっての留意点

種類株式はむやみに発行すると、かえって会社の経営を混乱させてしまうこともあるので、発行の要否については利害関係者も交えて慎重に検討しなければならない。また、既に種類株式が発行されていないかについても、会社の定款や法務局の履歴事項全部証明書(謄本)で確認しておきたい。

【種類株式の活用法① 後継者のみに議決権を集中させる】

種類株式 図表1

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【種類株式の活用法② モニタリング期間を置く】

種類株式 図表2

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