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2021/04/05

テーマ: 03.海外

クーデター後のミャンマー事業方針策定マニュアル

目次

2月1日の政変後、CDM(市民の不服従運動:Civil Disobedience Movement)は先鋭化しており、また軍政側の武力行使に対しては国際的な批判が高まっています。このような状況の下、ミャンマーでの企業事業活動への影響は大きく、日本企業としても事業方針の策定が求められる事態になっています。本稿では、法務的観点から採用することができる方針と注意点等をご説明します。

まず、前提となるご説明ですが、ミャンマーでビジネスを行うためには、現地法人を設立するか、支店を設立する必要があります。

なお、支店であっても、現地法人の場合と比較して、会社法上、行うことができるビジネスに制限はありません。また、駐在員事務所や営業所という名称を使用していても、一部の例外を除き、会社法上の支店の形式を採っています。そのため、社内的に駐在員事務所や営業所といった名称を使用している場合でも、以下の支店の説明が妥当します。

他方で、現地法人については、工場や長期の土地賃貸借を伴う不動産開発などは、投資委員会(MIC)の認可を取得しており(MIC会社)、また、ティラワ経済特区に進出している会社は、ティラワ経済特区管理委員会から投資認可を取得しています(ティラワ会社)。これらの会社においては、事業方針の策定にあたり、許認可上必要な対応についても加味する必要があります。

1. 資金調達

ミャンマーにおけるCDMの活発化に伴い、本稿執筆時(2021年4月2日)において、ミャンマー経済はマヒ状態となっており、この状態は、短くとも数か月のスパンで継続する可能性があります。そのため、日本企業のミャンマー事業についても、平常時の収入が期待できないにも関わらず、人件費、家賃その他の固定費は発生し続ける状態となり、如何にして事業資金を確保するかが課題となります。

(1) 現地法人の場合

現地法人が本社から資金供給を受ける方法としては、以下の2つがあります。

① 増資の方法

増資は、法人を管轄する政府機関であるDICAのオンライン申請システム(MyCO)でオンライン申請することができます。本稿執筆時においては、MyCOでのオンライン申請は通常どおりに申請することができています。なお、ミャンマーでは、減資を行うことは極めて困難であるため、一旦増資を行うと減資の方法で資金を日本本社に戻すことは難しいといえます。

② オフショアローン(親子ローン)の方法

オフショアローンについては、中央銀行による個別認可が必要となります(償還期 間、利率等が審査されます)。

オフショアローンの金額については、MIC会社の場合は払込資本額の4倍以 内、その他の場合は3倍以内という制限があります。

親子ローンに関しては、償還期間や利率が一定の相場の範囲内である場合、 比較的迅速に認可を取得することができます。また、本稿執筆時点においては、 オフショアローン申請の手続は通常どおりに行うことができています。

なお、現地での資金需要その他の理由により、既に認可済のオフショアローンの 償還期限を変更する場合も、中央銀行に申請する必要があります。

(2) 支店の場合

支店の場合は、現地への事業資金の供給は、本支店間の送金として基本的に法 律上の制限なく行うことができます。なお、実際に送金する際の要件等については、 お取引銀行とご相談されて進める必要があります。

2. 現地での銀行の機能不全への対処

銀行業界は、CDMが最も先鋭化している業界の一つであり、銀行の店舗はほぼ機能していない状態が続いています。そのため、現地では現金を下ろしたり、送金をしたりすることができず、事業運営上の支障が生じています。

月末になると、当月の従業員給与の支払に窮するというご相談も多く、銀行から現金を下ろすことができるよう、送金することができるように尽力するのが最優先ですが、実務的には、インターネットバンキングを利用する、小切手で支払う(但し、これらの方法の場合、従業員は、現金を手にすることができない可能性が高い)、支払可能な現金の範囲内で従業員全員に最低限生活に必要な同一の少額を支給する、従業員に事情を説明して支払を猶予してもらう等の対応が行われています。

また、事業上の通常の支払については、不可抗力条項などの法的主張とともに、日本本社から代わりに事業相手に送金する等の実務上の対応も行われています。

3. 従業員の減給や解雇

現在の状況に照らし、通常の業務を実施できる目途が立たない例も多く、一時的に従業員の給与を減額できないかというご相談も多く頂戴しております。

この点については、給与が月払いの契約の場合、従業員の業務内容と給与額は、契約時に両当事者の合意で定まっており、会社の一方的な行為により給与を減額する法的根拠を見出すことは困難であると解されます。
他方で、ミャンマー法上、従業員を解雇することに法的な制限はありません。そのため、以下の金額の解雇補償金を支払えば、法律上の制限を受けずに従業員を解雇することができます。

解雇補償金の金額は、勤務期間に応じ最終の月額賃金(残業代は含まない)に以下の倍数を乗じた額になります。なお、以下の金額に加えて、未消化有給の買取り、1 か月前通
知又は1 か月分の給与支払が必要とされます。

従業員の同意なく会社側から行うことができる行為としては、給与の全額支払か、解雇かの二者択一となります。このような硬直的な対応を避けるために、会社と従業員の合意により、一定期間について出勤日数を減らし、給与も減額する旨等の雇用契約の修正を行うケースもあります。

4. ミャンマー事業の休眠

現在のミャンマーの困難な状況に照らし、ミャンマーの拠点を一時的に休眠させたいというご相談もあります。ミャンマー法上、現地法人、支店の休眠という制度は存在しませんが、コストを最小化しつつ拠点を存続させることにより、休眠という目的を実質的に実現することは可能と考えられます。

すなわち、会社は形式上継続して事業を行うこととなるため、DICA への年次報告、会計監査及び納税は引き続き必要とされます。他方で、従業員をミニマムにする、オフィスの解約(但し、現地での住所は必要)等、出費を最小限にすることにより、実質的な休眠状態を実現することは可能と解されます。

なお、現地法人のDirector の一人、支店のAuthorised Officer については、ミャンマーに年間183 日以上滞在する常駐義務が課されています(但し、現在は、新型コロナウィルスのために、常駐義務は免除中)。当該常駐義務は、ミャンマー人でも果たすことができ、また、1 人が複数の会社の常駐義務を果たすことも制限されません。

5. ミャンマー事業からの撤退

(1) 現地法人の場合

① 法人の売却

株式の全部又は一部の譲渡は、特段の事業上の許認可等が無ければ、管轄のDICAとの関係では、MyCOでのオンライン申請により比較的容易に行うことができます。

なお、売却対象の会社がMIC会社の場合、持分の過半数(majority ownership)等を移転する場合は、MICの事前承認が必要となり、過半数に満たない持分の移転には、事後の届出が必要とされます。

また、合弁事業の場合は、ミャンマー側の合弁パートナーへの売却が有力なオプションになると思われます。

② 会社清算

ミャンマーでの会社清算には、例えば、会社の債務を3年以内にすべて弁済できる旨の裁判所での宣誓、会社の清算決議(株主総会特別決議)、新聞・官報での公告(2回)、Tax Clearanceの取得、最終総会の開催などの手続きを行う必要があり、手続の完了まで1年程度の期間が必要とされていました。

加えて、現状では、法人の清算に適用される倒産法が施行直後で、清算人の選任方法が明確になっていないなど、法制度の移行期に伴う困難にも直面するため、法人の清算手続が完了するまでには、数年単位の期間と多額の費用が必要とされる可能性が高いといえます。一旦、会社清算の決議を行ってしまうと会社は事業を行うことができなくなるため、上記のとおりコストを最小にした実質的な休眠状態を継続することも検討すべき選択肢といえるでしょう。

(2) 支店の場合

支店の登録の抹消については、MyCOでのオンライン申請の方法より、比較的容易に行うことができます。加えて、支店についてのTax Clearanceの取得の手続が別途必要とされます。

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山田コンサルティンググループ株式会社

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(山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

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