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更新日:2023/02/01
テーマ: 03.海外ビジネス
中国人の消費行動調査結果 ~下沈市場の特徴と消費行動特性~
ゼロコロナ政策により経済成長に陰りが見える中国ですが、人口14億人を超える巨大な消費マーケットである地位は変わりません。
これまで注目されていた沿海部の1~2級都市以外にも、3~5級都市である“下沈市場”が成長を遂げ大きな注目を浴びています。大都市に分類される1~2級都市は合計49都市、下沈市場の3~5級都市は合計288都市で10億人超の人口を抱え、実に中国の人口の約7割を占めています。下沈市場の重要性を知り、中国マーケティング攻略に向けた準備や見直しが今こそ必要です。
本レポートでは、2022年に山田コンサルティンググループが中国全土に向けて独自に実施した消費者アンケート結果を用いて、製品や地域の違いによる消費行動について解説します。
目次
中国都市の分類と概況
都市Tierの分類と代表都市
都市のTierは中国ビジネスメディア「第一財経」が作成したものであり、中国の337都市の商業的魅力度を一線から五線までランキング、分類している。ランキングの根拠は、国際ブランドの数、人口の流入量、コンビニ数など74の指標である。
下沈市場は、三線、四線、五線都市の市場を指し、合計288都市がある。

下沈市場の概況
人口から見ると、中国人口(常住人口ベース)の64%は下沈市場に集中し、一二線都市の2倍程度になっている。一方で、下沈市場の平均可処分所得は約3.88万元程度であり、一線都市の1/2しかない。

都市別のGDP概況
下沈市場の総GDPは中国全体の48%を占めており、一都市の平均GDPは二線都市の半分以下となる。

都市別の人口概況
下沈市場の一都市平均人口は数百万人で一二線都市より少ないが、総人口は全体の64%を占め、巨大な市場を形成している。

消費行動調査の概要と結果
本調査の回答者の基礎情報
本調査の回答者数は一二線都市1,257人、下沈市場851人、合計2,108人である。回答者の年齢は21~40歳に集中しており、中国の若年層の消費動向を把握できる調査となっている。性別は男性と女性の比率はほぼ1:1である。
教育状況についてはほとんどが大卒以上であり、中国全体より教育水準が高い。婚姻状況をみると、約68%は既婚者であり、子供ありの回答者は65%程度を占めている。
回答者の地域をみると、一二線の回答者は上海、北京、広州、成都に集中している一方、下沈市場の回答者は分散化している。
また、全体的に見ると、ほとんどの回答者は東部・中部に集中しており、中国の人口分布と一致している。



EC・実店舗の利用状況
下沈市場のEC利用頻度と実店舗利用頻度は一二線都市とほぼ同じレベルである。EC消費金額についても、大した差がないように見える。

商品別ECの利用率
商品別のEC浸透率から見ると、下沈市場の贅沢品のEC利用率は一二線都市より遥かに高い。その要因は、下沈市場には贅沢品の実店舗が少ないためと推測。また、アパレル、化粧品、生活家電、日用品、ペット用品はEC利用率が高い。

商品×国の好感度
都市を問わず中国ブランドを好む消費者が多い傾向にあるが、一二線都市では、欧米、日本ブランドの好感度は下沈市場より高い。また、贅沢品、化粧品、デジタル家電などに対して、外資系ブランドを好む消費者が相対的に多い。

外資系ブランドの浸透状況
外資系ブランドの実店舗はほとんど一二線都市に集中しており、下沈市場での存在感は弱い。特に贅沢品などはほとんど下沈市場に進出していない。
本調査によると、実店舗がない場合、93%の人はオフィシャルEC店舗経由で購入しており、36%の人は代理購入・越境ECを利用している。従って、中国ECサイトに店舗を立ち上げる以外に、越境ECで販売するのも有効である。

ECプラットフォームの利用状況
下沈市場と一二線都市を比べると、ECプラットフォームの利用率はほぼ同じであるが、下沈市場のTikTok利用率は一二線都市より高い。

情報獲得チャネル
下沈市場において、ライブ配信を情報源としている人が一二線都市より多い。主要ライブ配信プラットフォームのTikTok、Taobaoライブ、快手をみると、どれも下沈市場での浸透率が高い。そのため、ライブ配信プラットフォームの活用は下沈市場で展開するうえで非常に重要と言える。

SNS・ライブ配信プラットフォームイメージ

アクティブユーザー及びユーザー状況
小紅書、Taobaoライブ、快手などのプラットフォームは近年急激に成長しており、Weiboなど従来のSNSと比べると、下沈市場への浸透率が高いと見える。

消費者の調査意欲
下沈市場の消費者は、一二線都市より購入したい商品について詳しく調査する傾向がある。特に、贅沢品、ベビー用品、家具・ホーム用品などにおいて、下沈市場の消費者の調査意欲が高い。

KBFの比較
KBFの比較(全体)
中国消費者が最も重視しているKBFは、品質、価格、安全性、性能と評判である。下沈市場と一二線都市の注目点はほぼ同じであるが、下沈市場の方がプレミアム感、知人の勧めを更に重視している傾向がある。

KBFの比較(食品)
安全性は中国消費者が一番重視している項目であり、味わい、栄養・成分を選択している人も多い。

KBFの比較(日用品)
日用品の場合、品質以外に、安全性、耐久性、性能、価格などへの注目度が高い。

KBFの比較(アパレル)
アパレルにおいて、使い心地が最も重要である。次に、デザイン、品質も重視されている。下沈市場は、価格、ブランド・知名度、耐久性への関心は一二線都市より高い。

KBFの比較(家具・ホーム用品)
家具・ホーム用品はデザイン、耐久性が非常に重要であり、価格への関心度も高い。下沈市場では使い心地及び評判の重要性が更に高い。

KBFの比較(家電)
家電は品質、性能、安全性、ブランド・知名度の順位が高い。下沈市場において、安全性とプレミアム感への関心度が一二線都市より高い。

KBFの比較(贅沢品)
贅沢品のKBFは、ブランド・知名度、プレミアム感、デザインが中心になり、品質、評判、価格への注目度は他の商品より低い。ただし、下沈市場は一二線都市より評判、価格を気にしている人が多い。

KBFの比較(ベビー用品)
ベビー用品について、安全性への注目度は圧倒的に高く、一二線都市と下沈市場のいずれも70%を超えている。また、下沈市場は価格と使い心地について、一二線都市より重視している。

まとめ
・全般的に中国はEC浸透率が高く、商品によっては下沈市場の方がEC利用率が高い商品もある。
・化粧品や家電などは日本製品が好まれており、日本の好感度が高い商品の場合、マーケティングにおいてもアドバンテージがある。
・中国人消費者のKBFについて、地域差はさほど顕著には見られない。
・中国人消費者は価格も重視しているが、それ以外に品質や安全性、性能へのウエイトも高い。
・下沈市場には実店舗がない場合も多く、特に下沈市場を攻める場合には、ライブ配信プラットフォームの活用が効果的である。
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執筆:上海現地法人 山田商務諮詢(上海)有限公司
(山田コンサルティンググループ株式会社 中国現地法人)
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